表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
3章 生まれ変わり編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/53

50話 カイドウ村の違和感




 それは、まさに圧巻としか言いようのない術だった。



 カルタは一歩も動かず、遠く離れた敵の呪いを断ち切ったのだ。

 

 直接その光景を目にしたわけではない。

 だが、ラァナの首元にあった呪文字が完全に消え、

 復元していない――それが、何より雄弁な証拠だった。


 傍らでは、ラァナとパルメが安堵に満ちた表情で言葉を交わしている。

 彼女たちにとっては、これで一件落着なのだ。


 小角だけが、その場に残る余韻の正体を測りかねていた。


 ――これで、本当に終わったのか?


 その疑問が浮かんだ直後だった。

 

 「ロッキくん」

 

 カルタが、真剣な声で呼びかけてきた。

 

 「スウェルドの屋敷にいた、術師の男。

 できれば術者本人と一度、直接会っておいた方がいい」


 「……生まれ変わりに関係あるのですか?」


 「そうね。あれは、かなり深いところまで知ってる気がする」


 小角が頷こうとした、その瞬間。


 「……!」


 カルタの表情が、はっきりと変わった。


 「カルタさん?」


 千里眼で遠方を視続けていた彼女の眉が、わずかに吊り上がる。


 「……なるほど。やり手だね」


 「何が起きたんですか?」


 「吹き飛ばした術師――今、土人形になって崩れた」


 小角は息を呑んだ。


 「分身の式、ですか?」


 「いや……違う。これは“式神”だね」


 カルタは静かに続ける。


 「式神を使う呪術師か。

 式神を盾にして自分の正体が辿られる前に――媒体ごと切ったようだね」


 

 切った――いや、逃げた。


 しかも、かなり冷静に。


 小角の中で、確信が生まれる。


 自分とカルタ以外にも、生まれ変わりの体験者は確実に存在する。

 そして、その全員が善人とは限らない。


 

 「……パジャン村に戻ったら、スウェルド邸の調査が必要ですね」


 「そうした方が良いね」


 

 カルタはそれ以上、何も言わなかった。



 ――――――

 


 一行は、そのまま屋敷に泊まることとなった。


 カルタは宿場を使わず、ここで一晩過ごしていくようにと申し出てくれた。

 断る理由もなく、その好意を受け入れた。


 小角がカルタと会話を続けている間、ミラは宮殿の中をきょろきょろと見回していた。

 やがて、棚の上に伏せられた一枚の額縁に目が留まる。


 

 「……あれ?」


 ミラは無意識のうちに、その額縁を起こしていた。


 「カルタ様。こちらの肖像画、ご家族ですか?」


 その瞬間。


 「――こらっ!」


 カルタの声が、鋭く響いた。

 小角が振り向くと、彼女は明らかに取り乱していた。


 「人の家の物を、勝手に見るんじゃないよ!」


 額縁の中には、3人の姿が描かれている絵。


 カルタ。

 そして、シルド。

 もう一人――見覚えのない少年。


 小角とミラの視線が、その少年に吸い寄せられる。


 「……この子は?」


 「シルドさんの……弟さんですか?」


 ミラがそう口にした瞬間、カルタは乱暴に額縁を取り上げた。


 「……もういいだろ」


 それ以上、

 何も答えず、彼女は背を向ける。


 「部屋へ案内する。今日は、もう休みな」


 その声は、明らかに硬かった。



 ――――――

 


 夕食が用意されていた。


 車夫の分まで含めた食事が並んでいたが、そこにカルタの姿はなかった。

 小角たち5人だけの食卓は、どこか落ち着かない。


 

 「……さっきの件、ダメだったよね?」


 ミラが小さく呟く。


 「そうですね……」


 パルメが言葉を選ぶように続けた。


 「もし、あの少年が亡くなられたご家族でしたら……見られたくなかったかもしれません」


 ミラの顔色が、一気に青くなる。


 「……わたし、すごく失礼なことを」



 誰も声を掛けられず俯いた。


 深い事情がある。

 それだけは、全員が理解していた。


 だから、この話題はここで終わった。



 ――――――

 


 深夜。


 屋敷が完全に静まり返った頃、小角は目を閉じたまま、ずっと考えていた。

 カイドウ村に入ってから、消えない違和感。


 邪気ではない。

 敵意でもない。


 だが――何かがおかしい。


 昼間にすれ違った村人たち。

 

 誰一人、表情が無かった。

 声も出さなかった。

 質問に、ただ指を差すだけの反応。

 夕方にも関わらず、開いている店はなかった。


 そして、インとヤン――


 戦った彼らは藁人形だった。

 だが、あの2人には確かに感情があった。


 そうだ――命の気配があったのだ。


 小角は、そっと屋敷の外へ出ようとした。


 だが。


 足を踏み出した瞬間、空気が止まった。


 屋敷一帯に、封印の式が張られている。


 外へ出ることを、はっきりと拒む構造だった。


 破壊はできる。

 だが、それをすれば――カルタが即座に気づく。



 「……なるほど」


 

 小角は屋根の上へ上がり、村を見下ろした。

 当然ながら夜の村は、昼以上に静かだった。


 いや――


 活気がないのではない。

 生気がない。


 小角は、低く呼びかける。


 「前鬼……おいで」


 背中合わせに、前鬼が姿を現す。


 しばし、何も言わずに村を見渡した後、前鬼は口を開いた。


 「……お前、感知が鈍ったな」


 「?」


 「この村に、生きている人間は1人だけだ」


 小角の喉が鳴った。


 「……1人?」


 前鬼は、淡々と答えた。


 「カルタだけだ」


 「他の者は……?」


 「この世の存在ではない。

 降霊術によって、藁人形に宿された死霊だ」


 すべてが、繋がった。


 無表情。

 声を出さない。

 夜になっても変わらない静けさ。


 ――この村は、生者の村ではないのだ。


 そのときだった。

 

 背後に、気配。


 

 振り向くと、すでにカルタが立っていた。

 


 ――この村の真実が、

 いよいよ語られようとしていた。





 

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。


ようやく50話まで辿り着きました。


カイドウ村の違和感――

少しでも不気味さを感じていただけていたなら、作者としては嬉しい限りです。


ここから先、ロッキたちの見ている世界は少しずつ姿を変えていきます。


戦闘も少なく静かな流れが続いていますが、

物語自体はここから一気に動き出します。

(4章では戦闘もたっぷり準備しています笑)


もうすぐフランも再び登場しますので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


「続きが気になる」と思っていただけたなら、

ブックマークで応援してもらえると、とても励みになります。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ