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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
3章 生まれ変わり編

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49話 念術




 カルタの言葉が、重く胸に残っていた。



 生まれ変わりとは――

 前世で呪術師が呪術を使い、積み上げた業に対して与えられる――罰。


 人の身で扱うには過ぎた力を振るい、本来触れてはならない領域へ踏み込んだ代償。

 そのツケが、形を変えて返ってきているということだ。


 

 「人を呪わば穴二つ……」


 

 カルタは、ぽつりと呟いた。


 他者へ害を与えると、自分にも害が返ってくる。

 言葉そのものよりも、その声音が胸に刺さった。

 まるで長い年月、何度も何度も噛みしめてきた言葉のようだった。


 「生まれ変わりのことは、話さないって決めていたのだけどね」


 カルタは肩をすくめる。


 「前世での業の仕組みに気づいた者はいると思うんだよ。

 だからこっちの世界では、静かにまっとうに生きようとしてる連中は多いと思っている」


 「……その説がもし正しいのなら」


 小角は、視線を落とした。


 「僕はもう、こっちの人生でも手遅れですよ」


 短い沈黙。


 カルタは苦笑する。


 「……それを言うなら、わたしもだよ」


 その一言に、慰めはなかった。

 だが、不思議と突き放された感じもしない。


 カルタは、この村で長く静かに生きてきた。

 結婚し、シルドを産み――

 そして、夫を失っている。


 子を守るため。

 生きるため。

 彼女は再び術を使い始めたのだろう。


 「でも後悔はしてないよ」


 カルタは淡々と言う。


 「シルドの成長を見るために、術を使い続けた。

 それで業が積み重なったなら……仕方がない」


 小角は、言葉を失った。


 生まれ変わりの“答え”には辿り着けていない。

 だが、少し近づけた気がした。


 同じ境遇の者と出会えたからだろう。


 それ以上に――自分の未来を、突きつけられたからだろうか。


 

 ――――――


 

 話を終えたあと、ラァナとパルメが呼び戻された。

 ラァナの希望で、ミラと小角も同席する。


 ラァナの首元に刻まれた呪文字。

 小角が解呪しても、すぐに復元されてしまう厄介な呪いだ。


 カルタはひと目見るなり、静かに頷いた。



 「……間違いないね。相手も生まれ変わりの体験者だろう」


 「やはり……」


 「解呪しても戻るってことは、何かしら呪物を相手が持っている可能性が高いね」


 カルタは首元に手を当て、目を閉じた。



 ――『千里眼の式』


 

 彼女の意識が、遥か彼方へ伸びる。


 そして見たもの、感じたことを言葉にしていく。

 

 

 「……貴族、豪邸、痴情のもつれ……恨み……殺意……スウェルド」


 「……スウェルド!」


 パルメが息を呑む。


 かつて婚姻を巡ってラァナに恨みを抱いた男。

 その名が、確かにあった。


 「術師がひとり……土で作った人形に、ラァナさんの髪を練り込んでるね」


 「なるほど。

 呪いの媒体が向こうにあるのなら、呪いと解呪のイタチごっこになるわけだ……」



 ラァナの顔が、不安に歪む。

 その様子を見て、カルタは笑った。


 

 「そんな顔するんじゃない」


 

 そう言って、ラァナを励ました。


 「せっかく、ここまで来たんだ。

 Sランク冒険者の本気を見せてやるさ」


 カルタは小さく片手で印を切った。


 次の瞬間――

 爆発するような気配が、空間を満たす。


 小角は、思わず息を止めた。


 これは呪術ではない。

 魔力でもない。



 感じたことのない気――。



 遠く離れたスウェルド邸。

 そこに、突如青白い巨大な光の手が出現した。


 カルタが掴む仕草をすると、スウェルド邸に現れた光の手が、

 土人形を握り潰し燃やし尽くしたのだ。


 するとラァナの首元から、呪文字が完全に消去された。


 

 「……これで終わり」


 

 続けて、カルタは軽く裏拳を振るった。


 すると――

 同時に、スウェルド邸では術師が吹き飛ばされた。


 「ラァナから手を引きなよ」


 カルタの声が、遠くへ届く。


 「さもなくば――末代まで、スウェルド家を祟ってやる」



 それは――念術。


 

 遠隔地を千里眼で見て、念で触れて、壊して、命じている。

 小角は、その光景に呆然と立ち尽くしていた。


 カルタがラァナに声をかける。

  

 「……身体、どう?」


 「軽いです……本当に……」


 「当然よ。わたしを誰だと思ってるの」

 

 こうして、ラァナの呪いは解かれた。


 しかし遠く離れた地にいる術師は、

 意識を失っているのか、立ち上がってこない。


 小角は、胸の奥に残った言い知れぬ感情を抱えたまま、

 彼女たちを見つめた。

 

 この胸に残る違和感の正体、

 それは異世界人生のやり直しを失敗したことに対してなのか、

 それとも、これから起こり得るさらなる戦いへの不安なのか……


 

 ――その答えを知るには、まだ少し早いようだ。





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