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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
3章 生まれ変わり編

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48話 邪馬台国のカルタ


 



 カルタは、役小角に向かって――

 はっきりと言った。



 「邪馬台国って、わかるかな?」


 ――心臓が、一拍遅れて跳ねた。


 頭で意味を理解するより先に、背筋に冷たいものが走る。

 それはただの驚きではない。

 隠していた何かが見つかったような感覚だった。



 邪馬台国。

 前世で生きていた日本に存在したとされる、古代国家。


 ここは異世界だ。

 その名が出る理由は、本来どこにもない。

 ミラたちはキョトンとした顔をしている。



 「挨拶が遅れたね」


 

 女性は穏やかに笑った。



 「わたしはカルタ。カイドウ村へようこそ」



 年齢はわからない。

 40歳を超えているとは聞いていたが、見た目は若く、20代でも通じる容姿だ。

 銀色の長い髪と、閉じられたままの瞳が印象的だった。


 そして――


 「息子が世話になったね。シルドが生きて戻れたのは、君のおかげだ」


 この女性――

 たしかにシルドの母親のようだ。


 「こんなに大勢で来るとは思わなかった。何もない村でがっかりでしょ?」


 小角は一度、息を整えた。


 「突然押しかけてすみません。こちらの2人は別件でカルタさんに御用があり同行しております」


 「そうかい」


 カルタは軽く頷き、続けて言った。


 「それじゃあ……まずはロッキ。君とから話そうか。

 シルドの命の恩人だしね」


 そう言って、ほかの3人に視線を向ける。


 「少し、席を外してもらえるかな」


 ラァナとパルメが頷き、ミラも続こうとした。


 その時――


 

 「――そこの半裸の子」


 「は、はいっ!?」


 突然名指しされ、ミラが硬直する。


 「聖女の水着はね、余興試合用だよ。実用性なんてほとんどない」


 「えっ……?」


 「日常で着る装備じゃないんだ。……正直、君ヤバいよ」


 「ええええっ!?」


 「試合前でも普通は上に服を羽織るんだ。ちゃんとした格好をなさい」



 ミラは顔を真っ赤にし、慌てて外へ飛び出していった。

 真っ先に着替えていることだろう。



 ――――――


 

 宮殿内には、役小角とカルタだけが残った。

 空気が、静かに張り詰める。


 カルタは一度姿勢を正し、床に手をついて深く頭を下げた。


 

 「本来なら、こちらから礼を言いに行くべきだったね」


 

 顔を上げ、真っ直ぐに言う。


 

 「息子――シルドの命を救ってくれて、ありがとう。

 君がいなければ、あの子はもちろん、島に向かったメンバーは確実に全滅だったろうね」


 「……イルジョン島の戦い。もしかして、見ていましたか?」


 「うん。見てた」


 即答だった。


 「……もしかして3日前も?」


 「……少しだけ」



 その言葉で、点と点がつながる。

 後鬼が言っていた“千里眼”。

 ラァナを狙う術師とは別の者。


 ――見ていたのは、この人だ。


 「どんな子が来るのか気になってね。見ようとしたら……すぐに気づいて妨害されてしまった」


 カルタは、どこか楽しそうに言った。


 「大したもんだ」


 「……恐れ入ります」


 「でもね」


 カルタは、ふっと視線を落とした。


 「どんな術を使えても、生まれ変わりの体験者の未来は……なにも変わらないよ」


 「?」


 小角の胸が、わずかに軋む。

 カルタは足を崩し、肘を膝につき、顎を手に乗せた。 


 「単刀直入に聞くよ」

 

 閉じられた瞳のまま、言う。


 「前の名前は?」


 「……」


 「体験者でしょ。なら意味はわかるよね?」


 逃げ場はなさそうだ。


 「……えんの……役小角」


 「へえ……変わった名前」


 少しだけ、口角が上がった。


 「わたしは卑弥呼。邪馬台国の卑弥呼だ」



 息が詰まった。

 

 

 ――その名は伝説の呪術の祖。

 ――呪術師の女王。


 呪術に携わるもので、その名を知らぬ者はいない。

 彼女は間違いなく、生まれ変わりの体験者だ。



 「君の時代では、邪馬台国はもう無いのだろう?」


 「……はい。日本という国になっています」


 「そう……」


 天井を見上げる仕草に、ほんの一瞬だけ感情が滲んだ。



 「弟が、何かヘマをやらかしたのだろうねぇ……」


 

 それから2人は、死の記憶と生まれ変わりの話をした。


 

 彼女は老衰で意識が落ち、

 呼び戻されてみれば、異世界で別人として生きていたという――


 意識を取り戻した時の話は、よく似ていた。


 

 「……30年以上、誰にも言わずに生きてきた」


 

 カルタは淡々と語る。


 

 「知られれば、穏やかに生きていけなくなるからね。

 だからみんな口を割らないんだ」


 「……生まれ変わりの体験者は、他にもいると?」


 「いるよ。でも――みんな黙ってる」


 

 少しだけ、寂しそうに笑った。


 

 「だから滅多に出会えないんだよ」


 

 そして、話題は――呪術へと移る。


 

 「あなたは呪術で鬼を使役し、神の力も使うんだって?」


 「……はい」


 「わたしは、神道や鬼道を作ってはみたけど、彼らを使えるわけじゃない」


 一拍置き、カルタは言葉を選ぶように視線を落とした。


 「……これは、あまり言いたくない話なんだけどね」


 小角は、黙って聞いた。


 「呪術師は、呪術を使うたびに“業”を積む――

 生まれ変わりは、その業が深すぎた人間に与えられた罰だとわたしは思っている」


 罰――。


 「だから人生のやり直しを与えられ、別の世界に放り込まれるの」


 「人生のやり直し……ですか?」


 「……君は、前世で呪術を使いすぎたんだよ」



 否定の言葉は、浮かばなかった。

 思い当たる節が多すぎる。


 「鬼を使い、神を封じた。その結果が――今なんだよ」


 小角は、静かに呟いた。


 「……つまり僕は、業を積みすぎた人間?」


 「そう」


 カルタは、小角の目をまっすぐ見た。


 「罰としてやり直しを与えられた人間が、こっちの世界に来てからも同じことを繰り返していたら――」


 言葉を区切りながら続ける。


 「その先に待つ未来はどうなると思う?」


 彼女は少しだけ、声を落とした。


 「……想像つくでしょ?」



 答えは、すでに胸の奥にあった。


 

 だが――

 口に出すには、あまりにも重かった。






 

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