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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
3章 生まれ変わり編

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45話 サンドイーター




 夕日が砂漠の彼方へ沈みかけていた。



 馬車の車輪に挟まった砂を取り除こうと、車夫が必死に作業をしている。

 しかし、残された時間は明らかに足りなかった。



 「ロッキくん、一言主神の力で何とかならないの?」


 「……あれって、すごく気力を消耗するんだよ。砂を取るだけに使うのはちょっと」


 「そっか……そうだよね」



 ミラが引き下がるのと同時に、

 役小角は砂漠の奥に蠢く気配を感じ取っていた。



 10、20――いや、それ以上。

 数え切れないほどの微弱な気配が、周囲を取り囲むように潜んでいる。


 ――力は弱い、でも数が多すぎる


 それらは襲いかかる様子もなく、

 ただ陽が完全に落ちるのを待っているようだった。



 「だ、だめだ……夜になったらサンドイーターに喰われてしまう……」



 車夫が青ざめた声で呟く。

 ラァナとパルメも怯えて、身を寄せ合っていた。



 そして――陽が沈んだ。


 

 砂漠を包む、不気味な静寂。


 次の瞬間、人の頭ほどの球体が無数に砂から浮かび上がり、一斉に大きな口を開いた。

 ミミズのような胴体を地上へ現したそれらが、奇声を上げて威嚇する。



 キエェエーッ!

 キエッ、キエッ、キエエッ!



 恐怖の大合唱が、一行を包囲した。


 小角は即座に印を切る。



 『境壁のきょうへきのしき



 光の壁が馬車ごと一行を覆い、完全な結界を形成した。



 「皆さん、この光の外には出ないでください。この中にいれば安全です」



 サンドイーターが何度飛びかかっても、結界を越えることはできない。

 ミラは水晶玉の代わりにカップへ水を注ぎ、その水面を見つめた。


 

 「……!」


 「どうしたの、ミラさん?」


 「間違ってたらごめん。

 でも……この下、すごく大きな何かがいる」


 小角も無言で頷いた。


 「このミミズたち……その“何か”の触手みたいだね」



 カップの水面が小さく、詳細までが読み取れない。

 だが、異様な存在が砂の下に潜んでいることだけは、確かだった。



 『烈波の式!』


 

 火炎が広範囲に広がり、無数の触手を焼き払う。

 しかし、すぐに新たな触手が砂から現れた。


 「ミラさん、これ多分Bランク依頼じゃないよね」


 「ミミズだけなら……でも下の本体は……Aランクかも?」


 「下の本体、強さだけならキングオークやキングトロールよりずっと上だよ」


 増え続ける触手を前に、小角は2本の指を揃え、唇に添えた。



 「まっ、この程度なら呪術だけでなんとかできるかな」


 「……ロッキ君?」



 『風舞のかぜまいのしき


 

 見えない風の刃が走り、砂上のモンスターを次々と切り裂く。

 ミラが水面を確認し、声を上げた。


 「効いてる! 下の本体、苦しんでるよ!」


 小角はひとつ頷き、畳みかける。



 『光矢のこうやのしき


 

 空から光の槍が雨のように降り注ぐ。


 ズドドドドドドッ――!


 砂漠が揺れ、地の底からうめき声が響いた。



 「ウオオォォーン……!」


 

 腹の底まで響く咆哮に、ラァナとパルメは腰を抜かした。


 「光矢の式を使うのなんてどれくらいぶりだろう――前鬼、後鬼以来かも」


 「ロッキ君、浮上してくる!」



 地面が震え、

 荒れた砂地が大きく隆起する。

 20メートル近い砂山が崩れ落ち、その中から本体が姿を現した。


 苔色の巨体。

 全身に無数の目と口を備えた、悪夢のような姿。


 深手を負いながらも、触手を操り包囲を続けている。


 独特な威圧感――

 イルジョン島に足を踏み入れた時のような、肌や喉がひりつく感覚に襲われた。



 ――おそらく、アバドン同様に悪魔の一種だろう。

 放置され過ぎて、土地神にでもなったつもりのようだ。



 地形を変えようとしている。

 その前に片を付ける。

 

 小角は2本の指を再び口元に当てた。



 『虚空のこくうのしき



 紫色の球体が放たれる。

 あたり一帯の時間と音が止まったような感覚――


 パンッ!――


 サンドイーターの巨体に空洞が穿たれる。

 触手は力を失い、本体は断末魔を上げながら崩れ落ちていった。



 「……パルメ……あの少年、勝ちましたよ?」


 「は、はい……そのようでございますね……」


 ミラが駆け寄り、思わずロッキを抱きしめた。


 「やったね、ロッキくん!」


 「……ミラさん?」


 我に返ったミラは、慌てて離れる。


 「ごめん! つい嬉しくて……

 今のはフランちゃんに内緒で!」



 顔を真っ赤にするミラを見て、小角は小さな安堵を覚えた。



 ――フラン姉さんより……大きいか 



 ラァナたちの元へ走っていくミラの背中を見送る。


  

 「……まだまだ呪術だけでもやっていけそう……かな」



 全員の無事を確認し、馬車を修繕した一行は、

 夜の町キューサへと辿り着いた。



 砂漠の中央とは思えぬほど整った町並み。

 だが、術具店はすでに閉まり、営業しているのは酒場と宿だけだった。


 今夜は休むしかない。



 水晶玉探しも、町の散策も――明日へ持ち越しだ。






 

いつもお読みいただきありがとうございます。

45話は、3章に入って4話目になります。

お楽しみいただけましたでしょうか?


47話から登場するカルタは、この3章のキーマンです。

個人的にも、最も愛されてほしいキャラの一人です。


本章では「生まれ変わり」というテーマに、少し踏み込んでいきます。

3章は67話で完結予定で、4章へ向けての序章にもなります。

ぜひ最後までお付き合いいただければ嬉しいです。


ブクマ・評価・感想、とても励みになります。

よろしくお願いします!

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