43話 呪いの根源
ラァナという少女から発せられているもの――
それは、間違いなく“呪い“だった。
この異世界に来てから、呪術そのもの、そして呪いに侵された人間を見るのも初めてだ。
ラァナは顔色が悪く、立ち上がることすら難しそうだった。
「お、お嬢様……無理をなさらずに……」
付き人のパルメが、必死に支える。
この状態で、3日間も移動をするのは無理がある。
――謎が多い。
小角とカルタ意外にも、呪術師がいる?
その謎を確かめるため、パルメに声をかけた。
「失礼ですが……なぜ、そこまでしてカイドウ村へ?」
「カルタ様という魔法使いがおられます。どんな奇妙な病でも治すと聞き、最後の望みとして……」
「奇妙な病、ですか」
「回復魔術はすべて試しました。それでも、この通りで……」
小角は、ラァナの首元に刻まれた“呪文字”に目を細めた。
懐かしい術式だ。
だが、この世界の者には見えていない。
カルタなら、確かに解けるかもしれない。
だが、それなら――
小角にも可能だ。
小角はそっと手を伸ばした。
『解呪の式』
一瞬で呪文字が消えて、ラァナの顔色が戻る。
「……パルメ。苦しくありません……」
「お、お嬢様……?」
だが、それも束の間。
再び呪文字が浮かび上がり、ラァナの身体がぐらりと揺れた。
根が深い……
この呪いをかけた術者は、危険だとわかる。
「……誰かに、強い恨みを買った覚えはありませんか?」
「えっ……?」
「恨みから生じた呪いに思えます」
パルメは一瞬、言葉を失い――やがて、震える声で答えた。
「……婚姻解消の件で、ある貴族から……」
「なるほど」
小角は周囲を探ったが、術者の気配はない。
「後鬼、おいで」
影から現れた後鬼に、場の空気が凍りつく。
「……遠方からの呪いですね」
「距離は?」
後鬼は南を指した。
「この距離で、これほどの呪い……相当な術者です」
「……監視されている気がするんだけど」
「ええ。千里眼でしょう」
小角の脳裏に、嫌な可能性がよぎる。
――相手も生まれ変わり。
もしそうだとすれば、この呪いの質にも説明がつく。
後鬼が、ふと思いついたようにミラへ向き直る。
「ミラ様。その水晶玉をお借りできますか」
「え? は、はい……」
後鬼は水晶玉を受け取り、静かに小角へ差し出した。
「この水晶へ、一言主神の力を溜めましょう。
『一帯に掛かる悪しき術を禁じる』と命じてください」
「……なるほど」
小角は頷き、水晶玉へ力を込める。
――《一帯に掛かる悪しき術を禁じる》
次の瞬間。
ラァナは、はっきりと身体を起こした。
「……苦しく、ありません」
「お嬢様……!」
これで呪いと千里眼での監視が遮断された。
だが、恒久ではない。
小角は腕を組み、結論を出す。
「まずは、カルタのもとへ向かいましょう」
「カルタ様なら……?」
「絶対とは言い切れませんが……」
こうして小角とミラ、ラァナとパルメは、
呪いの正体を追うため、カイドウ村へと急ぐのだった。




