41話 12人目のSランク冒険者
「……母親なんだ。私の」
シルドのその言葉に、
小角は息を呑み、すぐに思考を巡らせた。
――むしろ、好都合。
「近いうちに、ぜひお会いしたいです。同じ境遇の者として」
「いいとも。母も体験者と会ってみたいと言っていたからね」
「……呪術という言葉に聞き覚えありませんか?」
「あるよ。母は魔術、呪術、念術。3つを使えると言っていた」
「……念術まで」
小角の胸に、確かな期待が芽生えた。
――――――
翌日。
小角は、部屋を叩く音で目を覚ました。
時計を見ると、すでに昼を大きく回っている。
扉を開けると、ベルゼと職人風の男が2人立っていた。
状況を理解する間もなく、無言で身体のサイズを測られ始める。
「……なに、これ?」
「明日のパーティー用の正装だ。終わったら持って帰れるらしい。金貨3枚分はする服らしいぞ」
「……そんな高いのを?」
「それと、イルジョン島のモンスターは完全殲滅が確認された。
これからは本部管理の研究区域になるそうだ」
計測が終わると、職人たちは早々に引き上げていった。
ベルゼの話では、フランとミラは街へ買い物に出ているらしい。
外出を勧められたが、小角は断り、
再びベッドに倒れ込んだ。
前鬼と後鬼の長時間顕現。
一言主神の力の行使。
戦闘用呪術の連続使用。
その後の徹夜の宴。
疲労は、さすがに限界だった。
――――――
凱旋パーティー当日。
小角、フラン、ミラは、それぞれ今まで袖を通したこともないほど高価な衣装に身を包まされていた。
フランには桃色のドレス。
ミラには青色のドレス。
小角には茶色のタキシード。
戦闘服の色を意識した配色らしい。
昼には奉祝式が行われ、シーア最大の屋外広場には多くの人々が集まった。
壇上が設けられ、
招待席には――
パジャン村のギルドマスター・カフザ。
バーリ。
ロッキの両親。
そして、ミラの両親。
完全なサプライズだった。
イルジョン島へ向かった6人は、最前列に並んで座らされる。
司祭主導の式典は長く、
会長の挨拶、本部長の挨拶、支部長、市長、後援会――
ありがたい言葉が延々と続いた。
フランとフィート以外は、睡魔と必死に戦っているようだった。
やがて6人が壇上に呼ばれ、
功績を認められた者に授与される《英雄の首飾り》がかけられた。
この世界で、それを授かる意味は大きい。
パジャン村から来たメンバーは、涙を流して祝っていた。
――だが、それで終わりではない。
夕刻から始まったパーティーの最中。
再び3人が壇上へ呼び出される。
会長と本部長ポンズが並び立ち、会場全体に向けて声を張り上げた。
「我らの悲願、イルジョン島制圧を成し遂げた、パジャン村ギルドの冒険者3名を紹介する!」
酒も入り、会場は大歓声に包まれる。
「感知と判断で戦闘を最小限に抑え、冒険者救出に貢献した――
パジャン村ギルド、Aランク魔術師、ミラ!」
ミラは言葉を失い、両親は目を丸くする。
彼女はBランク試験を受けたばかりなのに、
Aランクの認定を受け取ることになったからだ。
「続いて――
魔力に頼らぬ不可思議な術で仲間を守り抜いた、
パジャン村ギルド、Aランク冒険者、ロッキ!」
歓声の中、両親は号泣していた。
ゴーシとニーナはロッキへ、千切れんばかりに手を振った。
目立ちたくない上、恥ずかしさもある中、ロッキは小さく手を振り返す。
小角は複雑な心境でAランク認定を受け取った。
そして――
「2年前の屈辱と悲劇を乗り越え、島の主を討ち果たした――
パジャン村ギルド、最年少Sランク冒険者……
閃光のフラン!」
――スタンディングオベーション
広場全体が揺れるほどの拍手。
その時、
カフザは立てないほど泣いていた。
フランは認定書を受け取ると、何も言わず壇を降り、
カフザのもとへ駆け寄った。
「……マスター! ……カフザおじさん」
「フラン……!」
「わたし、もう大丈夫だから。
これからも、パジャン村の冒険者でいるから」
「……おめでとう」
フランを見守り続けてきた、寡黙な男の声は震えていた。
こうして、イルジョン島編は幕を閉じる。
だが――
役小角は祝福の裏で、すでに次の目的地を見据えていた。
生まれ変わりの真実を知るために――
この世界に存在するはずのない、自分以外の呪術師と会うために――
シルドの母、カルタのもとへと向かう。
新たな章は、静かに始まろうとしていた。
ここまで『閃光のフラン』の物語にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
島編を経て、フランはひとつの決着を迎えました。
ですが――物語はまだ終わりません。
次章より、第3章「生まれ変わり編」が始まります。
いよいよ、ロッキの物語が大きく動き出します。
島編以上の展開をご用意しています。
ぜひ、見届けていただければ幸いです。
次回更新は1日お休みをいただき、17日の20時ごろより再開いたします。
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