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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
2章 イルジョン島編

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31話 前鬼と後鬼





 キングオークが、ベルゼとフィートに向かって突進した。

 呼応するように、周囲のモンスターたちが2人を囲む。


 

 「ベルゼさん! フィートさん! くそっ……!」


 

 助けに向かえないシルドは、歯を食いしばった。

 ――甘かった。

 イルジョン島という場所を、根本から見誤っていた。


 

 「……逃げろ、フィート」


 「この状況でどうやって逃げるんだよ……

 もう、終わりだ……」


 諦めの言葉が零れた、その瞬間。

 キングオークの身体が、頭から股まで爆ぜるように裂けた。


 

 「……!?」


 「なに……?」


 

 両断された死体の中心に、黒きモンスターが立っている。


 次の瞬間、影が走る。

 それはまさに疾風だった。


 黒きモンスターは地を蹴り、わずか数秒でベルゼとフィートを囲む群れに突入する。

 武器は使わない。

 拳と蹴りだけで、モンスターたちを叩き潰していった。


 

 「……何が起こった……?」


 

 理解が追いつかないシルドの背後に、気配が生まれる。


 

 「お前は……まだ戦えそうだな」


 

 振り返った瞬間、黒きモンスターが背後に立っていた。


 

 「……なにものだ?」


 「俺の質問に答えろ。こいつらを、どうしたらいい?」


 一瞬の沈黙の後、シルドは答えた。


 「……倒して、もらいたい」


 「了解だ」


 その一言で、すべてが終わった。


 前鬼は拳ひとつで、周囲のモンスターを殴り潰した。

 魔術は使わない。

 ただ、圧倒的な力だけ。



 シルドの脳裏に、幼い頃に聞かされたおとぎ話が重なる。

 ――戦神のシュラ。



 一部始終を見届けた小角は、円陣に封じていたモンスターへと視線を戻した。


 

 《烈波の式》


 

 円陣の内側で炎が逆巻き、封印していたモンスターをすべて飲み込む。

 灰になるまで消えぬ炎が、命の痕跡を完全に消し去った。


 ミラの水晶玉に映っていた、この一帯のモンスター反応は、すべて消滅していた。

 絶望的だった戦況は、完全にひっくり返っていた。


 

 「あっ……あのモンスター、見覚えがあります! 以前にも、わたし達を助けてくれた……!」


 

 ミラが森から飛び出し、皆のもとへ駆け寄る。

 ベルゼ、フィート、シルドの視線は、揃って前鬼に向けられていた。


 

 「君は……何者だ?」


 「恐れるな。敵ではない。役小角の使役する妖だ」


 「えんの……? 妖……?」


 そこへ、小角とミラが並ぶ。


 「シルドさん、大丈夫です。僕の仲間です」


 「ロッキ君の……召喚獣、ということかい?」


 「……まあ、そんなところです」


 「言語を操り、人型で、これほどの力……。

 Sランクの中にも、こんなのを操れる魔法使いはいないよ……」


 ミラが頷く。


 「間違いありません。エルフの時も助けてくださいました。ロッキ君の召喚獣です」


 「……生まれ変わりを体験した者は、ここまでの力を持つものなのか……」


 ベルゼが肩で息をしながら笑った。


 「ロッキは未確認の魔術ばっか使うからな。こんな切り札まで隠してたとは……」


 そのとき、シルドがふと呟いた。


 「……『あの人』も、生まれ変わりの体験者だと言っていた。

 確かに、不思議な術を使う人物だったが……」


 今の一言に、小角はわずかな引っ掛かりを残した。

 だが今は、それを追う余裕はない。


 

 「フランちゃん……彼女が心配です」


 「大丈夫ですよ、ミラさん。フラン姉さんにも、強力なお守りが付いています」


 「……お守り?」



 それでも、小角の胸騒ぎは消えなかった。

 鬼門遁甲盤は、なおも洞窟の奥に凶兆を示し続けている。

 


 ――――――



 洞窟内。


 後鬼が先頭を歩き、フランがその背を追う。

 後鬼の感知術により、攫われた冒険者の位置は把握できていた。


 進むほどに、モンスターの襲撃は激しさを増す。


 だが――


 小鴉丸を手にしたフランは、現れるモンスターを次々と斬り伏せていた。

 先ほどのオークには届かなかった刃が、嘘のように通る。


 「閃光のフラン……その名に違わぬ強さですね」


 「この刀の切れ味が凄いだけよ」


 「御謙遜を」


 「……でも、あのオークほどの相手が出てきたら……」


 「今お斬りになったモンスターは、すでにあのオークより遥かに強い個体ですよ」


 「え……?」


 そこへ、ゴブリンの群れが現れ、奇声を上げて襲いかかる。



 『岩床のがんしょうのむしろ


 

 岩の針山が突き出し、ゴブリンたちを一瞬で串刺しにした。


 

 「……凄い術ね」


 「ありがとうございます――

 フラン様は、ご自身の力を抑えておられる」


 「……!」


 「剣が折れることを、恐れているのでしょう」


 沈黙が落ちる――。


 「命ともいう武器を失う恐怖が、あなたの本気を縛っている」


 「……どうして、それを」


 「安心してください。小鴉丸は、絶対に折れません」



 そして後鬼は前を向き、歩き出す。

 フランは黙って、その背を追った。



 「後鬼って、通り名よね。本当の名前を教えて」


 「……どうして、そう思われました?」


 「あなたの強さに、名前が釣り合ってないもの」


 「ふふっ……あなたは、やはり素敵な人間ですね。

 今まで、わたしの名など気にした者はおりません。

 あのロキボウですら」


 「同じ……女だから、かな」


 「……」


 「教えられないの?」


 「……紅葉と申します」


 「モミジ……いい名前。

 あなたに似合ってる」



 後鬼は、胸の奥に少しの懐かしさを宿した。



 「それでは参りましょう、フラン様」


 「紅葉」


 「……はい?」


 「フランでいいわ」


 後鬼は、静かに微笑んだ。



 「それでは……参りましょう、フラン」







 

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