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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
2章 イルジョン島編

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24話 フランの決断





 突然、パジャン村のギルドに姿を現したベルゼとフィート。

 ふたりは形式ばった挨拶もそこそこに、本題を切り出した。


 

 ――イルジョン島へ、同行してほしい。


 

 その言葉を聞いた瞬間、フランは完全に固まっていた。

 視線は虚空を彷徨い、呼吸が浅くなる。


 ベルゼは、その様子を痛いほど理解した上で、低い声で続けた。


 「お前がイルジョン島から生還したことは知っている。

 それが原因で1度は冒険者を引退したこともだ。

 ――すべて承知の上で、頼みに来た」


 フランは何も答えられない。


 「今回の目的は討伐じゃない。調査……いや、仲間の救出だ。

 戦闘は極力避ける」


 ――沈黙が落ちる。


 その重さに耐えきれず、役小角が口を開いた。


 「……フラン姉さん以外にも、イルジョン島の経験者はいるはずです。

 他を当たった方が賢明では?」


 「声は掛けた。全員に断られた」


 即答だった。

 

 フランは、唇を噛みしめる。

 視界の端が、じわりと滲んでいく。


 「なら、本部主導で部隊を編成すれば――」


 「本部は、もう動かない」


 ベルゼの言葉は苦々しかった。


 「2年前の被害が原因だろう。

 Sランクの派遣? あり得ない。

 再びSランクから死人を出しては、話にならんからな……」


 その言葉の裏にある意味を、小角は理解してしまった。


 ――イルジョン島では、Sランクですら死ぬ。


 だからこそ、本部は“救出”という名の危険な任務から目を背けている。


 

 「……救出とは、どういう状況です?」


 「港の監視部隊だ。 立入禁止海域だが、それでも一般人の馬鹿が上陸を試みる。

 それを止めるために、小部隊を常駐させている」


 「その彼らが島へ?」


 「島へ向かう船を追ったきり、戻ってこない。

 送り届けた船長からの報告でな。1時間経っても帰還しなければ本部へ連絡する取り決めだったようだ」


 小角は、横を見る。


 フランは目を閉じ、身体を小刻みに震わせていた。


 ――連れて行ける状態ではない。


 そう判断し、小角は立ち上がった。


 

 「……申し訳ありません。今回の依頼はお断りします」


 

 その瞬間。

 ベルゼが椅子を離れ、床に膝をついた。


 両手を突き、額が床に触れる。


 「頼む……!お前達しかいない!戦わなくていい!

 島の地理、比較的安全なルート、それだけ教えてくれればいい!」


 「……生きている保証はないんでしょう」


 小角の声は、静かだった。


 「そんな場所へ、フラン姉さんを連れて行けない」


 「生きている!」


 ベルゼは叫ぶ。


 「……いや、本部は死んだと判断しているかもしれない。

 だからこれは、俺個人の依頼なんだ!」


 そのとき、初めてフィートが口を開いた。


 ベルゼの肩に手を置き、小角をまっすぐ見据える。


 「僕からも頼む。大切な仲間なんだ……どうしても助けたい」


 「……誰ですか?」


 「アイナだよ」


 小角の思考が止まった。


 あのとき、ベルゼと対峙した際、割って入ってきた白鎧の女。

 群を抜いた実力者。


 「……ベルゼの妹なんだ」


 その一言に、小角は言葉を失った。

 あの日の口論が、兄妹喧嘩だったと知る。


 「数々の無礼を心から詫びる。だから……頼む」


 ベルゼは再び、深く頭を下げた。


 だが、それでも――

 小角は、フランを守るため断るつもりだった。


 そのとき。


 「……わかりました」


 微かな声。


 だが、確かだった。


 「同行いたします」


 全員が息を呑む。


 「フラン……本当か?」


 「はい」


 彼女は、まっすぐ前を見ていた。


 「ベルゼ様は、この村のために動いてくださった。

 礼は、礼で返すべきです」


 「しかし――」


 「この前、ミラさんが言っていました。

 恐怖を払拭するためには、依頼を達成させて自信を持たせるしかないって……」


 フランは静かに続ける。


 「エルフの件を終えて、ミラさんは変わった」


 フランは一度だけ深く息を吸った

 

 「……わたしも、変わらなければならない」


 ベルゼは深く頭を下げた。


 「恩に着る。

 明朝、トウゴ港へ発つ。準備を頼む」


 こうして。


 フランは再び、

 自ら封じた“禁断の島”へ向かうことになった。



 イルジョン島――

 彼女の過去が眠るその場所へ。



 


 

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