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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
1章 剣と呪術の因縁編

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22話 真相は夜空の中へ



 気が付いた時には、ロンズとバジルの額に矢が突き刺さっていた。

 2人は呻き声一つ上げることなく、その場に崩れ落ちる。


 

 「……!」


 「きゃあっ――!」


 

 バーリとミラが、反射的に息を呑む。

 役小角とフランは、同時に空を仰いだ。


 満月を背に、遥か上空。

 夜空に溶け込むように、2つの影が弓を構えていた。


 エルフのリーダーと――

 その娘、フォーレ。


 放たれた矢は、正確無比だった。


 

 「お父様……」


 フォーレが、震える声で言った。


 「ここで、あの人間達を処分しておかなければ……

 わたしは……わたしを失ってしまいます」


 「……その通りだ、フォーレ」


 

 エルフの父は、迷いなく応えた。


 2人はロンズとバジルの死を確認すると、構えを解き、地上の人間たちを見下ろした。

 フランたちも、黙ってその視線を受け止める。


 

 「女剣士」


 

 エルフのリーダーが、フランへ告げる。


 

 「我らの矢に気付きながらも、お前は止めなかった……。

 つまり、それがお前の本心だったということだ」


 否定も、肯定もしない。


 次の瞬間――

 2匹のエルフは大きく翼を広げ、夜空の彼方へと消えていった。


 

 密猟者は全員、死亡。

 事件の真相を、完全な形で語れる者はもう存在しない。


 それでも、この一件は幕を下ろした。


 

 「……すみません」


 

 ミラが、唇を噛みしめる。


 

 「水晶玉で感知を続けていれば……こんなことには。

 もう……彼らの気配はありません」


 

 ――真相は夜空の中へ



 果たして、エルフの言葉通りなのだろうか?


 あの時、剣に手を掛けたのは――

 ロンズを斬るため。

 それとも、矢を弾くため。


 ――それは、彼女自身にしか分からない。


 地面に横たわる死体を見下ろし、バーリが吐き捨てる。


 

 「自業自得だろ。俺たちが気に病む話じゃねえ」


 

 ――――――


 

 地下に避難していた人々は、地上へと戻った。


 

 失われた日常は戻らない。

 それでも、生き残った人々は、再び歩き出さなければならない。


 ロンズとバジルの遺体は、人目に触れぬよう司祭室の檻へと運ばれた。

 皮肉にもエルフを閉じ込めていた檻である。


 やがて、集落の人々から声が上がる。


 

 「神父様と……バジルさんは、どこへ行った?」


 

 その問いに、ミラが静かに淡々と事の顛末を語った。


 信じない者もいた。

 だが司祭室を見せれば、誰もが言葉を失った。


 檻に残された2つの死体。

 そして、捕らえられているモンスターたち。


 人々は何も言わず、それぞれの家へと戻っていった。



 ――――――

 

 

 翌朝。

 伝書鳩を受けた後発隊と、審問官が集落へ到着した。


 あとの判断は、ギルド協会本部に委ねられる。

 小角たちの仕事は、ここまでだ。


 帰還用の馬車が用意され、彼らはその日のうちにパジャン村へと戻った。


 

 戻る馬車の中。

 バーリが、ふと思い出したように口を開く。


 

 「なぁ……今回の依頼、依頼主が悪人で死んでるよな?

 俺たちの報酬、どうなんだ?」


 「審問官と本部が事実確認をして決めるんだよ」


 ミラが即座に答える。


 「報告が通れば、ギルド協会が依頼主の代わりに支払うわ」


 「金はどっから出るんだよ?」


 「神父の資産を押さえる。それでも足りなければ本部持ち。

 今回はAランク依頼だから、最低でも金貨100枚以上は確約だものね」


 「……本部、大損じゃね?」


 「その分、普段からいろいろ徴収してるじゃない」


 

 フランは、黙って車窓を見つめていた。


 最年少Aランク剣士。

 天才剣士。

 

 ――閃光のフラン。


 数多の称号とは裏腹に、彼女はまだ17歳だ。


 背負うには、あまりにも重い現実。

 決断するには、あまりにも早い年齢。


 それでも、剣を振るうことしかできない。

 小角は、その横顔を見つめながら静かに思った。



 ――これからも、彼女を支えよう。


 

 ――――――

 


 パジャン村に戻ったのは、夕刻だった。


 ギルドハウスでは、帰還を祝う声が上がっていた。

 だがフランは、その輪に加わることなく、静かに家路につく――


 小角もまた、言葉を交わさぬまま隣を歩いた。


 その背中に――

 あの日の恐怖が、影を落とし始めていることを、

 まだ誰も知らなかった。


 

 ――――――


 

 翌日、大都市シーア。

 ギルド協会本部。


 エルフ密猟事件が話題となる中、

 本部長ポンズのもとへ、緊急の伝書鳩が届いた。


 封筒には、赤字で記されている。


 【緊急案件】


 ポンズは即座に封を切り、文面を読み――息を呑んだ。


 

 ――イルジョン島。

 ――監視部隊4名、行方不明。救援求む。


 

 イルジョン島。

 それは、フランの両親が命を落とした島の名。


 

 あの惨劇から2年――

 再びあの島で、何かが動き始めていた。






 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


第一章「剣と呪術の因縁編」で描いてきたものは、

単純な勧善懲悪で終わる話ではありませんでした。


剣を取った者と、

呪術を使った者。


立場も、過去も、持つべき力も違う2人が、

同じ場所で、同じ“守りたいもの”に向き合っていく物語でした。


そんな2人が進む先に待つのが、

第二章「イルジョン島編」です。


その選択がもたらした“続き”の物語を、

これからも見届けていただければ幸いです。


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