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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
1章 剣と呪術の因縁編

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18話 檻の中のエルフ


 


 教会には結界が張られていた。

 それも、生半可なものではない。


 ――あくまで囮の結界。


 エルフたちに「人間は教会に籠城している」と思わせるためだけの結界。

 破られたとしても、そこには誰もいない。


 本当の避難所は、林の奥。

 その地下深くに隠されていた。


 

 ――――――


 

 「……あのぉ、ロンズ神父」



 地下避難所で、ミラが口を開いた。


 

 「神父って……もしかして、鉄壁のロンズ様ですか?」


 一瞬、空気が止まる。


 「鉄壁……?」


 フランが小さく首を傾げた。

 ミラが説明する。


 

 「昔、有名だったAランク冒険者です。結界術と封印術の専門家で……

 Sランク冒険者でも解けない術を張った、って話が残ってます」


 ロンズは、静かに微笑んだ。


 

 「……昔の話ですよ」


 

 自嘲気味に肩をすくめる。


 

 「今はただの老いぼれ司祭。Bランクに留めていただいているのも、協会の温情です」


 「そんなことありません」


 ミラは即座に言った。


 「教会の全体結界、地下の隠蔽結界、それに――」


 視線を壁へ向ける。


 「避難所に入ってすぐにある“扉”の結界。

 同時に複数展開できる術者なんて、ほとんどいません」


 「扉……?」


 フランが問う。


 「地下トンネルの途中にね、壁面にあった扉を隠している結界があるの……普通では気付けないよ」


 「……わたしには、見えなかったけど」


 フランの言葉に、ロンズは楽しげに笑った。


 「それで良いのです。避難者を不安にさせないための目隠しですから」


 「あの扉はどこへ繋がっているのですか?」


 ミラの問いに、ロンズは答えた。


 「教会です」


 一瞬の沈黙。


 「教会が突破された場合、通路を通ってこちらに侵入される可能性がある。

 もちろん、その通路にも結界は張っていますが……」


 ミラは、素直に感嘆した。


 「……感激です。依頼が終わったら、ぜひ教えを請いたいです」


 「はは……若い方にそう言われるのは、嬉しいものですな」


 

 ――――――


 

 話し合いが一段落すると、避難者たちが食事を用意してくれた。

 だがフランは、首を横に振った。


 

 「お気持ちだけで十分です。今は皆さんが生き延びることを優先してください」


 

 夜が迫る中、フランは言った。


 

 「外を、見てきます」


 

 危険だと引き留められたが、彼女は外へと向かった。


 

 ――――――


 

 教会の正面へ出ると、空は完全に夕闇に染まり始めていた。


 やがて、この集落は月明かりだけの世界になる。


 バーリが不満を漏らす。


 

 「なぁ、なんで飯食わなかったんだよ。俺、腹減ってんだけど」


 「バーリ、静かに」

 

 ミラがたしなめる。

 

 「フランは考えごとをしてるのよ」


 「何を――」

 

 フランは足を止め、振り返った。

 

 「エルフの数が、少なすぎる」

 

 3人が黙る。

 

 「土地を奪うなら、動きが非効率。

 集落もほとんど壊されていない」


 「……つまり?」

 

 ロッキが言った。


  

 「目的は占領じゃない」


  

 そこでバーリが周りを見渡しながら――口を開く。


  

 「……地下でよ、妙なもんを見た」

 

 フランが目を細める。

 

 「妙なもの?」


 「檻だ。教会の中に檻があった」

  

 バーリは続ける。

 

 「その檻の中に……女のエルフがいた」


 空気が凍りつく。


 「……どうやって見つけたの?」


 ミラが問う。


 「ロッキが、俺にも結界で隠された扉を見えるようにしてくれたんだ」

 

 ロッキは黙って視線を逸らす。


 「扉の先は教会でよ。

 柵が邪魔して教会までは入れなかったんだが、いくつか檻があってさ。

 中身は……その女エルフと全部モンスターだった」


 「そのこと誰かに話した?」


 「いや。ロッキが黙ってろって言うから……」


 フランは、静かにロッキの頭に手を置いた。


 「……いい判断だよ。ロキ坊」


 「今は、言うべきじゃないと思ったんです」


 

 フランが優しく微笑んだ。


 

 ――――――


 

 「エルフの……密売」


 

 ミラが、低く呟いた。


  

 「嫌な話になってきました」


 

 フランが答える。

 

 本当に恐ろしいのは人間。

 モンスターよりも。

 妖よりも。


 フランは、闇に沈む教会から目を離さなかった。


 ――エルフは、奪いに来たのではない。

 ――取り返しに、来たのだ。


 そう考えた瞬間、

 この集落が、ひどく歪んで見えた。


 夜は、何も答えないまま深まっていった。


 


 


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