14話 誰がために剣は戻る
冒険者のランクは、AからEまでの5段階に分けられている。
そして――
その枠外に、Sランクが存在する。
現在、Sランク冒険者は11名。
かつては12名だった。
依頼にも同じようにランクがある。
Eは雑務。
Dは下級魔物。
Cは獣型。
Bは人型。
Aは知性を持つ高位魔物。
そしてSランクの依頼は、災厄だ。
放置すれば都市が滅びる。
だからギルド協会が動く。
――それが原則だった。
だが、例外がひとつだけ存在する。
絶海の孤島。
フランの家族を奪い、彼女の剣と心を折った場所だ。
Sランク冒険者を1人失い、
それきり協会は、討伐に踏み切れていない。
――――――
復帰2日目。
フランは、Bランク依頼を受けていた。
内容はゴブリン討伐。
1泊2日の依頼。
隊はフラン、バーリ、ミラ、ロッキの4人。
ギルドマスターのカフザは、増員を提案したが、フランは首を横に振った。
「……大丈夫」
その言葉通りだった。
30匹を超えるゴブリンは、ほぼ彼女1人で片付いた。
剣閃は速すぎて、視認できない。
気づいた時には、敵は倒れている。
閃光。
電光石火。
その名に偽りはなかった。
「首を落として」
フランは冷静に指示する。
「彼らは死んだふりをする。油断しないで」
Bランク以上の魔物は、知恵を使う。
それを、彼女はよく知っていた。
――17歳の戦い方ではない。
ロッキは、そう感じていた。
まるで誰かを守るために――
それを誰にも任せないために――
戦っているように見えた。
――――――
帰路の馬車。
沈黙を破ったのは、バーリだった。
「なぁ、フラン」
「……なに?」
「強ぇのはいい。でもよ」
少し言いにくそうに、続ける。
「俺ら、信用してねぇだろ」
「そんなこと――」
「全部一人でやりすぎだぜ」
声が、強くなった。
「活躍する場所すらねぇ。ミラもロッキもだ」
「……」
「ひとりで背負いすぎなんだよ」
フランは、黙った。
やがて、小さく頷いた。
「……ごめん」
ミラがバーリを睨む。
だが、ロッキは思った。
――バーリは正しいことを言った。
――――――
ギルドへ帰還。
報告を終え、宴の準備が始まる。
バーリとミラは残り、
フランとロッキは、いつものように並んで帰路についた。
静かな道。
ロッキが口を開く。
「……今日の戦い」
フランが、足を止める。
「僕たちを、戦わせないようにしてたよね」
「……」
「みんな、気づいてるよ」
フランは、俯いた。
「……怖いの」
声が、震えた。
「また、誰かが死ぬのが……」
彼女は、言葉を絞り出す。
「あの日……強いはずの冒険者たちが、遊ばれるみたいに殺されていくのを見た」
絶海の孤島。
家族。
仲間。
そして――Sランク魔術士リアス。
12人いたSランクは、11人になった。
天才と謳われた魔術師の死。
それを、彼女は目の前で見た。
「だから……」
フランは、拳を握る。
「誰にも、戦わせたくない」
ロッキは、静かに言った。
「僕は、死なない」
フランが顔を上げる。
「僕がいる限り、バーリもミラも死なせない」
事実だった。
彼には、その力がある。
「1人で守るやり方は、長く続かない」
「……わかってる」
「だから――信用してよ」
フランは、しばらく黙っていた。
やがて、微かに笑顔を見せた。
「……ありがとう」
完全な復活には、まだ遠い。
だが。
彼女の剣は、戻りつつあった。




