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閃光の剣士と鬼使いの呪術師 ~魔力が支配する世界にひとりだけ~  作者: 鬼喜怪快
剣と呪術の因縁編

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11話 17歳の覚悟


 アイナは、ロッキの目を真正面から見据えた。

 倒れ伏すベルゼを背に、アイナは全員を見渡し、静かに口を開いた。

 

 

 「よく聞いて、ロッキ。あなたは……強いわ。ここにいる誰よりも、恐らく」


 

 ざわり、と空気が揺れた。


 「ベルゼさんは、あなたに勝てるとは思っていなかった。だから事前に、わたし達に言っていたの」


 アイナは視線を巡らせる。


 「ロッキが何をしても、黙って見ていろ。俺が本当に殺されかけた時だけ止めに来い、と」


 「……なぜ、そこまで?」


 小角の声は低かった。


 「あなたの力を、わたしに見せたかったからよ」


 「……」


 「ギルド閉鎖を止めるため。あるいは――

 一度負けた悔しさから、本気のリベンジだったのかもしれない、

 だから彼は本気で戦っていたわ」


 小角は黙ったまま、倒れているベルゼを見た。


 「……それでは」


 視線を戻す。


 「僕は、Aランクに認定されるのですか?」


 アイナは、迷わなかった。


 「いいえ」


 一言だった。


 「あなたを、Aランク冒険者としては認定できません」


 ――周囲がどよめく。


 パジャン村の冒険者たちが、一斉に騒ぎ出した。


 「あれだけの強さで!?」

 「Aランクを圧倒したんだぞ!?」


 その声を制するように、アイナが続けた。


 「ベルゼさんは、気付いていませんでした……」


 彼女は、淡々と事実を告げる。


 「最初に斬ったモノが土人形だった……。

 立ち会ったその時点で、すでに幻術にかかっていたことに……」


 視線が、ロッキへ向く。


 「それと彼が必死に振るっていた剣はあなたにではなく――

 人型に切られた小さな紙片に向けられていたことに」


 周りは沈黙する。

 確かに、ベルゼは何もない空間に向かって剣を振り回しているように見えた。


 「それだけではありません」


 アイナは続ける。


 「あなたは、我々が把握していない術式を複数使用していた。

 あの力……私は、黒魔術の可能性を否定できないと判断しました」


 ――黒魔術

 その言葉が出た瞬間、空気が完全に凍りついた。


 「黒魔術は禁術です。

 使用・習得が確認されれば、原則――死刑」


 ロッキだけが、わずかに首を傾げた。

 ――黒魔術? 魔力もないのに?


 「とはいえ、確定ではありません」


 アイナはすぐに付け加えた。


 「だから、咎めもしない。追及もしない。――疑わしきは罰せず、です」


 しかし――


 「あなたの力が、正規の魔法使いのものではないことだけは確かです」


 そこは断言した。


 「正規の魔術を行使しない者を、高位魔法使いとして登録することは、規則上――不可能」


 ロッキは、反論しなかった。


 ――あれは呪術、などと言えば、何が起こるかわからない。


 だが、このままではギルドは閉鎖される。


 

 「……隊長」


 弱々しい声が割って入った。

 回復を受けながら、ベルゼが上体を起こしていた。


 

 「……ここまで強ぇんだ。Aランク扱いしてやりましょうや……」


 「規則は、規則です」


 彼女は即答した。


 「知ってんでしょ……」


 ベルゼの声が、震えた。


 「ギルドが閉鎖された村が、どうなるか……」


 アイナは、黙って聞く。


 「最初の1年は支援が来る。でも……その先はよ?」


 拳を握る。


 「飢饉が起きる。子供から死ぬ。疫病が流行れば、真っ先に切り捨てられる」


 「……ですからそれを防ぐために、我々は――」


 「1年だけだろ!」


 怒声をあげた。


 「こいつがいりゃ、防げるんだ!」


 「……わたしに……不正をしろと?」


 アイナの声が冷える。


 「あなたの発言は、明確に問題があります」


 「……偉くなって、ずいぶんと面白くない女になりやがって」


 「なんですって! 上官に向かって無礼な!」


 

 空気が張り詰める。

 その時。


 

 「……やめてください」


 

 静かな声が割り込んだ。


 フランだった。


 全員の視線が集まる中、彼女は一歩、前に出る。


 

 「……わたし、ギルドに戻ります」


 

 全員が黙り込んだ――


 「ですから……もう、やめてください」


 彼女は、すべてを見ていた。

 自分のせいで、誰かが怪我を負い、誰かが責任を背負い、村が壊れかけていくところを。

 

 「……いいのか?」


 ギルドマスターが、震える声で聞く。


 「はい」


 フランは、俯いたまま答えた。


 「……覚悟が足りませんでした。わたしが戻るので、ギルド閉鎖は行われません」


 歓声が上がる。


 「さすがだ!」

 「カッコいいぜ、最年少Aランク!」


 ――だが。


 フランは、笑っていなかった。


 

 「……本当に、いいのですか」


 

 アイナが、問いかける。


 「はい」


 17歳の少女は、青白い顔で答えた。

 

 「Aランクがいるギルドは、3ヶ月に一度、Aランクの依頼を受けなければならないのですよ」


 アイナが念を押すように話を続ける。

 

 「この村でAランクは、あなただけです。

 Aランクの依頼には、あなたが必ず出動しなければなりません」


 「……承知しています」


 

 17歳の少女のおかげでパジャン村は救われた。

 それは、少女の覚悟の上に成り立った救い。


 

 ――小角からすれば、それを「救い」と呼べるのか疑問だった。

 


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

明日も更新予定です、お楽しみいただければ幸いです。

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