10話 望まぬ証明
役小角は、ギルドハウスへ向かっていた。
理由は単純で明快だ。
あのAランクの2人が、彼を呼び出していると聞いたから。
――まだ懲りていないらしい。
はやる気持ちを抑えながら、ギルドハウスへと向かった。
――――――
村は、異様な空気に包まれていた。
本部所属の冒険者たちが集まり、
それを不安げに見守る村人と村の冒険者たち。
その中央に、ベルゼとフィートが立っていた。
「……来たぞ」
誰かが息を呑んだ。
小角は足を止め、淡々と告げる。
「僕を呼び出したのは、誰です?」
ベルゼが前に出た。
「俺たちだ」
「戦いは……好まないけど、そのつもりのようだね?」
――3人は無言のまま外へ出た。
少年と、Aランク2人の対峙。
誰がどう見ても、異様な構図だった。
「クソガキ。今度は本気でいくぜ」
ベルゼの全身に、魔力が満ちる。
フィートの詠唱が始まった。
強化魔法だ。
筋肉が隆起し、威圧感が一気に跳ね上がった。
「大人の本気ってやつを、教えてやる」
ベルゼが踏み込む。
一瞬、視界が歪んだ気がした。
「……?」
怯まず、ベルゼの剣は小角を切る。
しかし――
切ったものは土の山へと変わり、崩れていく。
「なに!」
小角は、いつの間にかベルゼの背後に立っていた。
ベルゼが振り返る。
次の瞬間――
一言主神解放。
小角が、静かに呟く。
――《全ての攻撃行動を、禁ず》。
するとベルゼの身体が止まった。
剣を振るうことも、足を動かすこともできない。
「……うっ、うそ……だろ?」
地面に、円陣が浮かぶ。
《流転の式》
ベルゼの鎧が、音を立てて朽ちていく。
彼の顔が、恐怖に歪んだ。
「……やめ――」
《烈波の式》
爆炎が響く。
その勢いで、ベルゼの身体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。
意識は、完全に失われている。
「――――」
周りの誰もが、声も出せずに見ている。
その時――
「……そこまでです」
刃が、小角の首元に触れる。
止めに来たのは協会本部リーダー、アイナだった。
他の使者たちも、小角を取り囲んでいる。
「退いてください、少年」
小角は、静かに両手を上げた。
「……仕掛けてきたのは、そちらですよ」
「ええ。承知しています」
アイナは剣を下ろし、深く息を吐いた。
「無礼を、お許しください」
周囲がざわめく。
「彼は、あなたの力を証明したかっただけのようです」
「……証明?」
「この村のギルドを、閉鎖させないために……」
小角は、倒れているベルゼを見た。
少しだけ――
理解ができてきた。
「……僕を代わりにAランクとして立てるつもりだった?」
アイナは、否定しなかった。
「あなたの魔力測定値は、Aランクに遠く及ばないと聞いています……」
「……」
「ですが――」
彼女は、はっきりと言った。
「実力はすでにAランクを超えています」
その言葉に、周囲の全員がロッキを見た。
「……困りましたね」
小さく、独り言のように呟いた。
――力を示したかったわけではない。
――目立ちたかったわけでもない。
面倒ごとが増えるのは好まない。
それでも――
面倒ごとから逃げることもできず、時間だけは前へ進んでいく。




