表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放者寄れば最強パーティー!?  作者: ちゆちゆん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

追放者、討伐に出る


 ギルドで討伐依頼を受けた四人は、山脈のふもとから続く荒れた山道を歩いていた。


 ガルドが大盾を背負いながら進む。

「はぁ……よりによって山登りか。俺、山登りだけは嫌なんだよな……」


「タンクの体力でそれ言う?」

 エリスがジト目を向ける。


「いや、体力はあるけどさ、山の虫が苦手なんだよ……あいつら顔にめがけて飛んでくるからな……」


「トロールの一撃を涼しい顔で受けてた人とは思えないよ……」

 リアンが苦笑する。


 サイラスはというと、本を開きながら歩いていた。

「ふむ、この地方のワイバーンは巣材に乾燥した草と捕食した生物の骨を使う……なるほどなるほど……。あ、でも——」


「先生、前見て歩いて」

 リアンが言った瞬間、


 サイラスが石につまずいて転びそうになる。


「おおっと!? ……す、すみません気をつけます。」


 エリスが呆れ気味にため息。

「本番前に転んで怪我したらギルドなんて報告したらいい?  “先生、ワイバーンより先に小石に敗れる”でいい?」


「それはさすがに不名誉すぎますね……」


「違うって言うけど、先生って言われるともう本人が反応しちゃってる」

 リアンが笑う。


 サイラスは微妙に恥ずかしそうに咳払いした。

「……ええ、もう先生では無いのですが。呼びやすいのは分かります。はい。」


 ガルドが後ろでぼそっと言う。

「残念ながら定着するな、これは……」



 ワイバーンの巣の近くの崖道


 風が強くなり、空気が少し冷たくなった。

 山壁に沿った細い道が続く。


 エリスが前に出て険しい顔を見せる。

「ここから先、ワイバーンの縄張り。気を抜かないで」


 リアンは杖を握りしめながらも、ちょっと弱音を漏らす。

「うぅ……胃が痛い……。昨日のパスタのせいじゃないよね……?」


 ガルドが横でぼそっと言う。

「違うと思うが……俺も胃痛いぜ……虫のせいで……」


「ガルドは昨日食べすぎただけでしょ」

 エリスが突っ込んだ。


 サイラスは空を見上げながら、さらっと恐ろしいことを言う。

「ふむ、この風の流れ、こんな険しい山に巣、これはかなり大きい個体でしょう。もしかすると固有個体の可能性も——」


「恐いこと言わないで!?」

 リアンの声が裏返った。


 サイラスは無自覚に頷く。

「言いたいことを抑えられない性分でしてね……研究者とはそういうものです」



 一行はその前進み山頂の岩場に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。


 熱気。

 乾いた血の臭い。

 羽ばたき——。


 次の瞬間、巨大な影が上空から舞い降りる。


 ギャアアアアアアッ!!


 ワイバーンが咆哮し、岩が震えた。


「来やがったな上等だ!」

 ガルドは大盾を地面に突き立て、一気に雄叫びを上げた。


 その背中はワイバーンに引けをとらないほど大きく頼もしい。


「エリス!正面は任せろ!全部俺が受け止める!!」


 エリスは剣を抜きつつ口角を上げた。

「言ったわね、責任重大よガルド!」


 ガルドは力強く頷く。

「見せつけてやるぜ……俺の“本当の防御”ってやつをな!!《ガーディアンシェア》」


 ワイバーンが急降下し、爪がガルドへ迫る。


 ガルドは盾を構え——


 ガァンッ!!


 衝撃で足元の岩が砕ける。

 だがガルドの体は微動だにしない。


「おらぁッ!この程度で俺は倒れねぇ!!」


 盾越しに響く咆哮に、ガルドも吠え返す。


「ガルド、いい囮!」


 エリスは風のように横へ回り込み、ワイバーンの翼の付け根へ剣を突き刺す。


「討伐隊ではいつも一歩後ろだったけど!」


 ワイバーンが怒り狂い、尻尾を振り回すが、

 エリスは退くことなく二撃、三撃と重ねる。


「私は二番手なんかじゃなかった……あいつが勝手にそう思ってただけよ!」


 遠距離から見ていたリアンは、歯を噛み締めた。


「……そうだよ。私は何もしてなかったわけじゃない……みんなの命、全部支えてた……!」


 杖を握る力が強くなる。


「もう“いらない”なんて言わせない……!!」


 リアンの魔法陣が輝いた。


「《自動再生オートリジェネ》!」


 淡い光がガルドとエリスを包み、

 筋肉の損傷、打撲、細かな傷を一瞬で癒す。


 ガルドが振り返る。

「リアン、助かったぜ!」


 エリスも笑う。

「いい腕じゃない!」


 リアンは胸を張った。

「どんな怪我でも治すから!  任せて!」


 一歩下がってワイバーンの動きを見ていたサイラスが、静かに呟いた。


「……よし、観察は完了です。」


「観察!?今!?」

 リアンが思わず声を上げてしまう。


 サイラスは冷静すぎる顔で頷く。

「ワイバーンの呼吸のリズム、顎の噛み締め方……。

 次の攻撃はブレス——今です。」


 ワイバーンが大きく口を開く。


「やばっ……!」


 ガルドが盾を構えるがブレスの直撃はダメージが大きい。


 サイラスが杖を構え、青白い光を走らせた。


「《氷鎖陣フロストバインド》!」


 地面から氷の鎖が飛び出し、

 ワイバーンの口と翼を瞬時に縛る。


 ブレスが喉の中で詰まり、

 ワイバーンが苦しそうに暴れた。


「ナイスよ、先生!」


 サイラスは静かに返す。

「ええ。学園を守るために、こういう術は何度も使ってましたので。

 ……まあ、誰にも気付かれませんでしたが」


「大丈夫だよ!今は全員わかってるから!」


 リアンの言葉に少しだけサイラスの口元が緩む。


「よし、チャンスだ!ぶっ倒すぞ!!」


「了解!いくわよ!」


「みんな、支えるから全力で!」


「動きを固定します。今のうちに。」


 四人の動きが完全に噛み合う。


 ガルドが突進し盾でワイバーンの胸を打ち、

 エリスが翼を斬り裂き、

 リアンが連続回復で二人を常に万全へ戻し、

 サイラスが弱点を魔法で暴き、行動を封じる。


 もはや追放された落ちこぼれではなかった。


 本当の英雄たちの姿だった。


 ワイバーンが最後の咆哮を上げた瞬間——


 エリスが跳躍。

 剣を逆手に構え、真上から落下する。


「これで終わりよ——!」


 ドシュッ!!


 剣が首筋を深く貫き、

 ワイバーンは大きな体を崩して倒れた。


 砂煙が消える頃、全員が息を吐いた。


「……討伐完了」


「よっしゃぁぁぁ!!」


「ふ、ふぇ〜……緊張した……!」


「非常に有意義でした。討伐も、観察も。」



 討伐の証拠としてワイバーンの牙と翼の一部を持って、四人はギルドへ戻ってきた。


 扉を開けた瞬間——

 賑やかな酒場風のフロアの空気が、ふっと静まった。


 ざわ…… ざわ……

「あれワイバーンの翼……だよな?」

「討伐できたのか?」


 ざわつく視線が一斉に向けられる。


 ガルドが小声でつぶやいた。

「おい……注目されてるぞ……」


 リアンもソワソワする。

「いきなり目立つの苦手なんだけど……」


 エリスが肩をすくめた。

「そりゃ新規パーティーがワイバーン討伐して戻ってきたらみんな見るでしょ」


 サイラスは落ち着いていた。

「観測するのにはなれていますが。観察されるのは新鮮です」


「観察って言い方なんかやだ!」

 リアンがツッコんだ。


 カウンターへ近づくと、受付嬢のミアが驚愕の表情で固まっていた。


「お帰りなさい……!ワイバーンの依頼はどうでした……?」


 ガルドが胸を張る。

「もちろん!討伐してきたぜ!」


 エリスがワイバーンの一部をカウンターにゴトッと置いた。

「確認して」


 ミアは慌ててそれを見て、

 さらに驚いた。


「こ、これは……まぎれもなく“成体”のワイバーン……!

 しかも大きい……!討伐成功です!!」


 ギルド全体がどよめく。


「え、新人パーティーじゃなかったのか?」

「いやでもあのタンク、どっかで見たことあるような……」

  「ヒーラーの子、あれ元勇者パーティの?」

「騎士の女の人、討伐隊のエリス様じゃ……?」


 ひそひそ声が飛び交う。


 リアンが顔を赤くして縮こまる。

「み、見られてる……あああ、恥ずかしい……」


 ガルドが苦笑する。

「俺もこんな注目されるの久しぶりだな……まあ悪くはねぇけどな」


 エリスは誇らしげな様子で腕を組む。

「目立つのって結構気持ちいいものね」


 サイラスは相変わらず冷静にメモしていた。

「……ワイバーンの魔力構造、やはり興味深い。報告より記録が優先ですね」


 ミアが書類をまとめながら、深々と頭を下げた。


「本当に……すごいです。危険度の高い依頼を、一日でこなしてくるなんて……!」


 後ろからギルドマスターまで登場する。


「本当に君たちがやったのか?」


 ガルド「もちろんだ!」


 エリス「依頼内容は果たしたわ」


 マスターはしばらく四人を眺めてから、腕を組んで言った。


「……いい眼をしてる。“本物の戦士の眼”だ」


 リアンが嬉しそうに笑う。


 ミアが袋を差し出す。


「こちら、ワイバーン討伐の報酬です。どうぞ!」


 ガルドが後ろから押し込むように言う。

「よし!  今日は豪勢に行こうぜ!」


 リアン「うんっ!」


 エリス「……いい仕事をしたあとはいい食事ね」


 サイラス「私は研究のための備品を……」


「そういうのは後!  ご飯行くよ先生!」

 リアンが腕を引っ張る。


「おい、あいつら……本物だぞ」

「追放者の寄せ集めって聞いたけど……逆に最強じゃね?」

「タンクの兄ちゃん、ワイバーンの攻撃をたえるとか耐久やべぇだろ……」

「ヒーラーの子、あれ勇者より勇者じゃね?」

「エリスって騎士いつも後ろに隠れてるイメージだったけどそんなに強かったのか……!」

「あの魔法使い、元先生らしいけどなんでこんな所に……?」


 ざわめきが広がり、四人は冒険者たちの視線を浴びながらギルドを後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ