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追放者寄れば最強パーティー!?  作者: ちゆちゆん


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追放者、集まる

世界には数多くの冒険者たちがいる。

その中には、実力がありながらも誤解や偏見、

あるいは誰かの都合で“追放”された者たちもいた。


 勇者パーティーの拠点。

 いつもより妙に静かな朝だった。


 リアンが目覚めると、勇者アルドが腕を組んで立っていた。

 周囲のパーティーメンバーも、怪訝な顔をしている。


「リアン、お前……今日で抜けろ」


「……え? なんで?」


 リアンは昨日も深夜まで回復魔法の勉強をしていた。

 仲間のために、もっと効率よく、もっと強く治せるように。

 突然の宣告に困惑の表情を浮かべる。


 勇者アルドは鼻で笑う。


「もう回復役は要らねぇんだよ。俺、最近気づいたんだ。

 ——“俺、無敵なんじゃね? ”ってな」


 仲間が頷く。


「最近は傷一つすら負ってませんしね」

「敵が弱すぎるんですよ勇者様の場合は!」


 リアンは息を呑んだ。


(いや……それ、全部私が《自動再生オートリジェネ》で回復してただけなんだけど?)


 しかし、それを言っても信じない空気があった。


 勇者アルドは続ける。


「お前はもう用済みだ。荷物になる前に出ていけ」


 リアンの胸が痛む。

 でも反論したら、もっと悪く扱われるのはわかっていた。


(……ありがとうくらい、言ってほしかったな)


 小さく礼だけ言い、リアンはパーティーを去った。




 Sランクパーティー《白銀の牙》の本部。

 ガルドはいつも通り装備を整えていたが、部屋に入ってきたリーダーが口を開くより先に嫌な予感がした。


「ガルド。お前……今日で抜けろ」


「………は?」


 鋼鉄の盾より分厚い信頼で結ばれていると思っていた仲間の発言に驚きを隠せない。

 だが彼らの表情はどこか余裕めいている。


 リーダーは得意げに語る。


「最近、俺たち強くなった気がするんだよな。

 敵の攻撃も全然痛くないし、やっぱ才能かなって」


 他のメンバーも次々に言う。


「正直、ガルドがいなくてももう余裕っしょ」

「タンクって時代遅れだよね」


 ガルドは心の中で叫ぶ。


(いや……お前らが硬かったのは、全部俺の《ガーディアンシェア》のおかげだ!)


 しかし、言っても理解される気がしなかった。

 彼らは「自分たちが強くなった」という事実に酔っていたからだ。


 リーダーがガルドの肩を叩く。


「まぁ安心しろよ。“壁”がいなくても俺たちならやれる。達者でな」


(……その“壁”が、どれだけあんたら守ってたか知らねぇのか)


 ガルドは無言で部屋を出た。




 国討伐隊の訓練場。

 隊長であり“国一番の騎士”と名高いレオンが、剣を肩に担いでいた。


「エリス。お前、今日付けで討伐隊から外す」


「……理由を聞いても?」


 レオンは笑う。だがその目は、妙に焦っていた。


「最近、俺の活躍がいまいち民に浸透しないんだよ。

 お前が戦場で目立ちすぎるんだよなぁ……? 二番手のくせによ」


 エリスには心当たりがなかった。


(……もしかして、私があなたの死角の敵を倒してたこと?

 あなたの周りの“取りこぼし”を片付けてたこと?

 そんなに目立つこととは思えないけれど……)


 だが真実を言えば、隊長のプライドをさらに傷つけるだけ。

 騎士としての立場を悪化させるのも嫌だった。


 レオンは続ける。


「目立つ部下はいらん。華やかな戦場は俺が独り占めする。

 だから……お前は今日で終わりだ」


 エリスは静かに頭を下げた。だが唇は震えていた。


「……今までありがとうございました」


(これまで“自称”最強を支え続けてあげていた私が……馬鹿みたいね)


 静かに剣を収め、討伐隊を後にした。




 魔法学園の校長室。

 山積みの書類、壊れた魔導設備、調整し直した魔法具……

 全部サイラスが昼夜問わず処理してきたものだ。


 しかし校長は腕を組み、不機嫌そうに言った。


「サイラス君、キミはもう学園に必要ない」


「……え? 僕の研究は役に立つものばかりですが」


「だからだよ! 研究ばかりして、授業にも出ず、学園行事にも参加せず……他の教師からも苦情が来ていてね」


 サイラスは苦笑した。


(……いや、行事の準備してたのも全部僕なんだけど?

 やらなければならない事が多すぎて表に出られなかっただけで)


 校長は印鑑を押しながら続ける。


「魔法の才能は認めるが……“教師としての自覚”がない。よってクビだ」


 サイラスは肩を落とし、眼鏡を指で押し上げた。


「……そうですか。これまで研究で学園に貢献していたはずなんですけどね」


「むしろ、あれも仕事の邪魔だったのだよ」


(……あなたが放ったらかしにしている業務も全部僕が片付けていたのに)


 サイラスは静かに退職届を置き、学園を後にした。




 王都近郊の中型都市・リーベル。

 商業ギルドと冒険者ギルドが合体したような街で、依頼の数は多い。高い城壁と結界石による結界のおかげで危険度は比較的低めの平和な街。


 冒険者ギルドにある依頼掲示板の前で立ち尽くす少女がいた。


 ──元勇者パーティーのヒーラー、リアン。


「スライム退治……薬草採取……。わ、私でもできるかな……」


 不安げにしていたその時ーー


「どいてくれ」


 低い声が背後から響いた。


 振り返ると、巨大な男が依頼板を見下ろしていた。


 ──Sランクパーティーを追放されたタンク、ガルド。


「ソロ向けの依頼、ねぇな……。今は誰ともつるむ気にはなれねぇ」


 リアンが勇気を振り絞り声をかける。


「あ、あの……い、一緒に依頼を受け……」

「いや、俺はひとりで……」


 と、ガルドが言い終わる前に。


 ドォォンッ!!


 ギルド全体が揺れるほどの衝撃。


「なんだ!?」

「モンスターが現れたのか!?」


 冒険者たちがざわつく中ーー


 ギルドの扉が開き、鎧の女性が飛び込んでくる。


「南門に巨大なトロールが現れた!討伐隊を待つ時間はないわ!」


 ──討伐隊から追放された女騎士、エリス。


 そしてその直後、もうひとり落ち着いた声が聞こえた。


「皆さん、落ち着いてください。結界石が破壊されたのかもしれません、まずはトロールを退けないと修復もできません」


 魔導書を持った青年が悠然と歩み入る。


 ──魔法学園を“不要な存在”として解雇された教師、サイラス。


「このままだと街が破壊されます。ですがまずは戦力を整えましょう」


 エリスが彼を見る。


「良い判断ね、あなたは……?」

「サイラスと申します。ちょっと前まで魔法学園で教師をしていました。色々あって今はただの魔法使いです」


 サイラスの視線がリアンとガルド、エリスに向く。


「……あなたたち、ただの素人ではありませんね?」


 リアンが小さく手を挙げた。


「私はエリス、勇者パーティーから……追い出されたんです……」


 ガルドとエリスが続く


「俺はガルド、Sランクパーティーから出て行けと言われてな」

「私はエリス、騎士だったけど討伐隊には不要みたいでね」


 サイラスはため息をつき、静かに言った。


「追放者が4人とは……。ですが、皆さん腕に覚えはあるようですね」


 リアンはぎゅっと拳を握る。


「……行こう!街を守らなきゃ!」


 ガルドが笑う。


「へっ、案外肝が据わってるじゃねえか!」

「では行きますよ。トロール相手に油断は禁物です」


 こうして4人は一時的にパーティーを組むことになりに南門へ走り出した。



 南門付近はすでに荒れ果て、トロールが門を殴り続けるたび地面が揺れる。


 エリスとガルドが城壁の上から先陣を切って飛び降りる。

 リアン、サイラスも浮遊魔法を使い後を追う。


「ガルド、前衛お願いします!」

「任せろ!《ガーディアンシェア》」


 ガルドが巨大な盾を構えた瞬間、金色の光が全員に広がる。


「……これは、あなたの能力?」

「俺の防御力を仲間に分けるスキルだ。お前ら、好きに暴れていいぞ!」


 リアンがすぐさま支援魔法を重ねる。


「《自動再生オートリジェネ》《再生加速ヒールブースト》 みんな無事でいて……!」


 エリスは風のように移動し剣を振り下ろす。


「ガルドとエリスの援護があるなら攻めに専念できるわ!」


 その後方でサイラスの魔力が膨れ上がる。


「《烈火の三連槍ファイア・トライスピア》」


 三つの火槍がトロールの肩、足、胸へと突き刺さる。


「さすが魔法学園の教師……火力が違う……!」

「それほどでもないですよ」


 トロールがガルドに拳を振り下ろし大地が砕けるほどの一撃が命中。


 しかしガルドは、涼しい顔のままだった。


「ふん……効かねぇな」

「ガルドさん、すごっ……!」


 エリスが跳び上がり、サイラスの火槍の傷を狙って剣を深く突き立てる。


「今よ、サイラス!」

「了解。《風刃の縦断ウィンド・クロスカット》」


 サイラスの風魔法がトロールの動きを止め、エリスがトロール

 の首筋へ渾身の斬撃。


 巨体が倒れ、地響きが街へ響いた。


「……終わりましたね」

「みんな、怪我ない!?」

「悪くねぇ連携だったな」

「追放者でも……やればできるわね」


 戦闘が終わった後、サイラスは結界石の方へ歩いていった。


「では、落ち着いたところで結界石を直しましょう。壊したままだとまた魔物が入ってきますからね」


 魔力陣を描き、サイラスは手際よく結界を修復する。



 結界の修復が終わりギルドへ戻ると、職員が走り寄ってきた。


「あなたたち!先ほどのトロール戦……見事でした! そこでギルドから正式依頼です!」


 リアンたちが顔を合わせる。


「え、依頼って……?」

「南方の山岳地帯にワイバーンが住み着いたようでして。他の冒険者では太刀打ちできず……ぜひ、あなた達4人に討伐をお願いしたいのです!」


 リアンは驚きつつも、どこか嬉しそうに微笑む。


「わ、私たちが……必要とされてる……?」


 ガルドが腕を組みニヤッと笑う。


「いいじゃねぇか。やってやろうぜ」

「ワイバーンは空中戦が厄介だが、私たちならいける」

「次の働き口を探していたのでちょうどいいですね」


 リアンが小さく拳を握る。


「みんなで……行こっ!」


 こうして追放された4人による、新しい冒険が正式に始まった。

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