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心を懸ける

作者: 暇庭宅男

何を書こうか?

昔はそんな思い無しに書き始めていた文も、今ではそんなふうに思い悩むことが多くなった。


やはり脳みそが新品ではなくなったからか。五百文字ほど書いて「こんなの前にも書いたじゃないの〜」とファイルごと消すことが多くなって、なろうに登録してからこの約一年間、じっくり見返したUSBの中の作品たちはやはり歳を追うごとに新鮮さをなくして、面白くなくなっていく。絶望的な確信を得た。


自分で読んでいて最高に好きだと言えるのは「虎と月と人魚」くらいであとの作品はせいぜい大学までで書いた物語のプロットをあちこちいじくり回す程度の事しか実はしていない。


今年に入ってついに、書く趣味に対してひとつ諦めを抱いた。

そも自分自身が面白くない思いをして生きているのを、見栄を張って面白い物語を作ろうとするからなんぼでも現実と乖離していって何かの百番煎じのような薄っぺらいつまらないものしか書けないのだ。


俺の心を書こう。

そう決めて、七月、「地獄の釜」を号砲にして、これまでに来た道を全速で逆に走り始めた。脳みその中に固着した二十年ものの鬱屈を、恥を承知でネットにブチまけてやれ。人の往来の中で大の大人が自己憐憫におんおんと泣き叫ぶような醜態を、構わず曝してやれ。


不思議とそうして、愚痴まみれのそれらを書いているとき、俺の心は何年かぶりに動き始めた。


驚いた。俺という人間は元来自意識が強くって、俺は俺はと言いたいのだ。体力知力に劣る自身の現実を、悲劇で覆い隠したかったのだ。そのくせその痴態を他人には決して見られまいと無為な格闘を繰り返していた。

自分で自分の知らなかった心の手触りを知って、そのあまりの幼さにあきれ返って、そして、なぜだろう、そのあまりの幼さを、いとおしく感じた。


およそ三年ぶりの創作活動。いっそ遺書代わりにと思って始めたそれは、思いがけず俺自身の命を長らえさせたのだ。ああ本当にスミマセン四駆さん、あなたの言っていたことが今になってわかるとは。自分の愚かぶりが可笑しくて、今、文字を打ちながら笑っています。


実際人生は辛いことのほうが多いのかもしれない。振り返る人生は醜くて悲しくて、ああ、けれど、本当に温かくていい匂いがする。来た道を走って戻りながら、ひとつ自分に誓う。


命なんか懸けてやらない。この命は俺のものだもの。俺自身が使い切るんだ。どんなに素敵な作品が作れるといって、命を作品にあげたりしない。


代わりに心を懸けよう。それなりに大事で価値もある。おまけに心だけは俺がどんなに老い衰えたところでその価値はなくならないから。

心を懸ける。書くものにあたって、それだけは外さない。

内面のほうで割と激動の夏だったので一つ備忘録として書いた。今後も書くものが暗いのは変わらないと思うけれど、暗いなりに熱量を盛り返しつつあることが本当に嬉しい。


なろうに登録してよかったと思う。この場をお借りして、暇庭宅男の作品を読んでくださる皆様にお礼申し上げます。本当にありがとう。

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