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文化祭の日

今日は待ちに待った文化祭だ。


 みんなはそう思うんだろうな……


 私たちは文化祭の準備をしていた。そんな時ふと友達がこんなことを言い出した。


「ねぇ〜?めいっちーのお兄さん、来るの?今年もさ〜」


「あー!それ私も気になってたー!去年の文化祭のときめっちゃかっこよかったもんね!」


「なんだか文化祭の内容よりめい兄の噂の方が大きくて話題をさらってたよね〜」


 みんな……人の気も知らないでキャーキャー言っちゃって……


「来ないはずだよ……」


「えー?どうして?」


「大学があるはずだから……」


 周りはそう聞くと露骨にテンションが下がってた。準備にとりかかる手もあからさまに遅くなって。


 頼むから来ないで〜、せっかくの文化祭をちゃんと楽しみたいよ〜……


 去年は兄のリードをちゃんと握るだけで大変だったのに……正直に言えばそれでも振り回されてたけど……


 みんなの前でも堂々とハグしてくるし、一日中ずっとそばにいた。


 さすがにこれにはみんなも引くかと思えば、顔の良さでちっとも気にしていなかったらしい……なんなんだよ!そんなに兄のご尊顔が眩しいか!常識も兄の顔の前には為す術なく霞んでしまうのかっ!


 はぁ、考えれば考えるほど辛くなる……


 でも男子だけは見る目が違っていた人も居たっぽい。なにか妬けるような目をしてこっちを睨んでたなぁ……まぁそうだよね。自分と比べて圧倒的にかっこよすぎるもんね。


 男子からしたら文化祭の日に告白しようとしたあの子も兄に心を奪われたんだろうなぁ……南無南無……


 ということで台風の目が来ないと信じよう。


 とうとうこの日がやってきた。文化祭当日だ。私たちは買い食いが止まらなかった。


 兄の居ない文化祭はこんなものなのか、こんなに楽しいものなのか!!


 と思っていた時期も私にはありました……


「あれ……あそこに……」


 もうわかった、これだけの言葉でわかった。


 もはや声に等しい短文からでも伝わる後の展開。


「やめてくれよ……」


「あれ芽唯のお兄さんじゃないっ!?」


 やはりか、やはりそうなんだな。


 うちの兄は凄いよ。期待を裏切らない。憎たらしいね。


「えっ!?嘘でしょ!?」


 ほら、もう仕上がっちゃうよ。周りの子が文化祭そっちのけで兄にばかりかまけるフェーズが。


 なんだよ!ゲストで来た芸人さんすらロクに話題に上げなかったくせに!


 男子ですら噂してんだよ……あの怪盗がやってくるんじゃないか……って


 んだよ、私の兄は心の怪盗かよ!


「…………」


「おっ、そこに居たのか」


 練は目をギラつかせて斜め顔からのキラリンチョ。


「「「キャー!!」」」


 キラリンチョじゃねぇよ!なにしてくれてんだよ!去年はしなかっただろうが!


「おーにぃーちゃーんー!?」


「おお!我が妹から来てくれるなんて!ご機嫌のようだな!」


 どこが機嫌良さそうに見えんだよ!


「なんで今日来たの!!」


 周りのギャラリーがよく騒ぐ。


「そりゃあ、妹の大事な日だからな。抜け出してきちゃった」


 兄はウィンクをした。それは歓声の合図だった。


「「「キャー!」」」


 いや悲鳴か?


 ってウィンクするな!


「いやいや抜け出して来ちゃったじゃないだろ!」


「ふふっ、細かいことなんて気にするな我が妹よ!小石のような小さいことにばかり気を取られていては今日という日を楽しめないぞ!」


 おまえのせいで楽しめねぇんだよ。


「それに今日は芽唯が主役のイベント。兄であるオレが来ないわけが無い!」


「……」


 私は少し照れてしまった。


 周りにこんなに人がいるのにキザなことよく言えたもんだな。


 流石に恥ずかしいというか……でも少し嬉しい……かも……


 それからというもの兄は一言一句言葉を発する度にキャーキャー騒がれしまいには興奮で倒れた子もいた。


 男子の方はきやがったかと熱烈な妬みの睨みを効かせる。


 余計惨めだ。


 写真撮影することになった。


 一応兄を外して友達だけとの撮影もあったが、それは数枚だけ。


 後の何十枚は友人や知り合い、知らない子までどの面下げてノコノコとやってきた。


 しかし今が絶好のチャンス。ようやく兄から逃げ出せる!


 するとしばらく廊下を歩いていたら突然物陰から男子が飛んできた。


「どうか!僕と付き合ってください!」


「「おおー!」」


 周りには囃し立てる奴もいれば騒ぐ奴もいた。


「あいつの兄もイケメンだが、芽唯自身も学校のマドンナなんだよな」


「ああ、たまにしか来ないからアイツの兄は特別感があって騒がれているだけで俺らも始業式当時は騒いでたものだ」


「今はもう少し慣れちまってたが……当時は一年から三年までうちのクラスに殺到していたな」


 そんなこともあったな、言われてみれば。


 しばらくはめんどくさかったなぁ、みんなお兄ちゃんほど顔も頭も良くなかったし。


 でも性格で好きな人も居たな……それを兄に話してみたけど。それ以来あの人、学校に来なくなったような……


 そんなことはさておき目の前の問題を解決しようか。大丈夫。


 一年の頃に鍛えた振り技。まだ健在なはずだ。


「ごめんなさい」


 どうよ!簡素に一言だけ言う。


 これがベテランの風格。


「いやでも!お願いします!」


 いやでもってなんだよ。


「え〜、あの〜……」


「今の僕じゃ釣り合わないかもしれませんけど……!絶対幸せにしてみせますから!」


 プロポーズかよ。


 結婚前提にお付き合いする覚悟で告白してきたな。この坊主。


 その覚悟は嫌いじゃないんだけど……


「なにがあったんだ?」


 この声は……!


「あっ、お兄ちゃん……」


 こんなに兄に頼りがいがあると思ったのは初めてだよ〜


 そんなことないけどね、何回も頼ってきたし……


「うちの妹になにか用か……?」


「ひぃひぃ〜!」


 兄からとてつもない男……いや格上のオスとしてのオーラがブンブン漂っていた。


 声の低さも地響きかってぐらいに廊下を走り抜ける。


 そんなオスライオンの前ではこの坊主もチワワにしか見えない。


 しかしここが不思議なところ。


 男子は怯えるのに女子の方は……


「「アーン!!」」


 なぜ嬌声を上げる?


「かっこよすぎます〜!」


「私を抱いて〜!!」


 あー、このセリフ……


 先生が聞いたらたまげるんだろうな……


 そんな兄にメロメロな女の子たちに、兄はウィンクだけして。


 私を連れ去るように抱えた。


 お姫様抱っこだ。


 あー勘弁してぇ……周りが余計にアツくなっちゃうじゃ〜ん……

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