パパラッチに囲まれるセレブ状態
兄であるアレクシスと別れ、屋敷に到着すると、沢山の買い物の荷物はメイドに任せ、私はエルクとオペラ観劇のための準備となる。
シャンパンゴールドのシルク生地のマーメイドラインのドレスは、体の凹凸を際立たせる実にセクシーなデザイン。こんなドレスが似合うのは……スタイル抜群の悪役令嬢グロリアだから!
髪はアップにして、エルクがわざわざプレゼントしてくれたメロパールの真珠のネックレスとイヤリングを身に着ける。姿見に映る私は、前世とは想像もつかない程のゴージャス&グラマラス!
「エントランスに馬車が待機しています。ご準備はよろしいですか?」
メイドもお決まりのフレーズを紙に書いて持ってくれるので、私はそれを見てこくこくと頷く。
「オペラグラス、ハンカチ、ルージュ、香水、扇子はこちらのポーチに入れましたので、お持ちください」
中身を見せながらメイドはポーチを私に渡してくれる。有能なメイドに助けられ、出発準備は完璧に完了。そのままエントランスホールへ向かう。
「おおお、グロリア。なんて美しい。ハリントン公爵令息も、このグロリアの姿にはメロメロだな」
「グロリア。オペラ観劇が終わったら、すぐに帰宅するのよ。終わりの時間が遅いから、ちゃんとハリントン公爵令息に送ってもらって」
二人の言葉はそばにいるヘッドバトラーとメイド長がすばやく紙に書き取り、私に見せてくれた。「はい、分かりました」と真面目な表情で頷くと、両親は「よしよし」と安堵し、エントランスまで見送ってくれる。私は両親に笑顔を見せながら、馬車に乗り込んだ。
「「いってらっしゃい、グロリア」」
「「「いってらっしゃいませ、お嬢様」」」
両親と使用人に見送られ、馬車が動き出す。
王都の一等地に立つ公爵邸であるが、敷地はタウンハウスかと思うぐらい広い。ようやく門を抜けると、そこはもう大通り。
初夏のこの時期。日没は夜の二十時半頃になる。よってまだ空は明るい。でも時刻は間もなく十八時。馬車の窓から見える貴族達は、イブニングドレス姿でレストランやホールへと吸い込まれていく。
オペラが上演される劇場に近づくと、そこは沢山の馬車、馬車から降りた貴族、そんな貴族の姿や著名人を写真に収めようとする新聞社の記者とカメラマン、さらに物売り、そして――。
「あれは大神殿の募金活動ですね。オペラ観劇するのは裕福な貴族が多いので、特に有名な公演がある時は、ああやって募金活動をしている神官や見習いを見掛けます」
侍女はそう言いながら、今言った内容を手早く紙に書いて見せてくれる。私は「ふむ、ふむ」と頷いている間に、馬車は劇場のエントランスに到着。
馬車から降りると、バチッという音がして、ビックリしてしまう。目がチカチカする中、それがカメラのフラッシュであると気付く。
「ウォルトン公爵令嬢ですよね! 今日のドレスも実にセクシーです! それにその真珠。かなり珍しい色ですよね! 本日はどなたと観劇ですか! 公爵夫妻のお姿は見えないようですが」
「プライベートで訪問しているのです。おやめください」
侍女が私を庇うようにして歩き出すが、バチッという音とフラッシュが止まらない。どうやらこのドレスとメロパールの真珠の宝飾品は、新聞に掲載するにはうってつけのネタのようだ。
まさに前世のパパラッチに囲まれるセレブ状態になり、困惑した時。
「おい、おい、君達。僕の未来のワイフの写真を勝手に新聞に載せるのは、許さないよ。どこの新聞社だ?」
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