ヒロイン視点(4)
「そんなに緊張しないで平気よ。聞いて驚くかもしれないわ。でもね。私もあなたと同じなの。この世界に、転移ではなく、転生したのよ」
この言葉にはもうビックリ!
どういうことなのかと話を聞いて、理解することになる。
ここがスマホのアプリで人気の乙女ゲーム『ラブロマンス~姫君の恋物語~』の世界であることを。グロリアはそのゲームの悪役令嬢で、私は……なんとヒロインだと言うのだ!
え、私がヒロイン!?
これにはもうビックリだ。
さらに乙女ゲームがどんなものであり、攻略対象と言われる存在が誰であるのか。ゲームにおけるヒロインと悪役令嬢のそれぞれの役回りを聞き、そしてあの黒い靄。殺人犯の魂の件でも、衝撃の話を教えてもらうことになった。
「私がそのゲームを起動した時に、あなたに憑りついた殺人犯の車が、行列に突っ込んできたの。私はその行列にいて、死亡し、この世界に転生した。その際、私のすぐ近くにいた殺人犯は……同じく死亡していたのね。その魂は私と一緒にこの世界へやって来たようなの。でも殺人という重い罪をおかしている犯人の魂は、輪廻転生ができなかった。そこでずっと私につきまとっていたようで……」
ここが乙女ゲームの世界であることにも驚きだが、あの殺人犯の魂がグロリアにつきまとっていた理由、そして私に憑りついた経緯など、彼女が推理した内容は……まさに仰天過ぎるもの。
「あくまで推測に過ぎない」とグロリアは言うけれど……。
でも私にはグロリアの想像が正解に思えてしまう。
思い出すと不快になるが、私とあの殺人犯の魂は、この世界で確かに異質な存在だった。そんな嬉しくない共通点を持つことで、体を乗っ取られるなんて! 本当にツイていないと思う。
ただ、これはグロリアには言っていないが、それでも私があの殺人犯の魂に憑りつかれこと。これは悪いことばかりではなかった。
だって。
グロリアが教えてくれた、本来のヒロイン。
彼女はグロリアの婚約者であるエルクを奪う可能性もあったのだ。
もしそんなことになっていたら、グロリアは深く悲しんでいたはず。
そうならずに済んだのは、奇しくもあのおぞましい殺人犯に憑りつかれていたから。そのせいで今の私は――。
「殺人犯の魂は、兄であるアレクシスのおかげで、この世界から消えたわ。ここは平和な乙女ゲームの世界に戻ったはずよ。そしてヒロインのあるべき姿とはズレつつも、微妙に設定は踏襲していた。リコさんはゲーム通り、大神殿の保護下にあるわ。ただ、正規の流れだと、ヒロインは神官を目指すわけではなく、下女として働き、そこで前世の知識を活用する。そんなあなたの活躍を見て、攻略対象は心を動かしていくのだけど――。でもリコさんはリコさんなりの決意で、神官の道を志すことになったのよね?」
「そうですね。あの殺人犯に憑りつかれていた間。制服のスカート丈が短いことで『なんて破廉恥な姿!』とか、『一体何を企んでいるんだ!?』とさんざん言われたりしましたが……。そんなことよりも何よりも。自分の意志とは無関係に体を動かされ、グロリアさんや侍女……師匠であるグラス上級神官を襲ったことが……恐ろしかったんです。もう二度と殺人犯のような悪しき魂に憑りつかれたくない。その思いが強くなって……。神官を目指す決意をしました」
転移前の私は、漠然と大学へ行くというぐらいしか目標がなく、それも目標と言えるほど、強い希望だったわけではない。ただ、周りのみんなもそうやって進学するし、「大学ぐらい出ておきなさい」という両親の言葉に、なんとなく従った部分もある。自分の意志なんて皆無に近い。
でも今は違う。
切実に神官になりたかったし、そのための努力は苦になっていない。
何より私のように悪しき魂に憑りつかれ、困っている人を助けたい――そちらの気持ちが強まっていたのだ。
「神官を目指す決意は固いようね。ちなみに恋愛は……?」
グロリアに問われた私は――。














