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ずぼらな悪役令嬢×空から降って来たヒロイン=溺愛ルート??  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【本編完全完結】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/27

幸せに満ちている気がした。だが――

「予定通りだね。ティータイムを楽しもう」


 ロイの言葉に椅子に腰を下ろす。

 するとロイは自ら私達のために紅茶を入れ、チェリータルトを切り分けてくれる。


 鳥の鳴き声が聞こえ、カラーの優しくフローラルな香りが漂い、なんだか本当に天上の世界にいる気分だ。


「はい。どうぞ」

「ありがとう、ロイ!」という表情でチェリータルトを受け取る。


 渡されたチェリータルトをエルクと顔を見合わせ、早速いただくが……。

 これはもう絶品!

 前世で食べたチェリータルトには、カスタードクリームが入っていたが、これは違う。昔ながらのチェリータルトのフィリングは、チェリーのみ。チェリーの味での勝負だ。


 つまりこれでもかという程のたっぷりのチェリーがタルトに詰まっており、その甘酸っぱさは、極上の味わい。美味しくてつい、ペロリと平らげると、その様子を見たロイとエルクが笑っている。


「グロリア、おかわりいる?」


 ロイは仕草で、もうワンピース食べる?と聞いてくれている。

 これには少し恥ずかしくなり、頬を赤らめると……。


「グロリア! そんな風に恥じらう君は、本当にとっても可愛いよ! でも遠慮はいらない。僕とロイと君の仲なんだから。気にしないでおかわりをもらったら?」


 エルクの言葉を部分的に分かるフリをして、恥ずかしいながらもこくりと頷く。

 するとエルクは、太陽のような眩しい笑顔になり「じゃあ僕もおかわりしよう!」と言ってくれた。これでおかわりをするのを私だけではないと、恥ずかしい気持ちが薄れる。しかもロイは「元々一人ツーピース食べられるように用意したから」とこちらも慈愛に満ちた笑みと共に、チェリータルトを再び取り分けてくれたのだ!


 前世でプレイした乙女ゲームの記憶。そこで悪役令嬢グロリアは、ヒロインが攻略対象として誰を選ぼうとも、ねちねちと悪口を口にして、嫌われ者になっていた。だが話せないフリをし、脱・ツンとすました公爵令嬢になり、しかもヒロインが空から降って来て私に激突したことで……状況は一変している。


 私は話せないフリをして、脱・ツンとすました公爵令嬢として、笑顔を見せたに過ぎない。そうして悪口を言わなくても、どうせ睨んでいる、ガンを飛ばしていると言われ、婚約破棄、宮殿勤め、大神殿で下働き――いずれかになる運命だと思っていた。それがこんな風に二人の攻略対象と美味しいチェリータルトを食べ、談笑できるなんて。


 幸せだった。


 幸せ。


 前世でも私は、小さなことに幸せを感じられる性格だった。

 世間的には、アラサーでありながら独身で、オタク女子をやっている残念な奴だと認定されるだろうが。別に私自身は不幸を感じていない。好きな時に好きな物を食べられる。そう思い、一人ラーメン屋に入ることも恥ずかしくなくなり、あの日も行列に並んでいて――。


 そこで思う。


 ああ、あの家系ラーメン食べたかったな、と。

 濃厚とんこつ系スープで、たっぷりチャーシューがのせられたラーメンが脳裏に浮かぶ。甘酸っぱいチェリータルトを食べた後だからこそ、ガツンとくる濃い味のラーメンを、脳が欲している。


 余所見運転だったのか、居眠り運転だったのか。


 私が並ぶ行列に突っ込んできた車には「なんてことをしてくれた!」と思うものの。


 今、幸せなのだ。

 過ぎたことを悔やんでも、過去は変わらない。

 変えられるのは未来だけ。


「グロリア、どうしたの? もしかしてまだ足りない?」

「もし足りないようなら、もうワンホール、手に入れて来ようか?」


 エルクとロイが心配そうに身振り手振りで私を見るので……。


「レストルーム」と小さく呟く。


 すぐにロイが「!」と反応し「案内するよ、グロリア。エルク、ちょっと待っていて」と告げる。私は席を立ち、控えていた侍女と共に、ロイと並んで歩き出す。


「グロリア。良かったら今度は早朝に大神殿に来てみない? そこの睡蓮が朝一番で咲き誇り、とっても綺麗だよ」


 ロイは睡蓮の池を示し、身振り手振りで話してくれるので、意図を理解しやすい。筆談なしでもこれは「うん。見たい」と答えることになる。


「あ、そこを曲がった突き当りがレストルームだから。僕はここのベンチに座って待っているね」


 ロイは、曲がり角手前の、睡蓮の池を眺められるように設置されているベンチを示す。私は何となく意図が分かったということで、こくりと頷く。そして侍女を連れ、そのまま角を曲がった。確かに突き当りにレストルームが見えている。


 睡蓮の池に面した場所にレストルームはあり、通路を歩いていると、水面に当たる太陽光が反射し、天井で光がゆらゆら揺れている。


 世界は明るく光り輝き、まさにさっきロイが祝福を与えてくれた通り。

 幸せに満ちている気がした。


 だが。


 叫び声が聞こえた気がする。

お読みいただき、ありがとうございます。

次話は12時頃公開予定です~

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