嬉しいお知らせは不思議と重なる
嬉しいお知らせは不思議と重なるもので。
私はロイを訪ね、チェリータルトをご馳走になるつもりでいたが。
なんとエルクからもお茶会の招待が届いたのだ。
それは公式なものではなく、私と二人でお茶をしたいので、『ハリントン公爵邸に来ない?』というお誘いだった。そこでロイから祝福をしてもらい、その後、チェリータルトをご馳走になる約束をしたと返事をすると……。
『僕もチェリータルトをご馳走になりたいな。グロリアが迷惑でなければ、僕からロイに話をつけるけど、どうかな?』
ロイは神学校に通っていたが、エルクとは私を通じて親交があった。エルクがチェリータルトを食べたいとロイに話し、「ダメ」になることはまずあり得ない。それに私自身、この三人でチェリータルトを味わうのはウエルカム!
すぐにエルクには『ぜひ三人でチェリータルトを食べましょう!』と返事をすることになる。
私の手紙を届けた従者は、その場でエルクから返事を貰い、戻って来た。
『では僕も十四時半に大神殿へ向かうよ。ティータイムは貴族に平等に与えられた休憩時間だからね。父上も文句はない。それにグロリアに会うために、父上から指示を受けた帳簿は、明日の午前中に片付けるつもりだ。グロリアに会えると思うと、俄然やる気が出るよ。僕の仕事の効率を上げたいなら簡単。グロリアに会わせればいい――なんてね!』
急いで書いたと思えない流麗な文字の手紙には、胸キュン要素が盛りだくさん。
なんだかリアル乙女ゲームをプレイしているみたいで、なんというかまだ現実感がわかない。
乙女ゲームの世界に転生している夢を見た……なんて夢落ちにならないように願い、この日は休むことになる。
そして迎えた翌日。
午前中は昨日と同じ。発音を教師からレッスンしてもらう。そして昼食後、着替えをして大神殿へ向かうことになる。
大神殿を訪問する際、服装に関するルールがあった。
それは白の衣装の着用だ。
形から入るわけではないのだろうが、白い衣装に身を包むと、なんだか自分が清純になったように思える。自然と普段より背筋も伸びるし、白色着用は、いいルールだと思う。
ということで、フリルとレースが美しくあしらわれた白のデイドレスに着替え、馬車へ乗り込む。同行する侍女も白のワンピースを着ている。
「!」
馬車が走り始めて三十分ほどで、巨大な大理石でできた門が見えてきた。
巨大な門は『天界への門』と言われ、そこをくぐるとそこから先は、神々が住まう天界と考えられている。
ちなみに馬車が『天界への門』へ侵入することは、禁じられていた。
特筆すべき理由があり、馬車で大神殿の奥深くに入る必要がある場合。
それは裏門からと決められていた。
そこでいつも通りで『天界の門広場』で馬車から降り、日傘をさし、大神殿……主神殿を目指す。
初夏……ではなく、もう盛夏ではないかと思える強い陽射しが降り注いでいた。『天界への門』をくぐった後に続く大理石の道には、蜃気楼が見えそうだ。しかも色が白いので、とても眩しい!
目を細めながら進んでいると……。
「グロリア!」
甘みのある優しい声が、私の名を呼んだ。
振り返ると純白のフロックコートを着たエルクがこちらへ駆け寄る。
その姿は何だかもう……新郎です!
アイスシルバーの髪と碧眼で白のフロックコートは、最高の組み合わせ。
絶対的なカッコよさに、拝みたい気持ちになるが、我慢する。
「せっかくグロリアに追いついたのに。エスコートできないのは残念」
大神殿では、一人一人が神と向き合う。
介助が必要な病気などでない限り、一人の人間として神に会いに行くと決められていた。よってここではエスコートはなし。
さらに私語も極力慎むように言われている。
『天界への門』をくぐったら、そこはもう天界。
心を清らかにしながら、主神殿へ向かうようになっていた。
既に目の前には巨大な主神殿が見えている。
その姿はさらながら前世のパルテノン神殿のよう。
会話はできないので、エルクとアイコンタクトをとり、主神殿へと続く階段を上る。
結構な傾斜と段数。
階段を上っていると息が上がる。
「ようやくついたね」
エルクの言葉に、私は頷く。
階段を上りきった……!
主神殿の中へと続く青銅の扉は、この時間、開け放たれている。
中に入ると、世界がガラリと変わった。
お読みいただき、ありがとうございます!
次話は17時頃に公開します~























































