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incident5.呑と天

皆がざわめく。さすがの蛇丸君もこれには驚いているようだ。

「何か持ってるわね。出してちょうだい」

水留さんが私に向かって手を差し出す。

「私は何も…」

「他の人達は誤魔化されてもこの水留様は誤魔化されないわよ」


ここで断ると余計に怪しまれる。

私は渋々、古びて切れた御守りを差し出す。

水留さんは差し出された御守りを見て「酒天童子(しゅてんどうじ)…封じ!?」そう言うと会議室から隣の0係の部屋に入ったようだ。バンッと音がする。


それからしばらくして戻ってきたときには分厚いファイルを抱えていた。ゼーゼーと息が荒い。

「あなた達、資料は、ちゃんと整理、しなさいよね」これには補助員の方、原木さんが「すみません」と謝る。


だが三千院さんが「悪い、最近の事件に何か関係している物があるかどうか調べていたからだ」と言うと「あら~。よりひとちゃんなら許しちゃうわっ」そんな事で良いのだろうか、水留さん。


その水留さんが資料をパラパラとめくると「あなたの名前、確か天童って言ったわよね?どう書くの?」

「天気の天に童話の童です」と言うと資料に書かれている名前を指差し

「酒呑童子は酒天童子、呑を天と書くとも言われていたの」

水留さんがメモに名前を書いて見せる。

「あなたの家はもしかして酒呑童子絡みの家じゃない?」知りたいのは水留さんだけじゃない。皆の顔がそう言っている。ここまで言われたらもう話すしかないか。


「…私の家は代々、酒呑童子のバラバラになった体の一部、両手を封印しています。祖母の力もだんだんと弱まってきたという事もあり私の母に封印するという話になりました。しかし母は封印する力に耐えきれず亡くなってしまいました。それを悲しんだ父も後を追って…」皆が私の話を黙って聞いている。


「辛いなら落ち着いてからでもいいわよ」神楽坂さんが悲しそうな顔で言う。

「大丈夫です」すっかり冷めてしまったコーヒーカップを握る。中には複雑な気持ちを表した私の顔が映っている。


「そこで、元々異形に対する力が祖母くらいではありませんが母よりあった為、子供の私に封印する事となりました。一時は危なかったそうですが儀式は成功。祖母からはこの魂と酒呑童子の両手は異形だけではなく、その力を欲している術師にも狙われるので、この事は他の人に安易に話してはいけないときつく言われていました」あの儀式は曖昧だが覚えている。魂移し手(たまうつしで)の儀式。


「なるほどねー。でも何でバラバラなの?」蛇丸君が聞く。

「酒呑童子は力が強すぎる為、そのまま封印する事ができず、バラバラにして封印するしかなかったそうです」

「バラバラという事は他にも封印している家があるの?」

「はい、そう聞いています」

珍しく阿刀さんが聞いてくる。

「あとは当たり前ですが子供の内はお酒は絶対飲んではいけないと言われてきました。‘’酒と子“で名前が揃って封印が解かれてしまう可能性があるからだそうです」


「話してくれてありがとう。この話はあの御

方達に聞いてみるしかない。とにかく御守りが切れてしまった以上異形に狙われかねない。危険だから結界を張れる神楽坂の部屋に泊まってもらうしかないな。神楽坂、頼まれてくれるか?」と三千院さんが言うと神楽坂さんは「分かりました」と快く承諾してくれた。


本当は話したくなかった。思い出したくないあの日の事を。

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