incident38.灰崎玲王
灰崎玲王は生まれたときから一人だった。
灰崎は十鬼の中でも最下級の家。母は自分を産んですぐに亡くなり、父はそれから脱け殻のようになって自分に興味を示さなくなった。自分だけではない。灰崎の長の立場も放棄したのだ。それで自分が18歳になるまでは叔父が長の役目を果たす事となった。ところが決められた年齢になっても叔父は長の座にしがみつき「灰崎は俺のものだ」と喚く。大した力もないのにギャーギャーとうるさいので殺して黙らせた。あーあ、あのオヤジの最期。惨めったらしいったらありゃしない。「殺さないでくれ」、「金ならいくらでもやる」と。そんな物、自分にとっては意味は成さない。バカが。そして自分が長の座についた。
それから周りのヤツらは手のひらを返すように変わった。今まで「人殺し」、「お荷物」と呼ばれていたのに「主様」に大変身。擦り寄ってくる女もいたが皆、俺の地位と金目当てのヤツばかり。気持ち悪いので片っ端から斬っていった。それを恐れたヤツらは徐々に離れていき、本当に一人になった。
高校でもモテていたと思うが灰崎の女達同様、化粧をバッチリ施し甘ったるい声で近付いてくる。気持ち悪い。無視をしていたがあるとき芸能事務所のスカウトが来た。最初は興味がなかったが「あの警察☆Menも超えられるよ」との言葉に引っ掛かり、警察☆Menを調べてみた。よくよく見てみると鬼の上級者達ばかり。コイツらを超えれば「灰崎」の名も上がる。そうしてモデル・俳優になる事を決意。クール(塩・俺様)を売りにしている。
そして今、その警察☆Menとのコラボで雑誌の対談をしているところだ。
「灰崎君ってどんな女の子がタイプなの?」
「ギャーギャー喚かない女」
「喚かない…静かな子かな?」
「静か?死んでるヤツか。意味ないだろう」
「死んでる…面白いねー、灰崎君って。ハハハ」
「休日は何をしているの?俺は映画を観たりするんだけどさ」
「何もしない。寝てる」
「ええ!?そんなの面白くないじゃん」
「面白いかどうかは俺がきめる」
「さすが俺様・灰崎様!」
「バカにしてるのか?」
「バカになんてしてないよ。皆、そう言ってるって」
「誰だ。そんな事を言い始めたのは?」
「誰って君のキャッチコピーでしょ」
そうだった。元からの性格が受けてか売りだしたときに事務所の社長から「君、それ面白いねー。よし。何様・俺様・灰崎様で行こう!」ときめられた。
「うぐっ…!」
思わず言葉に詰まる。
「その顔は忘れていたな。忘れてたなんておバカさんだねー」
「うっ、うるさい!」
「可愛いところもあるんだねー、玲ちゃん♪」
親しげに呼ぶ赤城。
「玲ちゃん〜!?」
「良いじゃん、玲ちゃん」
珍しく同意する黄木。悪意あっての事だろう。
「やめろ!自分は玲王だ!」
「これから仲良くするんだからさ」
「自分はお前らと仲良くするつもりはない」
睨む灰崎。だが黄木は動じない。
「まあ、考えておいてよ。『鬼』の灰崎さん」
「!」
他の人にはただ『厳しい灰崎』と捉えられるだろうが灰崎には分かった。
こちらが鬼だと見破られている事を。
「くっ、だから自分は、一人で充分だ」
「良いのかい?こちらと仲良くしてもらえるんだったら、上に掛け合っても良いよ?なりたいんだろう、一番に」
外面はアイドルの地位について語っているように思えるが内容は鬼の地位についてである。
「この後、時間ないかな?ゆっくり話そうじゃないか。君にとっても美味しい話だよ」
甘い蜜で誘い出す。
「…分かった」
「じゃあ着いてきてね。僕たちの事務所まで。持たせているお方がいるんだ」
ただのコラボ対談のはずだったが「鬼の灰崎・警察☆Menに加入!?」と話が大きくなってしまった。




