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incident29.モンスター襲来

「今日からこの0係に配属になりましたぁ。八神朱音(やがみあかね)でぇす。18歳ですっ!宜しくお願いしま〜す」

『…』

朝のミーティングで胃もたれしそうな甘ったるい声を出す新人、八神さん。

皆、表情が死んでいる。あの蛇丸君でさえも。

嵐が去ったと思ったら、今度は台風がきた。


肩までの金髪を巻き、前髪は眉の上で切り揃えられている。イチゴのヘアピンにピンクのダボッとしたカーディガンを制服の上から着て、デコったネイルをしている。

「あとぉ、金髪なのはパパが外人だからでーす」目の横でピース。

可愛さアピール全開。確かに可愛い顔をしている。


『明日から新人が来る』と昨日、三千院さんから聞いていたがこういう人だったとは想定外だ。ただ、眉間にシワが寄っていた理由は納得した。最近、異形絡みの事件が増えてきている。確かに人材不足ではあるがー。

「…という事で、本日から配属になった八神朱音さんだ。皆、宜しく頼む。教育係は神楽坂…」

「はいっ!私、この人が良いでぇ〜す!」

そう言って腕を掴んだ相手は蛇丸君だった。

「えっ!俺!?」

驚く蛇丸君。

「だってぇ、せっかく教えてもらうんだからぁ、イケメンの方が良いじゃないですか〜」

「あの、八神さん。勝手に変えるのは…」

注意をしようとする三千院さん。

「三千院さんもイケてるけどぉ、オジサンだしぃ」

「おじっ…!」

言っておくが三千院さんは27歳だ。まだ、おじさんという年齢ではない。

「それに神楽坂さん?は何かコワそうだからヤダ〜」

「こわ…」

固まる二人。

「お前、先ほどから係長達に向かって無礼ではないか?」

ここで阿刀さんが注意をする。さすが阿刀さん!

「なぁに?あなた、真面目過ぎぃ。真面目過ぎてモテなかったんじゃなぁい?」

全く聞いていない。ああ、水留さんが出張じゃなかったら良かったのに。セコム水留。

「斬る」

刀を抜く阿刀さん。

「ダ、ダメですよ。阿刀さん!」

「止めるな。腐った根性叩き直してやる」

そのままだと叩き斬ってしまう勢いだ。直る前に死んでしまう。

「ひーちゃん…」

蛇丸君が私に助けを求めるがこのモンスター新人には勝てそうもない。でも蛇丸君がかわいそうだ。

「八神さん、とりあえず蛇丸君を離してあげて?上司である係長の言う事は…」

そう言いながら八神さんの手を蛇丸君から離そうとする。

「何なの?もしかしてあなたも彼狙い?だったら諦めてくださーい。だって私が一番可愛いからぁ。私と比べるなんてゴミレベルの勘違い〜。クズかな?むぅ~りぃ〜。キャハハハ!あと、暴力止めてくださぁい」


ブチッ。


「…ぞコラ」

「え〜?何か言いましたぁ?」

「見下してんじゃねぇぞコラ。人のコト物みてーにゴミ、クズってよォ…そういう言葉の暴力は許されるってーのか。あ?」

ごめんなさい。おばあちゃん、三千院さん。

私はG◯O派です。

「自分が一番可愛い?そんなセメー世界に一人でいたって、何も変わりゃーしねーんだ」

「あの…」怯え始める八神さん。

「ゴミん中にも、案外上等なヤツもあるモンでしょ?」

「えーと…」目を逸らされた。

「愛はなぁ、品定めじゃねぇんだよ!」

「…」もう何も言えない八神さん。


「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ〜♪PO…」

タバコの代わりに棒付きキャンディを咥え、主題歌を歌う。まさにグレートティーチャー天童…じゃない!やってしまった…。

皆が固まっている。


「あの…」私がどうしようと焦っていると

「あの、すみません。こちらに金髪クルクルの派手なバカ女来ましたか?ノックをしましたが返答がなかったので入らせてもらいました」

私が言うと同時に会議室のドアが開き、八神さんそっくりの顔に眼鏡を掛けた金髪(短髪)の少年が入ってきた。八神さんと同じ制服でブルーのブレザーにネクタイ、チェックのズボン。背中には何か長い物を入れた袋を背負っている。顔は無表情に近い。皆の視線がバカ女こと朱音さんに集まると

「ああ、やっぱりいた。ここに来る途中、悪質な霊がいたのに『お兄ちゃんに任せる〜』とか言って逃げて」

ゴツッと朱音さんの頭を殴る。

「いたぁい!お兄ちゃん」

プンプンと可愛らしくおこってみせる。

キャラの復活速いな。


「すみません。そういう事で遅れました。本日からこの0係に配属になりました、八神蒼人(やがみあおと)です。誠に残念ながら朱音とは双子の兄妹です。もうご迷惑をお掛けしていると思いますので謝っておきます。申し訳ございません」

何としっかりとしたお兄さんだろう。全く正反対の二人だ。どういう教育を受けてきたのだろう?

「よく言われるのですが僕は感情表現が乏しく、反応も薄いらしいので反対に感情表現が豊かで子供らしい妹の方が可愛いらしく、可愛い可愛いとお姫様のように両親は甘やかして育てたと祖父が言っていました。何度も止めましたが無駄だったそうです。その結果がこれです」それであの性格に。

「でも祖父の修行は甘やかさず厳しくされましたのでそこは心配ありません」

「そういえばぁ。あなた0係なのに何の力も感じないんだけどぉ。どういう事?」

「私は…」

話しても良いのだろうか?

「天童さんには酒吞童子の手が封印されている。それで0係で保護しているんだ」

いつの間にか復活した三千院さんが答える。

「酒吞童子ですって!?悪者じゃないっ。この祓魔師(エクソシスト)朱音ちゃんが倒してあげる!」

ポケットから取り出した十字架をこちらに向け、小瓶に入った聖水を撒く。


すると

「「痛っ!」」

私と朱音さんが同時に首の後ろを押さえて痛がる。

「日花ちゃん!?」

「朱音?」

そのときだった。

三千院さんの小指が赤く光る。

「これは鬼の厄即!という事は天童さんと八神さんが雌蕊なのか!?」

♪〜

それを知らせるように携帯が鳴る。

「もしもし」

『今、反応があった。もしかしてそっちに現れたのか?』

声が聞こえる。微かだが赤城君のようだ。

「ああ、二人」

『二人!?とにかく今からそちらに行く。紫崎達には俺から連絡しておく』

「分かった」

三千院さんが厳しい顔をして電話を切る。

「これはどういう事ですか?」

蒼人君が聞く。

「皆が集まったら説明する」


それから数十分後、警察☆Menのメンバーと紫崎さん達が来た。

「うわぁ〜。生警察☆Menと&roidだぁ」

朱音さんが目をキラキラとさせている。違う。よく見るとギラギラしている。これは獲物を狙うハンターの目だ。

「私ぃ、八神朱音っていいますぅ。皆さんに会えてとっても嬉しいです〜」

朝の倍の甘い声。砂糖でも追加したか?

「ああ、そう。宜しく」

さすがアイドル。笑顔でサラッとスルーした。

「私っ、ファンクラブ・Prison(プリズン)にも入ってるんですよぉ。あと、&roidさんはちゃんとチャンネル登録してまぁす」

「その人達、鬼よ」

神楽坂さんがすかさずツッコむ。コワいと言われた仕返しだろうか。夢を見ているところを容赦なく現実に叩き戻す。

「鬼!?」

八神兄妹にこれまでの事、鬼と雌蕊の事を説明する。

「配属早々、すまないな」

「やぁ~ん。という事はぁ、私ってレアな存在なのねっ!」

本当に話を聞かない。お兄さんの苦労が分かる。

「バカ。危険だと言っているだろうが」

「さて、鬼との約束は絶対だ。始めようか」

こうして、話し合いが始まった。

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