incident27.赤と白
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彼と私は同じ職場だった。彼が社長で私は営業。
飲み会でお酒を注いで話をしていると偶然、趣味が同じキャンプという事が分かり、二人で盛り上がった。
その話がきっかけで趣味のキャンプに一緒に出かけるように。そうして会う機会が増え、互いにだんだんと惹かれ合い付き合う事となった。
付き合って三年目の記念日デート。
『好きだよ、翔子。結婚しよう』
『…はい』
そう返事をすると、彼が私の左手薬指に指輪を嵌めてくれる。
『わぁ…キレイ』
その指輪は真ん中にダイヤモンドが付いており、リングには葉のモチーフが刻まれていた。
『ありがとう、将生さん』
『気に入ってくれたようで良かったよ。一緒に幸せな家庭を作ろう。俺が守るよ』
そう、約束してくれたのにー。
『婚約破棄!?何で!!』
『取引先の社長のお嬢さんとお見合いをする事になった。それにこの話を持ってきたのは俺の爺さん、会長だ。簡単に断れるワケがない。二人の間では結婚までの話になっている』
『だって私達、正式に婚約したじゃない!!』
『婚約したといってもまだ周りには知らせていない。爺さん…会長もなかった事にしろと言っている』
『何で将生さんが…』
『相手のお嬢さんの希望に合ったのが俺だったらしい。それと会長の話によると商談で来ている俺をときどき見かけて気になっていたとか』
『何とか断れないの?』
『この話を受けるなら仕事の依頼を優先してくれるそうだ。今の会社の経営状況は厳しい。そうなると社運と俺の進退にもかかっている。無理だ…』
『そんな…』
その場に崩れ落ちる私。
あれほどキラキラと輝いて見えた婚約指輪も今はもう輝いて見えない。
ただの飾り。
それどころか周りの景色全体が色を失って見える。
『もう将生さんのいない人生なんて考えられない』
『翔子?』
私はフラフラとベランダに向かう。
ここはマンションの4階。
『一緒にいられないなら生きている意味なんてないわ』
柵の手すりに登る。
『やめろ、翔子!』
彼が止めにかかる。
『大好きよ、将生さん。結婚したかった』
『おいっ!』
ドサッ。
彼の伸ばした手は虚しく空中を掴み、私の体は強く地面に叩きつけられた。
目の前が血で赤く染まっていくのが見える。それが最期に見えた色。
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今日は私達の結婚式。
「どう?私のドレス姿。似合ってる?依人さん」
「ああ、似合っているよ。日花」
真っ白い豪華なドレスに三千院さんのタキシード姿。
そう、私達は今結婚式場のホテルにいるのだ。しかも貸し切り。
それにしても彼と結婚式ができるなんて夢みたい!私の気持ちは舞い上がる。
何故、こういう事になったかというと神楽坂さんの一言からだった。
それは昨日、どのようにして呪いを解くか考えるところから始まる。
「呪いを解くといっても何をしたら良いのかしら?」
「りりさん、お祓いでどうにかできないの?」
「確か前回はお祓いをして取り憑く魂を被害者から剥がしたと思ったけど、今回の様子を見るとまた指輪に取り憑いていたのね。封印しておいて良かったわ」
「お祓いでもダメかー」
「何?私の力が悪いとでも言いたいの?」
黒凛々子様、降臨。
「そ、そんな事言ってないよ!凛々子様、最高!」
焦って否定する蛇丸君。
万歳までしている。
「やっぱり結婚でしょうか?ここは二人に結婚してもらってさっさといなくなってもらいましょう」
ズバッと言う阿刀さんに
「「「ない!!」」」
と即座に否定する三千院さんと水留さんと蛇丸君。
阿刀さんの提案は三人には切れ味抜群だったようだ。
「それはさすがになしね。…ん?待って」
神楽坂さんはそう言ってもう一度例のファイルを開き、じっくり見ている。
と、思ったら今度はパソコンに向い、カチャカチャと動かし始めた。
「何、何?りりさん」
「もしかしたらできるかもしれない」
「呪いを解く方法。やってみる価値はあるわ。詳細は後で連絡する」
その日の夜、私以外の携帯に神楽坂さんから連絡が入った。
「◯△ホテルで結婚式をする事にしたわ。貸し切りでね。え?どうやって?それは企業秘密。ホホホ。もちろん新郎は三千院さん、新婦は日花ちゃん。他の皆は参列者よ。三千院さんにはそれまで婚約者として振る舞ってもらうから。宜しくね!」
私にも連絡はきた。
「日花ちゃん、結婚式ができる事になったわ。それまでの段取りは私達に任せて」と。
念願叶って花嫁に。
ああ、やっと一緒になれる、三千院さん。
それから色々あったが今日という日を迎えた。
皆様こんにちは。芝佐倉です。
今年(2024年)最後の投稿です。今年読んで頂いた方、ありがとうございました。来年も芝佐倉と0係をどうぞ宜しくお願いします。




