incident26.女達の戦い
「お名前は?」
「天童日花」
「年齢は?」
「19 歳」
「お仕事は?」
「依人さんのお嫁さん!」
「違う」
「コラー!黙りなさいっ。この泥棒猫!」
困った顔をする卜部さんと騒ぐ水留さん。
それと疲れている三千院さん。
先ほどまでは本当に地獄と化していたのだ。
時は少し遡る。
「ひ、ひーちゃん。どうして…」
「ちょっとどうしたのよ」
蛇丸君達と一緒に戻ってきた水留さんが中を覗う。すると目を見開き
「イヤー!よりひとちゃん!!何なの!?やっばり泥棒猫ちゃんだったじゃない!」
くっついている私達二人を見て急いで引き離そうとする水留さん。
「おっ、落ち着いて。ちゅ、ちゅじゅみさんっ」
全く落ち着いていない神楽坂さんが止める。だが火の着いた女?は止められない。
「ちょっとやめてよオバサン!」
「オバサンですって!?まだ二十代よ!後半だけど…このガキがー!!」
「厚化粧で誤魔化してるんじゃないの?やっぱり若い方が良いわよね?依人さん」
「若いだけで色気のないガキに言われたくないわ!」
「コワイわぁ、依人さん」
「だから私のよりひとちゃんにくっつかないで!」
言い争う二人。
一方冷静な阿刀さんがポツリと言う。
「天童さん、まるで人格が変わったようですね」
「そう、それよっ!」
思い付いたように叫ぶ神楽坂さん。
そこでセラピストの卜部さんが呼ばれたのだ。
で、現在。
「困りましたね(色々な意味で)…。こうなる前に何か変わった事はありませんでしたか?」
「うーん。蛇丸君と千景ちゃんがケンカをして三千院さんがお説教。その影響で部屋が散らかったから片付けてたのよね?原木さん」
「そ、そうです」
何故かヘコむ蛇丸君を一生懸命励ましている原木さん。素晴らしい友情だ。まあ、私と依人さんの愛情には負けるけどね。
イヤイヤ、愛情って何だ。そもそもそんな感情、三千院さんに持ってはいない。
だが、今のこの感情には逆らえない。
両手を三千院さんの手に添えるとビクッとした。
失礼な。
「あら?日花ちゃん、そんな指輪つけてた?」
「しかも左の薬指じゃない!ああ…」フラフラと座る水留さん。
「私と依人さんの愛の印よっ」
「俺はそんな物贈ってはいない!ん…?」
何かに気付いた三千院さんが私の手を強く引き寄せる。
「まあっ!依人さんってば強引なんだから!」手をギュッと握る。
「この模様の指輪、どこかで…」
そういうと今度は強引に引き離し、過去の資料の入った棚に向かう。
一つのファイルを取り出しパラパラとめくる。
「見覚えがあると思ったらこれだ!」それはごく最近の資料。三千院さんが皆にそのページを見せる。
「「「「「呪いの指輪?」」」」」
「そうだ。この指輪はある女性の婚約指輪だった。ところが男性の事情で婚約破棄となり、納得のいかなかった女性は自殺。男性に対する強い想いが宿った指輪となり、独りでにさまよっては女性に取り憑き男性と想いを遂げようとする。これは加古様が情報を読み取り、被害者の話を元に書いた物だと思ったが」
「すっかり忘れていたわ。確か箱に封印したはずだったけど、どうして日花ちゃんが持っているのかしら?」
「た、たぶん私です」
そう言って手を挙げたのは原木さんだった。
「原木さん!?」
皆が驚く。
「呪物の保管庫を掃除していたんです。そのときもしかしたら元に戻し忘れたかもしれません…。すみません」
「それで散らかった物に混ざっていた、という事かもしれないというワケね」
「はい…」
神楽坂さんが納得したように言う。
呪物の保管庫はこの0係の壁側にある。
これまで取り扱った曰く付きの物が入っているのだ。
「そうなのか!それでか〜。うんうん。ひーちゃんがぜんさんを選ぶなんて絶対ないよね〜」
復活した蛇丸君が納得したという顔で言う。
「何だ。その言い方は」
こちらも大魔王様が復活した。
「すみません!すみません!」
謝る原木さん。
「こうなった以上、指輪の呪いを解くしかない」
「どうするの?今までは何とかお祓いで力を抑えてきたけど…。ここまで暴走した事はないはずよ。もしかして酒吞童子の影響かしら?」
「それなら私に任せて」
二人の話に水留さんがあやしい目付きで言う。
「指ごと切り落としましょう?大丈夫、私失敗しないので」
ドクター◯!!
「私の刀がよく切れますよ?」
「止めろ…水留に阿刀」
眉間にシワを寄せる三千院さん。
もう何が何やら情報が渋滞している。
私は三千院さんといたいだけなのに。
アレ?




