incident20.蛇丸左右
鬼との接触から1ヶ月。あれからどちらとも連絡はない。つまり雌蕊がまだ見つかっていないという事だ。そう簡単に見つかるものでもないが。
『邪魔者、蛇丸』あの言葉が頭を巡る。
蛇丸左右は鬼の家系・赤城家と妾の蛇丸家(蛇一族の中でも下級)の子供だった。赤城廉とは同い年だったが扱いはひどいものだった。できる術は鬼ができる術ではなく、蛇丸の術しかできなかった為、古く汚い小屋に粗末な服にご飯。術は書物と母から教わっただけのものだった。どっちにもなれない自分。
どちらからも邪魔者扱いされている「邪魔者蛇丸」そう呼ばれていた。母は亡くなったがちゃんとした弔いもなく呆気なく終わる。
蛇丸の力があるという事でそちらの家に引き取られた。異形との接触があり、それを評価した0係と関わりがあった為、蛇丸家から寮に引っ越した。普段は明るくふるまっているが、赤城の事があり、少し沈んでいる。
赤城といえば日花だ。女の子に対してあんな気持ちになった事はない。それに最近彼女から甘い匂いがする。とても甘美な匂い。「食べたい」そう思うと会いたくなってきた。
スマホで連絡をする。
『もしもし』
「もしもし、ひーちゃん」
『何?』
「今から部屋に行っても良い?」
『いいけど、どうしたの?』
「面白そうな映画を借りてきたから一緒に観ない?」
『観たい!ちょうどお菓子買ってきたから食べながら観よう』
「じゃあ」
プツッ
本当は映画が観たいなんて適当な理由だ。それでも堂々と会える。嬉しい。
コンコン。
「はーい」ガチャッ。
「来たよー」
「ふふ、どうぞ」
快く迎えてくれた。
二人でソファーに座りながら観る。
「ねぇ、ひーちゃん甘い良い匂いがする」
「甘い?香水は付けてないけど…?」
「ひーちゃんだよ」
「そうかな?」
「食べて良いよね?」
「良いよ。たくさん買ってきたしね」
「違う、こっち」
蛇丸が日花の唇を塞ぐ。
「んぅ…ん」
「足りない」
「んっ、はぁ…」
「もう、だめだ」
顎をうなじに寄せる。
「はっ…うん。じゃまるく…」
「さすけ、さすけって呼んで」
首筋にキスをする。
「さ…さすけ君、こういう事は好きな人同士じゃないと、ダメじゃないの?」
「日花は俺の事、嫌い?」
「嫌いじゃないけど…」
「だったら良いよね?」
「ふっ…ん」
舌が絡み合う。
「さすけ君、私と」
ピピピピ…
アラームが鳴る。
「夢か…」
こんな夢を見るのは繁殖期だからだ。
0係の部屋に入る。
「おはよう水留姉、いつもの薬をお願い」
「あら、おはよう。大変ね」
これも「蛇の一族」だからだ。




