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incident1.始まり

『いいかい、日花にちか人ならざる者と関わってはいけないよ』『人ならざる者?』『そう、お化けみたいなものだよ。大体は無害だが悪さをするヤツもいる。特にひどいのは鬼だ。鬼は人を食らう、魂までな』昔、おばあちゃんに言われた言葉だ。


確かに子供の頃はモヤモヤした黒い人影やハッキリ見えるモノもいた。でも知らないふりをすれば何もしてこない。おばあちゃんは私の頭を撫でながら、何故か悲しそうな顔でさらにこう続けた。『一番は人の念だ』その頃は意味が分からなかったがのちに知る事となるーそう、今だ。


「何で…何で…何で!何で!」

般若の面を着けた女が長い髪を逆立てながら目の前で絶叫している。分からないのはこっちもだ。異様な光景が目の前で起こっているのだからー。


事の始まりは夕方。アルバイトの帰りに通った公園で、女がうつむいて、時折転びそうになりながらフラフラと歩いている。具合でも悪いのだろうか?「あの、大丈夫ですか?」近付いて声をかけてみると何やらぶつぶつ言っている。


何だろうこの感じ。嫌な予感がする。


辺りは暗くなり、公園に設置された照明がチカチカと点いたり消したりを繰り返す。「あの…」女が振り向くと般若の面に今まで感じた事のない程のドロリとした黒い感覚。

「ヒッ…」こんな感覚は地元にいたときは感じた事はなかった。


急いで離れようとしたが上手く体が動かない。尻もちをついてずるずると後ずさる事しかできなかった。肩から提げたカバンが落ちて中身がバラバラと飛び散る。が、今はそんな事にかまっているどころではない。

何故こんな事になっているのか。逃げなきゃ…。


「何であの女なのよー!!彼は私のモノよ!!」女はさらに叫ぶ。警察を呼ぼうにも手がふるえて上手く番号を押せない。そうしている間にも女は近付いて来る。

「お前も…お前も」


ピリッ。服の中に閉まっている、首から提げた古い御守りが少し破けてしまったようだ。どうしよう、どうしよう…ぐるぐると頭を巡らせる。


"おばあちゃん、助けて!!"『日花は特別だ。どうしても悪いヤツが消えないときはこう言うんだよ』


「さ…三角(さんかく)(さん)(くに)に、四角(しかく)()(くに)へ、(まる)(まわ)(えん)…、記号(きごう)()業火(ごうか)へ!」

手を順に形作る。最後にパンッと胸の位置で両手を合わせた。


すると女はピタリと動かなくなった。「ウゥ…」それと同時に「ナイス!」と言いながら若い男の子が走ってくる。高校生くらいだろうか。白銀の髪をヘアピンと紫色の組み紐でハーフアップにしている。瞳はキラキラとした金色。パーカーに学ランを羽織っている。

(きれい…)今のあり得ない状況もそうだが、見た事もない色合いにボーッと見ているといつの間にか女性が横に来ていて「危ないから離れていてね」と手を引いてくれる。こちらはボブカットにスーツ、なのだが上に赤い房飾りを着けた白い羽織を纏っている。


神楽坂かぐらざか、結界は張ってあるか」

「バッチリです、三千院さんぜんいんさん」横にいる女性が答えた。神楽坂と呼ばれたのはこの人か。そして聞いた人は三千院と言う男性で黒曜石のような色の鋭い瞳、細い眼鏡に長めの前髪である。何だこの人達は。その間にも三千院から指示が飛ぶ。


「行け、蛇丸じゃまる。逃がすな」

「はい、はーい」

蛇丸と呼ばれた男の子はパーカーの袖から二匹の白い蛇をシュルッと出して勢いよく女の体を締め付けた。


「アァァー!!」女が叫ぶ。「あまりキツくするなよ。手加減しろ」三千院が少しイラついたような声をかける。「だいじょーぶ、だいじょーぶ♪」対して蛇丸は軽く答える。


すると女の体から黒いモヤが出てきた。蛇の一匹はモヤをギリギリと締め付ける。「ガァー!!」もがきながら苦しそうな声が辺りに響き渡る。「そう簡単にこの蛇丸様の攻撃から逃げられると思うなよ」にいっと笑いながらどんどん締め付ける。


それを見た神楽坂さんが鈴を出し、チリン、チリンと鳴らし「浄めたもう、浄めたもう、この哀れな心を救いたまえ」凛とした声に鈴の音色。モヤが晴れていく。


阿刀あとう、とどめだ」

「はっ!」

スーツにポニーテールの女性が飛び出てきて刀を振り下ろす。

(まさか殺すの!?)と思った瞬間、女が着けていた面がパカッと割れて落ちた。それまで締め付けていた蛇はしゅるしゅると戻り、女の体は膝から崩れ落ちた。どうやら気を失っているようだ。


私も体も心もぐったりとしてその場によろよろと座り込んだ。

「救護班を呼べ」

三千院はそう指示をすると女の近くに落ちていた二つに割れた面を拾い、「またか…」と呟いた。


また?またとは何か?そう思っていると神楽坂さんが「私は神楽坂凛々子(かぐらざかりりこ)。大丈夫?」と聞いてきた。「…はい」と何とか答える。その優しい笑顔と声はまるで天使のようだ。でも巫女さん?だから天使じゃないか。とにかくその優しさに凛々子様とお呼びしたい。


その後ろから魔王のようなオーラの三千院さんが私を見下ろしている。何?私、何かした?おろおろしていると「君、名は?」「な、な、名前ですか?て、天童日花てんどうにちかです」こわい。大魔王様に昇格だ。


「三千院さん、また眉間にシワが寄ってますよ。こわがっているじゃないですか」「俺は名前を聞いているだけだ。おこってなどいない」凛々子様が助けてくれる。ありがたい。


「そうだな。俺から名乗るべきだったな」そこじゃない。が、先ほどより態度が少しだけ和らいだ。「俺は三千院依人さんぜんいんよりひと、警視庁捜査一課0係の係長だ」そう言って警察手帳を見せてきた。


「ぜ、0係?」「まあ、詳しい事は本庁で話そう。着いて来てくれ」「ごめんね日花ちゃん。これは日花ちゃんを守るためでもあるの」「分かりました」こうして私は異形の世界に巻き込まれる事になったのだ。


そう、『人ならざる者』の世界にー。



初めまして。柴佐倉しばさくらと申します。小説を書くのは初めてで、読みづらいかもしれませんが楽しんで頂ければ幸いです。これからも宜しくお願いします。

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