「挑戦者」
フレデリックは仕事のシフトを午後から午前へ変えた。正式に午後に挑む決意をしたのだ。彼は挑み続けている。まずは猛者達の更なる猛者へと変化をするために。そして己が憧れるヒーロー達に並ぶために、ひたすら午後のコロッセオに身を投じた。
「月光!」
一回戦で早くも汗が滲んでいる。そういう季節だからかもしれないが、必殺の一撃を午後の戦士達は楽々と受け止め、押し返す。
「まだまだ軽いねぇ」
ポニーテールが揺れ、対戦相手の年嵩の女性、カーラが両手持ちの剣で受け止める。そしてひたすら猛襲する。剣が読めない。
気付けば、右腕を叩かれ、剣を落としていた。籠手越しに来る重い斬撃にフレデリックは驚くばかりであった。
腕の痺れに呻くと、審判がやって来て相手の勝利を宣言する。
もう一度、午前からやり直した方が良いのだろうか。
フレデリックは時折、そんなことを考える。ヒルダやマルコ、デズーカは、時折午後に来るが、未だに午前の試合を沸かせてくれる貴重な戦士達であった。
いかん、弱気の心に飲み込まれては。俺は午後の戦士になったのだ。ウィリーもヴァンも認めてくれている。
受付で剣を返して貰うと、フレデリックは宿へ行き、その裏手で、鍛練に励んでいた。
まだまだ、午後の戦士になり切れていない。今、俺の位置は午前と午後の内、午後寄りの狭間にいるのだ。
後は鍛えに鍛えるのみ。
挑戦者フレデリックの修行と戦いは続く。
挑戦者 fin




