96話 謎の壺
「お腹が空いた~、お腹が空いた~。
お腹と背中がくっついちゃう、あら大変♪
供物を捧げよ捧げよ、私は空腹だぁ。
お肉にお野菜、いっぱいよこせ~。
お魚あると完璧だ~。
締めはスイーツ、パーフェクトぉ♪」
作詞・作曲、カナデ。
……なんて、呑気な歌を歌いつつ、カナデがキッチンに現れた。
その目的は冷蔵庫を漁ること。
時刻は朝。
ごはんを食べたばかりなのだけど、しかし、小腹が空いてしまった。
なら仕方ない。
つまみ食いをしても許されるよね。
そんな言い訳を自分にしつつ、カナデは食料保管庫を開けて……
その尻尾を『?』マークにする。
「なに、これ?」
保管庫の中に見たことのない壺が置かれていた。
しっかりと蓋がされていて中が見えない。
「これは……もしかして、なにか漬けている!?」
じゅるりとよだれが垂れた。
カナデはるんるん気分で壺を取り出してテーブルに運ぶ。
「さーて、なにが入っているのかな?」
「あっ。こら、カナデ!」
「うわっ、みんな!?」
「またつまみ食いなのか?」
「ダメですよ、そういうのは」
「めっ」
「ごめんなー、朝食足りなかった?」
物音が気になったらしく、タニア達がやってきた。
現行犯。
言い逃れはできない。
がくりとうなだれるカナデ。
その両手が拘束されて牢に……
なんていうことはなくて、カナデは開き直ることにした。
「生き物は食べていかないとダメ。だから、私のつまみ食いも仕方ないこと。うん、無罪!」
「有罪よ」
「にゃん!?」
タニアにげんこつをもらってしまう。
スパルタ教育だ。
ただ、これくらいしないとカナデは反省しないので仕方ないとも言えた。
「ところで、この壺はなに?」
「あれ? タニアも知らないの?」
「知らないわよ、こんなもの。初めて見るけど……ティナ?」
「いや、ウチも知らんなあ」
「ルナは?」
「我も知らぬ」
キッチンの支配者であるティナとルナが知らない。
なら、いったいなんだろう?
皆、小首を傾げて、それから謎の壺に興味を持つ。
「私、とっておきの漬物が入っているんじゃないかな、って思うよ?」
「まあ、壺といえば漬物だけど……」
「ウチ、そんなもの仕込んでないで?」
「ティナに同じく、なのだ」
「では、外で買ってきたものでしょうか?」
「わたし……知ら、ない」
「「「うーん?」」」
謎が深まる。
この壺はいったいなんなのだろう?
同時に興味が湧いてきた。
もしかしたら、極上の漬物が仕込まれているかもしれない。
もしかしたら、とんでもないお宝が隠されているかもしれない。
「……ちょっと開けてみる?」
「えぇー、ダメだよぉ、そんなことー」
「めっちゃ笑顔だな」
「しかし、危険物という可能性も捨てきれません。それを確認するためにも、中を確認する必要があるのではないでしょうか?」
「姉は言葉遊びがうまいな」
「そ、そのようなことはありません。あくまでも心配だから、です」
「……気になる」
「なるなー」
じっと壺を見つめる一同。
この時、皆の気持ちが一つになった。
「「「せーの!」」」
いっせいに手を伸ばして……
――――――――――
「ふぅ」
冒険者ギルドからの帰り道、自然と吐息がこぼれた。
少し前に盗賊と戦ったけど、その時に呪いのアイテムを押収した。
すぐにギルドに引き取ってもらいたかったけど、あいにく、担当のナタリーさんが不在。
家で保管することになった。
でも、それも今日で終わり。
ナタリーさんが帰ってきたので、さっさと壺を渡してしまおう。
どんな効果があるかわからないけど、呪いのアイテムなんて気味が悪いからな。
「ただい……ま……?」
家に帰り……そして、時が止まる。
いや、比喩だ。
でも、それくらい驚いて思考が停止していた。
「わーいわーい、つかまえてごらん!」
「むー、にげないでよ!」
「ねえねえ、ごほん、よんで?」
「しかたないですね。いっしょによみましょう」
「ふぇ……うぇえええええ」
「よちよち、だっこしたろかー?」
カナデとタニアが家の中で鬼ごっこをしていた。
ルナとソラが仲良く本を読んでいる。
ニーナが泣いて、ティナがあやしている。
ただし。
……みんな、六歳くらいに小さくなっていた。
「えええええぇ!?」
新シリーズ(?)です。




