9話 そうだ、キャンプに行こう・その1
「我の魂が雄大なる大自然を求めているのだ!」
夕食時。
ふと、なにかを思い出した様子で、ルナがそんなことを言い出した。
……なんて?
「「「……」」」
みんなは顔を見合わせて、一瞬、考えるような仕草を見せて、
「それでな、八百屋のおっちゃんがおもろくてなー」
「そんな場面に遭遇したら、あたし、絶対に笑っちゃうわ」
「我慢するの無理だよね。うんうん、爆笑したティナは仕方ないよ」
「我の話を無視するなー!!!」
怒り心頭といった様子で、ルナがカンカンカンとフォークで皿を叩いた。
ばしばしとテーブルを叩くのはどうかと思ったらしい。
まあ、どちらも行儀が悪いことに変わりないのだけど。
「はぁ……突然、どうしたんですか? 魂とか自然とか、ルナの言いたいことがわからないのですが」
「なぜわからぬ? 我が姉だろう?」
「残念なことにそうですね」
「残念!?」
ガーン、とショックを受けたような顔に。
でも、それは一瞬。
メンタル最強なのか、ルナはすぐいつも通りに戻り、いつもの調子で言う。
「要するに、我はキャンプに行きたいのだ」
「「「キャンプ?」」」
「うむ。たまには街を離れ、自然の中で過ごすのも悪くないだろう? 草木の匂い、川のせせらぎ、澄んだ空……そんな中、釣りをしたりバーベキューをしたりして、みんなでのんびり過ごすのだ」
「……釣り……」
「……バーベキュー……」
食いしん坊二人組が、じゅるりと。
二人組が誰なのか、そこは割愛しておく。
「キャンプ……って、なに?」
「みんなで外でお泊りすることや」
「野営と……違う、の?」
「ぜんぜん違うでー。野営は、仕方なく外で泊まるやろ? でもキャンプは、遊びがメインなんや。ルナが言ったみたいに、釣りをしたりバーベキューをして、自然を満喫しつつ、思う存分に遊ぶんや」
「おー」
ニーナの瞳がキラキラと輝いた。
興味を持ったらしい。
三本の尻尾がぶんぶんと揺れている。
「レイン……キャンプ、行きたい」
「うむうむ、ニーナも興味を持ったか。いいことなのだ!」
「そうだな……」
予定を振り返るものの、特に急ぎの用事はない。
数日くらい休みにしても問題はないだろう。
「ちなみに、他のみんなは?」
「私もキャンプに行きたいなー!」
「なにを隠そう、あたし、里ではキャンプマスタータニアと呼ばれていたわ!」
ものすごい乗り気だった。
「そうですね、ソラも賛成です。自然が恋しいというのは理解できますし、ソラ自身もそう思います。それに、キャンプというのなら、料理の作りがいがあるというものです」
「お願いですやめてください本当にごめんなさい」
間髪いれずルナが土下座した。
そこまでなのか……?
いや、まあ。
気持ちはわかってしまうのだけど。
「えっと……ティナも賛成でいいよな?」
「もちろんやで」
満場一致で賛成だ。
「なら、明後日、キャンプに行こうか」
「「「おーっ!!!」」」
――――――――――
キャンプに行くと決めたものの、準備が必要だ。
翌日。
街へ出て買い物をする。
食料や水はカナデとタニア、ニーナに任せた。
好きなものを買っていい、と言っておいたから、たくさん買ってきてくれるだろう。
たぶん、肉と魚とお菓子かな?
で……
ソラはキャンプをする場所の候補を探してもらうことに。
せっかくのキャンプなのに魔物と遭遇したら台無しだ。
魔物の生息圏外。
なおかつ、キャンプをするにふさわしい自然豊かな場所。
ちょっと条件を足しすぎたかもしれないけど、ソラなら良いところを見つけてくれると思う。
そして、俺とティナは……
「なーなー、おっちゃん。これ、もうちょいまからん?」
「おいおい、ティナちゃん。勘弁してくれよ……これでも、かなりまけたんだぜ?」
「そっかー、まけてくれるかー。ありがとな、おっちゃん」
「え? いや、俺は……」
「ここでまけてくれたら、ウチ、またおっちゃんの店で買いたくなるからなー。そういうのを見越して、まけてくれるんやろ? いやー、商売上手やなー」
「だから、えっと……」
「ウチ、おっちゃんのそういうとこ、好きやで」
「かー……ティナちゃんには敵わないな。いいよ、その値段で……いや、さらに一割引で持っていきな」
「ありがとな、おっちゃん! 最高やでー」
キャンプ用品を買いに来たのだけど、ティナの値切りがものすごい。
こちらの要求を押し通しつつ、でも、相手を不快にさせない。
うーん、参考になるな。
「レインの旦那、これ頼むでー」
「了解だ」
ティナが買った商品を持つ。
昼間はティナは人形の体でしか外出できないから、荷物持ちは俺の役目だ。
って、あれ?
「なんか、見知らぬ箱があるんだけど……」
買い物リストにない箱が加わっていた。
なんだろう、これ?
「それか? それはなー」
「それは?」
「酒や♪」
とてもとてもうれしそうに言うティナだった。
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