↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/242

87話 飴玉

「さて、今日はなにを食べましょうか」


 イリスはるんるん気分で向日葵へ向かう。


 肉がいいだろうか?

 それとも、魚がいいだろうか?

 ものすごく迷う。

 いっそ両方がいいかもしれない。


「はて?」


 迷いつつ歩いていると、やけに街が騒がしいことに気がついた。

 あちらこちらから悲鳴が聞こえてくる。


「あ、お客さん!」

「あら、チトセさん。そんなに慌ててどうしました?」

「魔物が街の中に現れて……一緒に逃げましょう!」

「しかし、わたくしはこれから食事を……」

「だ、ダメですよ、こんな時にご飯なんて!」

「……もしかして、お店はやっていらっしゃらない?」

「当たり前じゃないですか!?」

「へぇ……」


 イリスはうっすらと笑う。

 なぜかとても怒っている様子だけど、チサトにはその理由がわからない。


 まさか、ご飯を食べられないから、なんて理由ではないだろう。

 普通、ご飯よりも魔物から逃げることを優先する。


「よくも、わたくしの幸せの時間を邪魔してくれましたわね……その罪、万死に値しますわ」


 ちょうどお腹が減っていたイリスである。

 怒りは頂点に達して、魔物が出たという場所に一直線で向かう。


「あわわわ、お、お客さん!?」


 自殺願望でもあるのだろうか?

 チサトは迷いつつ、しかし放っておけず、イリスを追いかけた。


「グルァアアアッ!!!」


 街の広場に巨大な獣がいた。

 虎に似た、強力な力を持つ魔物……キラータイガーだ。


「くっ……こいつ、強いぞ!?」

「慌てるな! 数で押し込め!」


 数人の冒険者達がキラータイガーと戦っていた。

 しかし、劣勢。

 相手にダメージを与えることはできず、逆にダメージをもらっていた。


 それも仕方ない。

 キラータイガーは冒険者狩りの異名を持つ強力な魔物だ。

 そこらの冒険者では相手にならない。


「あれですか」


 イリスはとても冷たい顔をして、つかつかとキラータイガーのところに向かう。


 そんな彼女に気づいた冒険者は慌てた。


「なっ、逃げ遅れか!?」

「危ない、逃げるんだ!」


 冒険者達は避難を促すけれど、イリスがそれに従うことはない。


 ただ、ほんの少し感心するような笑みを見せた。


「あら。このような状況でわたくしの心配をしますか。まあ、人間にしてはマシですわね」


 仕方ない。

 その根性に免じて、今回だけは特別に助けてあげよう。


 そう思い、イリスはさらにキラータイガーに接近する。


「ガァアアアッ!!!」


 イリスの接近に気づいたキラータイガーは、牙をむき出しにして吠えた。


 他の魔物、あるいは動物達。

 そして人間も、こうすれば怯み、足を止めてしまう。


 しかし、イリスは違った。

 そのまま足を進めて、さらに微笑む。


「あら、可愛い。わたくしの力を理解しているから、そうして吠えているのですか?」

「ガ、ガゥ……?」

「さあ、いらっしゃい。子猫ちゃん」

「ガァッ!!!」


 猫扱いされたキラータイガーは怒り、イリスに飛びかかった。


 それを見ていた冒険者やチサト、街の人々が悲鳴をあげる。

 彼女は助からない。

 あの牙に貫かれてしまうだろう。


 そんな悲惨な光景を誰もが想像するが……

 しかし、現実は明後日の方向へ飛ぶ。


「ていっ」

「ギャイン!?」


 イリスの拳一つで、キラータイガーが空高く打ち上げられた。

 巨体がくるくると回転して、やがて勢いよく落下して……


 ガァン!!!


 激しく地面に叩きつけられて、そのまま絶命。

 その体を魔石に変える。


「あらあら、子猫ちゃんには辛い遊びだったでしょうか? ふふ」


 イリスは余裕の笑みを浮かべて、


「おおお……す、すげえぞ、あの嬢ちゃん!」

「キラータイガーを一撃で……もしかして、名のある冒険者なのか?」

「とにかく、これで街は救われた、やったぞ!」


 周囲の人々は歓声に湧いた。

 救世主であるイリスのところに駆け寄る。


「助かったよ、ありがとう!」

「あんたはこの街の英雄だ!」

「……うるさいですわね」


 人間のためにしたことではない。

 食事の邪魔をした愚か者を成敗することが目的だ。


 イリスは眉をしかめて……


「お姉ちゃん、ありがとー。これ、あげる」

「あら」


 小さな子供から飴玉をもらい、急降下していた機嫌が直る。


 イリスは飴玉を口に含み、舌の上で転がす。

 いちご味だ。

 とろけるような甘さが口いっぱいに広がる。


「ちょっと物足りないですが……まあ、たまにはこういうのも悪くありませんね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇

中身は最強黒騎士、外見は天使な幼女王女。
母が愛した国を守りたいだけなのに、侍女も騎士団もなぜか女神扱い!?
『最強黒騎士、幼女王女に転生する』を読む

― 新着の感想 ―
[良い点] 女の子がイリスに飴玉をあげて彼女を落ち着かせたこと [気になる点] 「よくも、わたくしの幸せの時間を邪魔してくれましたわね……その罪、万死に値しますわ」 >>シリアスで もしも、レインに何…
[一言] イリスはチョロイン族のポンコツ族w オレ覚えたw
[一言] あの脳筋イリスがご飯を抜かれた怒りで、覚醒+終焉の白撃でオーバーキルをしなかった事に拍手!
2023/05/08 17:40 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。