表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/231

8話 野球しようぜ!・その8

「えぇ!?」


 我に返った様子で、カナデが大きな声をあげた。

 ニーナを見て、球が入っているミットを見て、再びニーナを見る。


「い、いつの間に……? 投げたと思ったら、なんかもう、すぐミットに……あれ? あれ? あれ?」

「あたしにも見えなかったわ……どれだけ速度が出ているの?」

「で、でも音はふんわりしているのだ。どのような魔球なのだ……?」


 カナデはものすごく混乱していた。

 タニアとルナも混乱していた。


 まあ、野球をしている、という概念がある以上、ニーナの魔球を破ることはできない。

 その正体に気づくことはできない。


 もっとも……

 気づいたとしても対処不可能だろうけど。


「いく、ね?」

「え? あ、うん」


 二投目。

 カナデは目を細く鋭くして、ニーナの魔球の正体を確かめようとした。


 しかし……


 ぱすん。


「「えぇー!?」」


 数瞬の間に、再びニーナが投げた球は俺のミットの中に飛び込んでいた。


 タニアとルナが驚いて……

 そんな中、カナデがわなわなと震える。

 どうやら魔球の正体に気づいたみたいだ。


「ストップ! ストップストップストップぅううううう!!!」

「どうしたんや、カナデ?」

「私、わかったんだけど……ニーナ、球を転移させているよね!?」


 そう。

 それこそがニーナの魔球の正体だ。


 球を投げた直後、すかさず転移。

 ミットに入る手前まで移動させるという、とんでもない魔球だ。

 投げた直後にはミットに届いているため、どうあがいても打つことはできない。


「あんなの反則じゃない!?」

「そんなことないで」

「絶対に打てないのに!?」

「魔法、能力の使用はオーケーって言うたやないか。で、その際、誰も文句は言わんかった。なら、ニーナの転移もオーケーっていうことや」

「むぐぐぐ……」

「そもそも、自分ら思い切り能力や魔法を使ってたやろ? それなのにニーナはダメとか、わがままやろ」


 もっともな話だった。

 ただ、ティナはちょっとニーナに甘い気がした。


「ってなわけで、試合再開や。がんばって打ってなー」

「どうしろと!?」

「知らん」

「そんにゃ!?」


 バッターボックスに戻るカナデ。

 あわあわと目を回しつつ、必死になってバットを振るものの……

 やはりニーナの魔球を捉えることはできず、三振。


 続くタニアも三振になって……


「ゲームセット! 赤チームの勝利や!」


 無情にも、ティナによって勝利チームが告げられるのだった。


「レイン、レイン」


 ニーナがぱたぱたと駆け寄ってきた。

 どこか期待をにじませた瞳をこちらに向ける。


「わたし……がんばった、よ?」

「そうだな、すごくがんばっていたな。ニーナのおかげで勝つことができたよ」

「ほん、とう? 貢献……できた?」

「ものすごく。ありがとう、ニーナ」

「えへへ」


 ニーナの頭を撫でると、三本の尻尾がふぁさふぁさと揺れた。

 にっこり笑顔でとてもうれしそうだ。


 我ながら、ちょっと大人げない勝ち方だったと思うけど……

 まあ、こうしてニーナが喜んでくれているし、よしとしておこう。


「勝利ですね、レイン」


 ソラもうれしそうな顔をしていた。


「しかし……ソラもまだまだですね。最後はニーナに頼り切りになってしまいました。そうならないように、特訓しないといけません」

「わたし、も……特訓、する」

「これ以上を目指すつもりなの……?」

「あの二人の野球熱が半端ないわ……」


 カナデとタニアが恐れおののいていた。


 これ以上強くなってどうするのだろうか?

 今のままでも、十分に野球無双できると思うんだけど……


「でも、けっこう楽しかったから、またやるのもありかもしれないな」

「「「その時は、ニーナをください!!!」」」


 みんな、声を揃えて言い放つ。

 それからニーナに迫る。


「ニーナ、次は私と組もう? 私達なら頂点を狙えるよ!」

「いいえ、ニーナはあたしと組むの。あたしと組めば、夕飯のデザートをあげるわ」

「あ、それはずるいのだ! ならば我は、メインもあげるぞ!」

「ソラは特製の料理を作ってあげますよ!?」

「「「それはやめてあげて!!!」」」

「なんですか、その反応は?」


 みんな、一斉に目を逸らした。


「でも、ニーナは人気者やなー。次回があるとしたら、チーム分けが大変なことになりそうや」

「わたし……」


 とてとてと、ニーナがこちらに歩み寄り……

 そのまま、ぎゅっと抱きついてきた。


「レインと一緒が……いい」

「「「なぁっ!?」」」


 みんなが驚いて、


「ははー、これは色々な意味でニーナの一人勝ちやな」


 ティナがニヤニヤと笑いながらそう言って、今回の話を締めくくるのだった。

読んでいただき、ありがとうございます!


<読者の皆様へのお願い>

「面白い!」「続きが気になる!」「更新をがんばってほしい!」

などなど思って頂けたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!


評価はページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップすると付けることができます。

ポイントを頂けるとやる気が湧いて、長く続けようとがんばれるのです……!


これからも楽しい物語を書いていきたいと思います、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[気になる点] 必殺『打てない魔球』
[一言] まぁ転移させないとフォアボールもしくは相手のホームランを誘いそうだしね
[一言] ノキアの場合 ──コンッと聞こえた瞬間、誰もが驚きの表情を隠せなかった。 ボールは消えてニーナの真上にフライしていた。 どうやらニーナの投げる瞬間にニーナより先にボールを転移させたらしい…
2022/09/27 18:36 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ