78話 後半戦・その5
魔法で吹き飛ばされたボールはラインを割る。
しかし、今はそんなことはどうでもいいとばかりに、カナデとタニアが審判に詰め寄る。
「今、魔法を使ったよね!?」
「ああいう使い方は、さすがに反則じゃないの!?」
「問題ない」
二人は審判に詰め寄るものの、しかし、まったく相手にされない。
それでも二人は食い下がり……
だけど、それが失敗だった。
審判が笛を鳴らす。
「悪質なクレーム、脅迫、そして暴力行為により、二名を退場処分とする!」
「「なっ!?」」
カナデとタニアが驚きの表情を作り……
すぐに怒りに変わる。
「なに、それ!? 私達なにもしていないよ!」
「そうよ! ただ単に、今のは納得できないって、抗議をしていただけじゃない!」
「ルールは絶対だ。二人共、ただちにコートの外に出るように。そのまま試合に参加することは許されない」
審判は冷たく言い放つ。
「……なるほど、そういうことか」
敵が魔法を使いゴールを防いだ。
これは、敵にとっても予想外のことだろう。
ただ、カナデとタニアを退場させるのは予定内のこと。
なにかしら理由をつけて、途中で退場させるつもりだったのだろう。
そして、ちょうどいい具合に二人が審判の判定に異を唱えた。
そして退場。
なにもかも敵の筋書き通り、というわけだ。
「カナデ、タニア。悔しいだろうけど、今は従ってほしい」
「「でもっ!!!」」
「大丈夫。まだ負けたわけじゃない。勝ってみせるから、応援を頼んでもいいかな?」
「にゃー……レインがそう言うのなら」
「絶対に勝ちなさいよ? でないと許さないんだから!」
どうにか納得してくれて、カナデとタニアはコートの外に出た。
そして、ホライズン側のベンチに座る。
ただ、完全に納得したわけではない。
不満たっぷりの表情だ。
特にタニア。
あの凶暴な顔は、『試合が終わった時が最後よ、あたしのブレスで吹き飛ばしてあげるわ』とか考えていそうだった。
惨劇を防ぐためにも勝たないといけない。
審判の合図で試合が再開される。
攻撃は俺達からだ。
布陣は大きく変えた。
心配ではあるが、キーパーはニーナに任せた。
守備にソラとルナ。
そして俺とティナが攻撃だ。
「死ね」
「我らが主の敵は排除する」
「くっ」
カナデとタニアがいなくなると、敵はあからさまな反則を繰り返すようになった。
ボールを狙わず、俺を狙う。
プレスをかけるだけではなくて、腕や服を引っ張るのは当たり前。
足ごと巻き込むスライディングに、押し倒すようなタックル。
なんとかボールをキープしているものの、敵陣に切り込むことができず、中央辺りを行き来していた。
「レインよ、ここは我が姉の料理を使うのだ! それで一撃必殺なのだ!」
「『必殺』という言葉がおかしくありませんか?」
「良いアイディアだけど、料理をする時間がないな」
「肯定されました!?」
このままだと負けてしまう。
ナタリーさんは燃えていたけど……
でも、これはただの親善試合。
負けたからといってなにかがあるわけじゃない。
無理をする必要はない。
ないんだけど……
「なあ、レインの旦那」
俺の頭の上に乗るティナが言う。
「いっそのこと、棄権するって手もありやと思う」
「そう、だな」
「……ただな」
ティナの声のトーンが変わる。
低く冷たいものに変わる。
「うちな、あいつらに負けるのは、めっちゃ我慢ならんねん」
「……」
「めっためたのぼっこぼこのぎったぎたにしてやろうと思うんや。レインの旦那はどうや?」
「……そうだな」
苦笑しつつ頷いた。
「俺も負けたくないな」
意地だ。
あんなラフプレーを連発する連中に優勝を渡すなんて癪すぎる。
「絶対に勝つ」
「よっしゃ、その意気やで!」
とはいえ、この状態でどうやって勝てばいいのものか。
なかなか良い策が思い浮かばない。
すると、ティナがとても悪い顔をした。
「にっひっひ。うちにとっておきの策があるで」




