72話 サッカーしようぜ・その7
「くっ!?」
空中からボールが落ちてきた……いや。
落ちてくる、なんて表現は生易しい。
まるで隕石のようだ。
スローイングとは思えないほどの勢いがある。
まさか、ダイレクトにこちらのゴールを狙ってくるなんて……!
「この!」
幸いというべきか、距離があるからボールの軌道は読みやすい。
落下のタイミングに合わせて蹴り返す。
そのままキャッチしてもよかったのだけど、少し嫌な予感がした。
それは正解で……
「なっ!?」
ボールを蹴ると、思ったところとはまったく正反対の方向に飛んでいく。
強烈な回転がかけられていたのだ。
もしもキャッチしようとしていたら、ボールが手の中で暴れて、最悪、そのままこぼれ落ちて失点していただろう。
ボールは空高く舞い上がり、それをカナデが追いかける。
しかし……
「甘い」
「えぇ!?」
敵選手はカナデよりも高く速く跳躍して、ボールを取る。
そのまま宙で回転して、腰を捻りつつ……シュート!
ゴォッ!!!
風を巻き込み、大気を震わせるかのような強烈なシュート。
ボールが轟音を立てつつ目の前に迫る。
「ブースト!」
今の状態では受け止めることができない。
そう判断した俺は、自身に身体能力を強化する魔法をかけた。
体が熱い。
力が湧き上がる。
これなら……
「いける!」
さっきのように弾いていたらダメだ。
ボールを奪われてしまい、ゴールするまで何度も攻められてしまうだろう。
危険かもしれないが、受け止める!
俺は両手を軽く広げて、シュートコースの中心に立つ。
そして、業風を立てて飛び込んでくるボールを受け止めて……
「ぐぅううう!?」
ボールに触れた瞬間、全身に大きな衝撃が走る。
まるで馬車と激突したかのようだ。
それだけじゃない。
ボールは強烈なスピンがかかり、両手の中で暴れまわる。
意思を持っている動物のようで、隙あれば俺の手から逃げ出そうとしていた。
そしてなによりも……
「つ、強い……!?」
ボールの勢いが強すぎる。
キャッチしたはずなのに、未だボールは暴れていて……
その勢いに押され、ぐんぐん後ろに下がってしまう。
「レイン!? ダメ、無茶はしないで!」
「そうよ、一点くらいどうとでも……!」
カナデとタニアが心配そうに言うけど……
ゴールキーパーが積極的に守備を放棄するわけにはいかない。
それに、せっかく優勝まであと一歩のところまで来たんだ。
最後も勝って、みんなで笑いたい。
「これ、くらいでぇっ!!!」
収まることのないボールの勢いに押されて、体がどんどん後退する。
このままだと、強引にゴールされてしまうだろう。
でも、そんなことは許さない。
絶対に食い止める!
「ぐっ、ううう……おおおおおぉっ!!!」
体の芯から力を振り絞り、両足でしっかりと大地を踏みしめる。
そして全力でボールに抗い……
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
なんとかボールを止めることに成功した。
「ほう、俺のシュートを止めるか」
そう言うのは、先程シュートを撃った敵キャプテンだ。
ニヤリと笑いつつ、言う。
「骨のないヤツばかりで退屈していたところだ。お前は、俺を楽しませてくれるかな?」
「あんたは、いったい……?」
最強種であるカナデよりも高く速く跳んだ。
そして、今の強烈なシュート。
普通の人間にできることとは思えないのだけど……
「ふっ……良い試合になることを期待しているぞ」
敵キャプテンは応えることなく、フィールド中央に戻った。




