70話 サッカーしようぜ・その5
ルナが途中で戦線離脱したものの、なんとか勝利。
準決勝に進むことができた。
ルナはさきほどの負傷の影響で休場。
治療魔法をかけているためソラもいない。
二人がいないのは厳しいけど、でも、残ったメンバーでがんばるしかない。
治療魔法をかけているから、決勝には間に合うかもしれないからな。
「よう。今日は良い試合をしようぜ」
元気の良い冒険者に握手を求められた。
ツンツンとした赤髪の男性だ。
その隣には、知的な感じの女性がいる。
それと、その他のメンバー。
「俺は、アクスっていうんだ」
「セルよ」
「よろしく。俺は、ホライズン代表のレインだよ」
それからみんなで自己紹介をして、それぞれ持ち場についた。
先程と同じく、敵チームは好印象を持つことができる。
ただ、それだけじゃない。
ピリピリとした感覚……間違いない。
相手は強い。
「よっしゃ、いくぜ! この俺がゴールを決めて、それをセルに捧げる!」
「いらないわ」
「……いくぜ……」
バッサリと切り捨てられて、アクスという冒険者はとても落ち込んでいた。
「プレイボール!」
「オラオラオラ!」
開始と同時に、アクスがドリブルで切り込んできた。
速い。
それだけじゃなくて、ボールのコントロールが正確だ。
軽いタッチと強いタッチを不規則に繰り返して、常にボールと最適な距離を保つ。
さきほどルナがやってみせたように、ボールを両足で挟んで宙に放り上げて、ディフェンダーを避ける。
プロと思うほどのテクニックと大胆さ。
それに抗うことはできず、カナデとタニアは簡単に抜かされてしまう。
「いかせるか!」
「へぇ」
アクスの進撃コースを塞ぎつつ、ボールを狙い足を出す。
しかしこちらの動きは読まれていたみたいで、アクスは器用に足を使い、ボールを後ろへ。
そこに控えていたセルが、ポーンと上にボールを上げた。
「ナイス、セル!」
「しまった!?」
彼女がパスを上げるとわかっていたのだろう。
アクスは迷いのない動きで前に出て、ボールをトラップして、再びドリブル。
一方の俺は二人の連携を読むことができず、対応に遅れてしまう。
「おいおい、キーパーはあんな子供か?」
「むん」
ゴール前に陣取るのは、頭にティナを乗せたニーナだ。
気合を入れた顔で、今はゴールの守護神となっていた。
「悪いが、容赦しねえぞ! くらえっ、デッドエンドシュートぅっ!!!」
なんだその物騒な名前は!?
それと、聞いているだけでちょっと恥ずかしくなるのは、どうしてだろう?
しかし、名前に反して、そのシュートはとんでもない威力を秘めていた。
周囲の空気を巻き込むようにして、ゴウッ! という音が響く。
ボールは急激な回転をしつつ、右から左へ急カーブを描く。
さらにふわりと浮き上がり、ゴールの端、ギリギリのところへ吸い込まれて……
「だめ」
ニーナがそうつぶやくと、ふっとボールが消えた。
ややあって、ニーナの前に消えたボールが現れた。
それは消えた時と同じように、猛烈な勢いで宙を駆ける。
……ただし、反対側に。
「へぶっ!?」
アクスの顔面にボールが激突した。
物騒な名前をつけるだけあって威力は相当なものらしく、アクスが吹っ飛ぶ。
地面に落ちて、ピクピクと痙攣して……
「おいおいおい、なんだよ今の!?」
唐突にがばっと起き上がり、抗議の声をあげた。
タフだな。
「なんで俺のボールが消えたんだ!?」
「ニーナさんは神族ですからね。その能力を使ったのでしょう」
ナタリーさんはとことん冷静で、そう解説してくれた。
「能力を使うとかアリなのか!?」
「アリです。冒険者同士が普通にサッカーをしても、つまらないでしょう? 相手に危害を加えるのはダメですが、それ以外なら自由ですよ。最初に説明したじゃないですか」
「そんなこと聞いてねえぞ!?」
「あなたが聞いていないだけでしょう」
「せ、セルまで……」
「というか、今のシュート。どう考えても魔力を乗せていたでしょう? あなた、人のことをとやかく言えないわよ」
「うっ」
味方のはずのセルにトドメを刺されてしまい、アクスはがくりとうなだれた。
そんな彼に、ナタリーさんが声をかける。
「あのー……」
「……なんだよ?」
「試合は続行していますが、大丈夫ですか?」
「え」
アクスが慌てて振り返ると、
「うにゃーーー!!!」
抜かされた憂さ晴らしというかのように、カナデがゴールを決めていた。




