69話 サッカーしようぜ・その4
第3試合。
「よ……よ、よろしくお願いします……」
「こちらこそ」
相手のリーダーと握手をするのだけど、その手は震えていた。
瞳に浮かんでいるのは怯えの色。
それと、恐怖。
魔物と対峙しているかのような反応だ。
でも、それも仕方ない。
「にゃふー……」
「むぅ……」
原因である二人は、ちょっと反省した様子で後方に下がっていた。
二人を前線に出したらいけない。
文字通り、事故が起きてしまう。
なので守備に専念してもらおう。
代わりに、ソラとルナに前に出てきてもらった。
二人はそこまで運動が得意じゃない。
というか……
こんなことを言うのはどうかと思うけど、苦手な方だ。
ちょうどいい具合でバランスがとれると思う。
「よし、我に任せるのだ」
「ソラ達の力を見せる時がやってきたようですね」
なぜか二人は自信たっぷり。
嫌な予感がいた。
「ソラ、ルナ」
「「?」」
「言っておくけど、ボールを魔法でコントロールするとか、そういうのはダメだからな?」
「「!?」」
「いや、そんな驚いた顔をされても……」
当たり前のことを説明しているよな、俺?
二人の反応を見ていると、なんだか俺の方が間違っているような気分になる。
「しかし、レインよ。それでは、我ら引きこもり族はまともな活躍ができないぞ……?」
「引きこもり言わないでください」
「各街の親善試合のようなものなんだから、無理に勝つ必要はないんだ。楽しくサッカーをして、互いに健闘を称える……それが一番だよ」
「ふむ」
「しかし、せっかくなので負けたくはありませんね……」
なんだかんだ、ソラもルナも負けず嫌いだ。
どうにかして勝つ方法を考えている様子だった。
「もちろん、勝つつもりで挑むさ」
「うむ、そうだな」
「フォローは俺達がするから、二人は好きなように攻め込んでほしい」
「……わかりました。ソラ達にお任せください」
なにかしら決意を宿した瞳で、ソラはしっかりと頷いてみせた。
なんだろう?
なにか嫌な予感がするのだけど……
でも、ボールに魔法は禁止、って言ったからそれを破ることはしないはずだ。
二人を信用しよう。
「では、それぞれ配置についてください」
ナタリーさんの合図で、それぞれポジションについた。
ソラとルナは一番前。
他のメンバーは後方に。
ソラとルナのやる気は十分だ。
二人は運動が苦手だから、どうなるかわからないけど……
どうなってもいいように、俺達で最大限のフォローをしよう」
「プレイボール!」
ナタリーさんの声が響き渡り、
「いくぞ!」
敵チームが素早く動いた。
三人が前に出て、ボールを巧みに回しつつ、こちらの陣地に攻め込んでくる。
迷いのない、流れるようなスムーズな動き。
経験者だな。
しかも、かなりの上級者だ。
ソラとルナでは荷が重い。
すぐフォローに回って……
「させないのだ!」
「なにぃ!?」
ルナはコートを強く踏みしめると、跳躍。
相手選手を軽々と飛び越えた。
そして着地と同時に体を回転させて、足を払うようにしつつ、ボールだけを華麗に奪い取る。
「な、なんだと!? この俺からボールを奪いなんて……!」
「くそ、返せ!」
仲間の二人がルナに迫る。
「ふふん」
ルナは不敵な笑みを浮かべると、ボールをつま先で蹴り上げて膝の上へ。
そのままリフティングをして、一人目の突撃を避ける。
さらに頭の上にボールを乗せて、二人目を回避。
「はぁ!」
ルナはボールをコートの上に落として、そのままドリブルを始める。
ボールと一体化したかのような見事なドリブルだ。
「これ以上、好きにさせない!」
「甘いのだ!」
「なっ!?」
ルナは右足と左足でボールを挟み、頭の上に放る。
そうして相手の頭上を通過させて……
膝でトラップして、再びドリブルを続ける。
あんな高等テクニック、俺だってできないぞ!?
もしかして、ルナはサッカーは得意なのか?
「むむむ……!」
驚いていると、なにやら険しい顔をしたソラが見えた。
ルナに手の平を向けて魔力を……って、ちょっと待て。
「もしかして……ソラがルナの体をコントロールしているのか?」
「はい!」
ドヤ顔で肯定されてしまう。
「ソラ達は運動が苦手ですが、魔力を使った精密なコントロールが可能です。それを応用すれば……」
「ふははは!」
ルナはボールをキープしつつ、空を飛び、くるくると回転する。
完全に彼女の独壇場だ。
「このようなことも可能です!」
「いや、もう、なんて言ったらいいか……」
これ、反則ギリギリでは?
いや、アウトのような気も……
「大丈夫です!」
ナタリーさんを見ると、続行、と合図を送られてしまう。
どうしても勝ちたいみたいだ。
「さあ、ゆくぞ!」
「いきます!」
ソラはさらに大量の魔力を送り、ルナをコントロールする。
そんなルナは、今度はかかとを使いボールを宙に放り上げた。
そうやって最後のディフェンダーをかわすと同時に、ちょうどよく目の前にボールが落ちてくる。
そのままダイレクトシュート。
「ゴォオオオーーールッ!!! ホライズンチーム、先制!」
ナタリーさんがとても嬉しそうに告げた。
もはやなにも言うまい。
「ふっはっはっは! 見たか、これが我の……ごぐぅ!?」
高笑いを響かせようとしたルナは、鈍い声をあげて崩れ落ちる。
「ルナ!?」
「大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄ると……
「こ、腰が……絶対できないような運動をしたせいで、我の腰が……」
「「……」」
俺とソラは顔を見合わせて、
「やはり、真面目に戦いましょう」
「そうだな」
そんな決意をするのだった。




