7話 野球しようぜ!・その7
「真打ち登場、我の出番なのだ!」
ルナがバッターボックスに立ち、
「カナデ、あんたが頼りよ!」
「うん。繋いでくれたからには、期待に応えてみせるよ!」
「うぉい!? 我がアウトになるの確定みたいな反応、やめるのだ! しかも味方!」
ムキー! とルナが怒り心頭だった。
「あはは、ごめんね」
「でも、大丈夫なの? ソラの球、ある意味でカナデ以上だけど、打てるわけ?」
「ふふん、我に任せるのだ! 姉が魔法を使うのなら、我も魔法を使うのだ!」
「にゃるほど」
それならいけるかもしれないと、カナデが目を輝かせた。
しかし、ソラは不敵に笑う。
「いい機会です。ここで勝負に打ち勝ち、姉の威厳というものを見せてあげましょう」
「妹の方が優れていることを証明してやるのだ!」
奇しくも姉妹対決となった。
この勝負の行方は……?
みんなが神妙な顔で見守る中、ソラが投球体勢に入る。
「これでも……くらいなさい!」
投げた!
さっきと同じ大回転魔球だ。
ルナは、このすさまじい魔球をどう攻略するのか!?
「ファイアーボール」
「「「!?」」」
突然、ルナが火球を撃ち出した。
火球は少し離れたところに着弾。
爆炎と爆風が舞い上がり……
ちょうどいいタイミングで、球がそれに巻き込まれた。
完全に勢いを失った球は、ふわっと飛んでルナの目の前に。
「いただきなのだ!」
ぽん、と球を打つルナ。
そんなのアリか!? とみんなが驚く中、ボールがぽてん、ころころと転がる。
力がないため、転がすのが精一杯だったらしい。
ただ、それが幸いした。
外野まで飛べばニーナが確実に捕球するものの、その手前となると難しい。
ソラが捕球に向かうのだけど、ルナの奇天烈な作戦に驚いているせいか出足が遅い。
その間に、ルナは一塁にたどり着いてしまった。
「ふはははっ、我の勝利なのだ!」
「ず、ずるいですよルナ! あのような方法を使うなんて!」
「魔法の使用は禁止されていないのだ。そして、グラウンドにファイアーボールを叩き込んではいけないという決まりもないのだ。つまり、我は正義!!!」
「ぐぐぐ……!」
ドヤ顔のルナ。
ものすごく悔しそうな顔をするソラ。
ただ……
「ルナって……ちょっとアレだよね」
「そうね……ちょっとアレね」
「こら! なんで味方がそんな反応をするのだ!?」
味方からも引かれてしまうルナだった。
「でも、これでチャンスが生まれたね。ここで私がホームランを打てば、逆転サヨナラだよ!」
強者の表情を浮かべつつ、カナデがバッターボックスへ。
ブンブンとスイングの練習をするけど、とんでもなく気合が入っていた。
さきほどの魔球は通用しないと考えた方がいいだろう。
なら……
今こそ最終兵器を投入する時だ。
「タイム!」
「お、なんや?」
「ピッチャー交代。ソラからニーナへ」
「「「えっ!?」」」
カナデとタニアとルナが驚いていた。
ただ、こちらは事前に伝えていたため、誰も驚くことはない。
「ニーナ……ソラの仇をお願いします」
「がん、ばる」
ソラから球を受け取り、ぱすぱすとグローブを叩くニーナ。
気合を入れているつもりなのだろうけど、とてもかわいい。
「ニーナはかわええなぁ」
「かわいいだけじゃなくて、赤チームの最強のピッチャーだぞ」
「なんやて?」
そう……彼女こそが真のエース。
ニーナが投げる球は、誰も打つことができないだろう。
そう断言できるだけの力を持っている。
さあ。
その力を見せつけてやるんだ!
「いく……よ?」
「うん、きなさーい!」
絶対に打つ。
瞳に闘志を燃やして、カナデがバットを構えた。
一方のニーナも構える。
絶対に打たせないと、小さな体に強い意志を宿している。
「「「ごくり……」」」
二人の気迫を感じたみんなは、小さく息を飲む。
これはすごい対決になる。
誰もがそう思っているのだろう。
そして……
ニーナがボールを投げる!
「……え?」
カナデがぽかんとした。
身動き一つできない。
そんな中……
ばすん。
ふんわり、という感じの音と共に、俺が持つミットに球が入った。
その間、わずか一瞬の出来事だ。
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