68話 サッカーしようぜ・その3
第二試合。
「いい試合をしよう、よろしく」
「こちらこそ」
試合前の挨拶で握手を求められて、笑顔でそれに応じた。
さきほどと違い、今度のチームはすごくまともだ。
年齢のばらつきはあるものの、普通の冒険者という感じで、ここに立っていることに大きな違和感はない。
うん。
今度は良い試合ができそうだ。
先攻はこちらだ。
今度はタニアが先陣を切るらしく、誇らしげな顔でボールの前に立つ。
「プレイボール!」
ナタリーさんの合図で試合が始まる。
「さあ、いくわよ!」
タニアは不敵な表情で大きく足を振り上げる。
そのまま全身のバネを使い、腰も器用に使い、ボールを……全力で蹴る!
パァンッ!!!
「「「……」」」
ボールが破裂した。
敵も味方も無言になってしまう。
そんな中、タニアだけはマイペースだった。
「ボールが壊れちゃうとか……これ、安物?」
「えっと……一応、大会のために最高級のものを用意しておいたのですが……」
ナタリーさんがとても困った顔で言う。
うん、わかる。
ボールを蹴ったらボールが破裂したとか、そんな反応をするしかないと思う。
「タニア、ちょっと手加減してくれ」
「え? なんでよ」
「タニアが全力で蹴ったら、ボールが保たない」
「それ、あたしのせいじゃないわよね? ボールのせいよね? というか、手加減するなんて相手に失礼よ。どんな時でもどんな状況でも、全力で試合に挑む。それがスポーツマンというものじゃないかしら?」
ものすごくまともなことを言っているのだけど……
でも、タニア。
君はスポーツマンじゃなよな?
竜族だよな?
なんなら、サッカーをするのも今日が初めてだよな?
「もう、仕方ないわね」
不満たっぷりの様子だけど、なんとか納得してくれた。
タニアは新しいボールを受け取り、その前に立つ。
「じゃあ、改めていくわよ」
「えっと……お願いしますね?」
「大丈夫、任せておきなさい!」
不安そうなナタリーさんに対して、タニアは自信たっぷりに頷いた。
「にゃー……私、この先の展開が読めた気がするよ」
「奇遇やな。ウチもや」
カナデとティナのつぶやきは聞こえなかったことにした。
「で、では改めて……プレイボール!」
ナタリーさんがホイッスルを鳴らして、改めて試合が開始された。
「ドラゴン・ファイアー・シュート!!!」
魔力を使っているのか、タニアはつま先に炎をまとわせた。
その状態でボールを蹴る。
炎に包まれたボールが超高速で飛翔する。
とんでもない威力を秘めていることは見るだけでわかる。
誰も触れることができず、敵陣のゴールに向かい……
その前にボールが燃え尽きた。
「あら?」
「あら、じゃないよ!」
「いた!?」
ついに我慢できなくなった様子で、カナデがどこからともなく取り出したハリセンでタニアの頭をスパーンと叩いた。
「なにするのよ!?」
「それは私の台詞だよ! 今のなに!?」
「なに、って……あたしオリジナルの必殺シュートよ」
誇らしげにタニアが言う。
「魔力を使って、ボールに炎をまとわせる。その威力は絶大! 石の壁を砕くだけじゃなくて、鉄板だってぶち抜いて……」
「タニアは、サッカーをやっているという自覚を持って!?」
カナデが頭を抱えつつ言う。
でも……
カナデはカナデで、色々とアレだったからな?
「あ、あの……」
ふと、相手チームのリーダーが話しかけてきた。
さきほどはとてもさわやかな顔をしていたのに、今は顔面蒼白だ。
よく見ると手足がカチカチと震えている。
「わ、私達、急用を思い出したので……」
「え?」
「で、ではこれで!!!」
脱兎のごとく駆け出して、どこかへ行ってしまう。
他のメンバーも、「助けてくれ!」「殺される!」「赤い悪魔だ!」なんて悲鳴をあげつつ、逃げ出していった。
「えっと……勝者、ホライズンチーム!」
ナタリーさんが俺達の勝利を告げるのだけど……
それでいいのだろうか? と、思わずその場で頭を抱えてしまうのだった。




