67話 サッカーしようぜ・その2
「これより、各冒険者ギルド対抗サッカー親善試合を開催します!」
大会開会の宣言が行われて、観戦する人々や冒険者達が歓声をあげた。
今回の開催地はホライズンだ。
いつの間にか、郊外にサッカーコートが作られていた。
観客もたくさんだ。
ホライズンの人達だけじゃない。
他所からも人がやってきているらしく、かなりの人数になっている。
「にゃー、すごいね。まるでお祭りみたい」
「みたい、じゃなくてお祭りなんでしょ。この機会に稼ごうって、露店があちらこちらに出ているじゃない」
「ふふ、人間はたくましいですね」
俺達はお揃いのユニフォームを着てコートに立っていた。
いきなりの第一試合からのスタートだったのだ。
フォワードやミッドフィールダーなど、細かい配置は決めていない。
ミニサッカーなので、そもそもの作戦が通用しないこと。
あと、みんな、ルールを覚えるので精一杯だったこと。
それと、基本はお祭りのようなものなので、自由にやることにしたのだ。
ちなみに、初戦のキーパーは俺がやることにした。
カナデとか、あるいはニーナがキーパーをしたら鉄壁だと思うのだけど……
みんな、どんなものがいまいちわからなかったらしく、見本を示すことに。
ほどなくして相手チームが入場する。
「へっへっへ……なんだぁ、おい。これが俺達の対戦相手かよ」
「女子供ばかり。おいおいおい、ホライズンは勝ちを諦めたのかぁ?」
「たっぷり可愛がってやるぜぇ、泣いても帰れねえけどなぁ! ひゃははは!」
……なんか、盗賊みたいな風体の男達が出てきた。
これが隣町のチームらしいけど……本当に冒険者なのか?
実は盗賊でした、というオチじゃないのか?
「両チーム、整列してください!」
審判はナタリーさんだった。
合図で俺達はフィールド中央に整列する。
「へへへ、可愛がってやるよ」
「なによ、ぶちのめすわよ?」
タニアが早くも応戦状態になっていた。
頼むから足を使ってくれよ? 手を出さないでくれよ?
じゃんけんで負けたため、先攻は敵チームだ。
肩にトゲトゲのショルダーをつけた男がニヤニヤと笑い、ボールの前に立つ。
「では……プレイボール!」
お祭りのようなものだけど……
でも、ホライズンのみんなの期待を受けている。
絶対に負けられない戦いだ。
「ひゃっはー! 地獄を見せてやるぜぇ!」
相手選手がまっすぐドリブルをする。
立ちはだかるものは全て吹き飛ばすというような勢いで、かなりの速度だ。
そんな彼の前に立ちはだかるのは……カナデだ。
「おらおら、嬢ちゃん、どかねえと怪我するぜぇ!?」
「うー……にゃん!」
「ぎゃあああああっ!?」
カナデがボールを蹴り……
その衝撃に巻き込まれた選手が空高く舞い上がった。
「「「……」」」
残りの敵選手がぽかーんとなる。
それはそうだ。
ボールをあっさりと奪われただけじゃなくて、味方が思い切り吹き飛ばされれば、そんな反応になる。
「レインー、見てみてー! 私、ボールをとったよー!」
試合中ということを忘れているのか、カナデはこちらを見て、笑顔で手を振る。
その動きに合わせて、尻尾もふりふりと揺れていた。
「って……カナデ、危ない!」
「にゃん?」
我に返った敵チームは、三人がかりでカナデに突撃した。
スライディングとタックルと飛び蹴り。
反則上等という荒業を繰り出してくるのだけど……
「ふふーん、遅すぎてあくびが出ちゃうね!」
カナデはボールを上に蹴り上げた。
さらに、自身も跳躍して空高く舞い上がる。
「カナデ、チャンスよ! 止める相手は誰もいないわ!」
それはまあ、空中10メートルくらいの位置まで飛べる者なんて普通はいない。
「えっと、どうすればいいんだっけ?」
「そのままボールを相手ゴールに叩き込むのだ!」
「こうかな? うにゃんっ!」
カナデは、器用に空中でくるっと回転して……
そして、斜め上から叩きつけるかのようにボールを蹴る。
ヒュッ……ゴォオオオオオオ!!!!!
ガゴォッ!!!
カナデが蹴ったボールは暴風を生み出しつつ、荒れ狂う竜のごとくゴールに食らいついた。
ただ、少し軌道が逸れていたため、ゴールポストに突き刺さる。
そう……ゴールポストに突き刺さったのだ。
鋼鉄製のゴールポストが嘘のようにぐにゃりと曲がり、そこにボールが深々と突き刺さっている。
「……」
敵のゴールキーパーは一歩も動けない。
だらだらと汗を流しつつ、ぎこちない動きでゴールポストに突き刺さり、変形したボールを見る。
こんなシュートからゴールを守らないといけないのか?
ゴールよりも、自分の命を守ることを考えなければいけないのでは?
そんな感じで、ゴールキーパーはものすごく動揺している様子だった。
それは仲間も同じで、さきほどまでの威勢の良さは消えて、全員、顔を青ざめさせている。
そして……
「「「ひぃいいいいいっ!!!?」」」
全員、脱兎のごとき逃げ出した。
「勝者、ホライズンチーム!」
ナタリーさんは誇らしげにそう告げるのだけど……
これでいいのだろうか? と、俺は心の中でツッコミを入れるのだった。




