66話 サッカーしようぜ・その1
「サッカーの試合に出て欲しい?」
とても大事な話があると冒険者ギルドに呼び出されたのだけど……
そこでナタリーさんから聞かされたのは、サッカーの試合に出てほしいという話だった。
うん、意味がわからない。
「すみません、このような依頼で……」
「どういうことなのか詳細を教えてくれないか?」
「はい。実は……」
毎年、各街の冒険者ギルド対抗のサッカー大会が開かれているらしい。
親睦を深めるため、そういった企画が立案されたのだとか。
最初は模擬戦などが検討されたものの、親睦を深めるのに戦ってどうする? という意見が出て、ならば平和なスポーツにしようとサッカーになったらしい。
各ギルドの冒険者が代表となって試合に挑む。
優勝しても特に賞品はないものの、トロフィーなどが送られて栄誉を得ることができる。
最初は平和に試合が行われていたものの……
回を重ねる度に、冒険者達の負けず嫌いが発揮されるように。
誰もが全力で挑むようになって、とても白熱するようになったという。
「そんなものがあったなんて……ぜんぜん知らなかった」
「レインさんはホライズンに来て、まだ一年経っていませんからね。仕方ありません」
「でも、聞く限り大事な試合なんだけど、どうして俺が?」
「それはもちろん!」
ナタリーさんの視線が、一緒に来ていたカナデやタニア達に向けられた。
「みなさんの力があれば優勝は間違いないからです!」
「うーん……でも、サッカーなんてやったことないし」
「にゃー、私もないかな」
「あたしも」
「我は経験はないが、きっとうまくやれるぞ!」
「ソラ達の体力を忘れたのですか?」
「楽しそうやなー」
「がん、ばる」
みんなを見ると、乗り気だったり否定的だったり、反応は様々だ。
どうしよう? と迷っていると、ナタリーさんが身を乗り出してきて、がしっと俺の手を握る。
「お願いします、お願いします! どうか試合に出てください!!!」
「ちょっ……ど、どうしたんだ、いきなり?」
「うぅ……ホライズンは毎年負け続けていて、最下位を独占状態なんです。そのせいで、ホライズンは消化試合。当たればラッキー。勝ち確定……などと、いつも笑い者にされていて……もうあんなに悔しいのは嫌なんですぅううううう、どうかどうか、お願いしますぅううううう!!!」
「わ、わかった! わかったから、いい大人が泣かないでくれ!?」
よほど悔しいのだろう。
ナタリーさんは号泣していた。
まあ、ナタリーさんはホライズンのギルドの受付嬢だから。
そのギルドをバカにされたら、ホライズンをバカにされるようなもの。
街に思い入れのある彼女にとって、これほど悔しいことはないのだろう。
少し、その気持ちがわかるような気がした。
俺はまだ日は浅いけど、でも、この街が好きだ。
ホライズンの一員であることを誇りに思う。
それをバカにされたとしたら……
「みんな」
俺の心は決まった。
ただ、一応、みんなにも確認はしておきたい。
「どう思う?」
「私はいいよ。サッカーとかよくわからないけど、がんばりたいかな」
「ふふん、あたしに任せておきなさい。必ず勝利してあげる!」
「ソラ達は運動は苦手ですが、それでも、やれるだけのことをやりたいと思います」
「うむ。精霊族の知恵で完璧な作戦を組み立ててみせよう!」
「わたし……がんばる、ね」
「ウチ、球蹴りティナちゃん呼ばれててなー。期待してええよ?」
よし。
みんな、やる気たっぷりだ。
「ナタリーさん。その依頼、引き受けます」
「ありがとうございますっ!!!」
涙を流して感謝されてしまう。
「でも、サッカーって、最低11人必要ですよね?」
俺、カナデ、タニア、ソラ、ルナ、ニーナ、ティナ。
あと四人足りない。
「あ、今回はミニサッカーなので、七人いれば大丈夫ですよ」
「そうなのか」
それならちょうどだ。
「じゃあ、今日からさっそく練習を始めようか。あと、ルールも覚えないとダメだな。作戦も考えて……」
「……あのー」
ナタリーさんが、ものすごく気まずそうに言う。
「実は、その……」
「うん?」
「……試合は明日なんです」
「……」
沈黙。
そして、
「「「えええぇ!?」」」
みんなの驚きの声が響くのだった。




