63話 慰安旅行・その5
色々とあった夜が終わり……
朝。
俺達はごはんを食べて、それから海へ移動した。
「うー……にゃん!」
「やっほー!!!」
水着に着替えたカナデとタニアが、大きくジャンプして海に飛び込んだ。
よほど勢いがよかったのか、ぶくぶくと沈んでいって……
ほどなくして水面から飛び出すように顔を出して、とても気持ちよさそうに泳ぎ始める。
「わー、気持ちいい!」
「やっぱり、海は最高ね!」
「こらー! 二人共、海に入る前は準備運動しないとダメやで!」
そうやって怒る人形バージョンのティナも、水着を着ていた。
ちょっと大胆な水着なのだけど……
それ、誰が作ったんだろう?
もしかしてガンツが……
いや、まさか。
夜な夜な、ガンツが人形の水着を製作する姿が思い浮かび、慌ててそれを振り払う。
「我らも遊ぶのだ! 泳ぐのだ!」
「ダメですよ。準備運動、第十三章まできっちりやらないと」
「そんなにあるのか!?」
やってられんのだ! という感じで、ルナが海に飛び出した。
それを追いかけて、ソラも海に。
俺はすぐに飛び込むことはなくて、パラソルなどを立てておく。
「レイン」
「うん? どうしたんだ、ニーナ」
「わたし、泳げなくて……だから、その……」
「なら、俺が教えようか?」
「うん……えへへ」
うれしそうに、ニーナの三本の尻尾がぴょこぴょこと揺れた。
「ちょっと待っててくれ」
近くを歩いていた野良犬を三匹、テイムした。
ドッグフードを報酬に荷物番をお願いして、俺達は海へ向かう。
「そういや、レインの旦那は泳ぎは得意なん?」
人形バージョンのティナは、俺の頭の上に乗っていた。
いつもはニーナの頭の上だけど、さすがに邪魔をしてしまうので、今は俺の頭の上だ。
「得意ってわけじゃないけど、普通に泳げるよ」
「ほーん、何キロくらい泳げるん?」
「測ったことはないから、正確なところはわからないけど……五十キロくらいはいけると思う」
「……レインの旦那の普通って、やっぱ、アテにならへんわ」
どうしてだ……?
「えっと……とりあえず、練習を始めようか」
「はい……コーチ」
「なんでコーチ呼び?」
「ティナが……そうした方が、喜ぶ……って」
「ふんふーん」
ティナを見ると、とぼけられてしまった。
お願いだから、ニーナに偏った知識を植え込まないでほしい。
「普通に呼んでいいからな?」
「うん」
「じゃあ、まずは水に顔をつける練習から始めようか」
「うぅ……」
ニーナが怯えた表情で海を見る。
腰まで浸かる分には問題ないけど、顔をつけるのは怖いらしい。
うん、よくあることだ。
泳げない子供は、大抵、水に対する恐怖心を持っている。
まずは、それをなんとかするところから始めないと。
「大丈夫。俺とティナがついているし……ほら。水に顔をつけている間、俺がしっかりと手を握っているから」
「……うん」
手を繋いだことで少し安心したらしい。
ニーナの表情が柔らかくなって……
次いで鋭いものになり、大きく息を吸って、水に顔をつける。
「んっ!」
三秒くらいして、
「ぷはぁ!」
ニーナは顔をあげた。
「偉いぞ、ニーナ。よくがんばったな、ちゃんとできていたよ」
「すごいやん。ウチ、最初はそんなことできへんかったよ?」
「えへへ」
どんな些細なことでも褒める。
そうすることで自信をつけさせて、水に対する恐怖を克服してもらうのだ。
「よし、続けて練習しようか」
「がん、ばる」
「じゃあ次は……ん?」
ふと、妙な音が聞こえてきた。
ドドドドド……というような、地の底から響くような轟音。
何事かと振り返ると……
「なぁ!?」
大きな波が迫っていた。
対処は……間に合わない!
慌ててティナをニーナの頭の上に移動させて……
それが精一杯で、俺は波に流されてしまうのだった。
――――――――――
「「レイン!?」」
レインが波に流されて、ニーナとティナは驚きの声をあげた。
ちなみに、ニーナはティナが咄嗟に展開した防壁で事なきを得た。
なぜ、こんな浅瀬で大波が?
不思議に思っていると……
「にゃー、気持ちよかったぁ」
「やっぱり、サーフィンをするなら、あれくらい大きな波じゃないとね」
元凶が二人、現れた。
どうやら、サーフィンをするために、人工的に大きな波を発生させたらしい。
「……むう」
ニーナは頬を膨らませて、
「え? え?」
「ひゃあああああ!?」
カナデとタニアを空高く転移させた。
「迷惑を、かけたら……めっ」
……おしおきされたカナデとタニアは、その後、ニーナとティナの説教をくらうことになるのだった。
次回更新は16日(金)になります。
詳細は活動報告にて。




