60話 慰安旅行・その2
「にゃふ~♪」
温泉に浸かるカナデは、とろけるような顔をして、自慢の尻尾をぴょこぴょこと揺らした。
極楽、極楽……と、表情がそう語っている。
「ふぅ……気持ちいいわね」
「本当です、温泉がこんなにも素晴らしいものだったなんて……」
「なんだか、このまま溶けてしまいそうなのだ」
「ふぁ……あたた、かい」
「これで、酒もあれば完璧なんやけどなー」
他のメンバーも温泉を満喫している様子で、皆、笑顔だった。
初めての慰安旅行。
宿は豪華な料理だけではなくて、夜空を眺めることができる露天風呂つき。
しかも貸し切り。
これ以上の贅沢はないと、カナデ達はほっこりとした表情になっていた。
「レインも一緒、なら……もっと、楽しいのに」
「「「えっ」」」
何気なくニーナがこぼした台詞に、カナデ達がギョッとした顔になった。
宿の温泉は混浴ではない。
当たり前だけど、レインは別だ。
しかし、幼いニーナは、なぜレインだけ別なのだろう? と不思議に思っていた。
「なんで……レインは別、なの?」
「えっと……」
「それは……」
カナデとタニアが返事に迷う。
答えは、恥ずかしいから……その一言に尽きる。
でも、なんで恥ずかしいの? と聞かれると、なかなか難しい。
大人になれば、異性を異性として意識して、裸を見られることを恥ずかしく思うことは当たり前。
ただ、まだニーナはそういう意識がないらしく、羞恥心を抱くこともない。
なんて説明したらいいのか、ものすごく迷う場面だった。
「ええか、ニーナ」
誰もが返事に迷う中、ティナが口を開く。
「レインの旦那は、恥ずかしがり屋さんなんや」
「恥ずかしがり屋……」
「ニーナは、外で服を脱いだら恥ずかしいやろ?」
「うん」
「それと同じで、レインの旦那は、風呂でも服を脱ぐことが恥ずかしいんや。恥ずかしがり屋さんやから、そうなってしまうんやろうな」
「なる、ほど」
「だから、レインの旦那は別に風呂に入ってるんやで?」
「りょう、かい」
ニーナとて、異性に対する羞恥はないものの、恥ずかしいという感覚は理解できる。
その点に重きを置いて説明したことで、納得してくれたみたいだ。
「「「おぉー」」」
さすが、というような感じで、カナデ達がティナをキラキラとした目で見た。
「子供の扱いに慣れているのね」
「元メイドやからな。色々知っとるで」
「私、なんて説明すればいいかわからなかったよ」
「ああいう場合、無理にごまかそうとせんで、本当のことをわかりやすく、ちょっとの嘘を混ぜて説明するといいんや。それで、大体は納得してくれるで」
「むう、参考になるのだ」
「機会があれば、今度はソラ達がニーナに色々と教えましょう」
危機を乗り越えて、一同は再び温泉を堪能する。
ぽかぽかと体の芯から温まる。
ほんわりとした気分になり、いつまでも入っていたいと思う。
「ところで……」
ふと、思いついた様子でカナデが口を開く。
「温泉って、色々な効能があるんだよね? ここの温泉はどんな効能があるんだろう?」
「えっと……表に書いてあったと思うんだけど、なんだったかしら?」
「美肌にええらしいで」
見落としのないティナが、そう説明した。
「にゃー、美肌!」
「言われてみると、肌がツヤツヤぷにぷにしているような気がします」
「ぷにぷにしているのは姉の腹部なのではふぎゃん!?」
軽口を叩いたルナは、げんこつによって沈んだ。
「……」
美肌と聞いて喜ぶ一同。
そんな中、ニーナは微妙な顔に。
「どうしたの、ニーナ?」
「綺麗になるだけ、じゃなくて……胸、大きくならない、かな?」
「「っ!?」」
ものすごい敏感に反応した者が二人。
誰が反応を示したのか、それは秘密だ。
「ニーナは胸が大きくなってほしいん?」
「うん。レインに……喜んで、ほしい」
色々と誤解を生みそうな台詞だった。
「そっかー。でも、焦ることないで。手遅れの二人と違って、ニーナはまだ未来があるからな。そのうち大きくなるで」
「手遅れって、ソラ達のことですか!?」
「我らだって未来があるのだ!!!」
「あはは、すまんすまん。せやな。二人も、きっと大きくなるで」
「うぅ、そうだといいのですが……」
「でも、ぜんぜん大きくならないのだ……」
ソラとルナは深刻そうな顔をして、視線を落とす。
その先は……すとーん、というような感じだった。
「好きな人に揉まれたら大きくなる、ってゆー話を聞いたことあるで」
「好きな人に……」
「揉まれる……」
いったい、どんな想像をしたのか?
ソラとルナは、ぼんっ、と顔を赤くした。
「ええか、ニーナ。ああいうのを、むっつり、って言うんや」
「むっつり……覚えた」
「変なことを教えないでください!」
「我らは、おかしなことなんて考えていないのだ!」
ソラとルナの叫び声が夜空に響いて……
――――――――――
「……みんな、いったいなにを話しているんだ?」
離れたところにある男湯にまで響いていたのだけど、それはまた別の話だ。
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