6話 野球しようぜ!・その6
赤チームの布陣は先ほどと同じ。
ソラがピッチャーで、俺がキャッチャー。
そして、鉄壁の守りのニーナ。
「にゃふー」
最初のバッターはカナデ。
さきほどと違い、自信のある顔を見せている。
もしかして、この短時間で攻略法を……?
「今度こそホームランだよ!」
バットでビシッと空を指して、再びの予告ホームラン。
それを受けて、ソラが不敵に笑う。
「ソラの魔球を打ち破れるとでも?」
「それはもう見切ったよ!」
「む……」
あれほど自信があるということは、やはり攻略法を編み出したのか?
ソラは警戒した表情に。
カナデのハッタリか?
それとも、根拠のある自信か?
判断に迷っているみたいだ。
大丈夫だ、と俺はハンドサインを送る。
どうせ打てない、なんて楽観的になるのはいけないけど……
でも、こういう時は自信を持っていかないとダメだ。
下手に迷いを持つと、それが投球にも影響してしまう。
「ん」
ソラは迷いを振り切った様子で頷いた。
ボールを振りかぶり……
思い切り投げる!
ズドンッ!!!
「……にゃ?」
カナデに匹敵する剛速球が飛び出した。
その事実を認識できないという様子で、カナデはぽかーんとしている。
「ストラーイク!」
「……えぇ!?」
遅れて驚くカナデ。
うん、気持ちはわかる。
ソラがあんな剛速球を放ったら、誰だって驚くだろう。
でも、できる。
風の魔法を使って変幻自在の軌道を構築することが可能なら、剛速球を再現することも可能だろう。
その可能性に思い至らなかった時点で、カナデは……
「ストライク、バッターアウト!」
負けだ。
「うぅ……まさか、あんな球も投げられるなんて」
「ふふ、切り札は最後まで隠し持っておくものですよ?」
がっくりとうなだれるカナデ。
しかし、次の打者のタニアは自信たっぷりだ。
ニヤリと不敵な笑みを見せつつ、バッターボックスに立つ。
「今の切り札、あたしまでとっておくべきだったわね」
「おや。ソラは、切り札が一つとは言った覚えはありませんが」
「ふふん、上等!」
なにが来ても打ってみせる。
そんな自信を浮かべつつ、タニアはバットを構えた。
タニアは強敵だ。
変幻自在の球も剛速球も、すでに見切られたと考えた方がいい。
ならば、ここで真の切り札を使う必要がある。
合図を送り、ソラが頷いた。
さあ……これならどうだ?
「いきますよ、タニア」
「きなさい、ソラ」
二人はバチバチと視線を交じらせて……
そして、決闘が始まる。
「これで……どうですか!?」
ソラは思い切り球を投げた。
カナデの時と同じ剛速球だ。
まっすぐストライクゾーンに吸い込まれていくが……
その直前で軌道が変わる。
円を描くように回転を始めたのだ。
超高速でありながら、軌道も不規則に変化する。
これこそがソラの真の切り札だ。
「さあ、ソラスペシャルミラクルボールを打てますか!?」
……ネーミングはいまいちだった。
「甘い!」
「っ!?」
カーン! という快音が響いた。
タニアのバットは球の芯を捉えて……
空の彼方へ飛ばす。
確認するまでもない。
ホームランだ。
「そ、ソラの必殺魔球が敗れてしまうなんて……」
「とんでもない速度に、生き物のような複雑な動き。確かに恐ろしい魔球だったわ」
「なら、どうして……?」
「速度と軌道。両方を欲張ったからこそ中途半端になって、隙が生まれたのよ。やるなら、どちらか一方を極めるべきだったわね!」
「!?」
ソラはがーんという顔になって、うなだれた。
「……ソラの負けです」
「まあ、落ち込むことはないわ。ソラもなかなかやるじゃない。あたしのライバルにふさわしいわ」
「……タニア……」
「これくらいで凹んでないで。あたしを失望させないでちょうだい?」
「ええ、もちろんです!」
「ええ話やな」
「そうだけど……」
まだ試合は終わっていないんだけど、決着がついたような雰囲気にしないでくれないか?
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