59話 慰安旅行・その1
「旅行に行かないか?」
夜。
ごはんを食べた後、みんなを集めてそんな話をした。
「旅行……ですか?」
「おぉ! それは楽しみなのだ」
「でも、どうしたんや、突然?」
「ここのところ、依頼をこなしてばかりで忙しかっただろ? だから、たまにはのんびりしたらどうかな、って」
依頼をたくさんこなしてきたから、お金はある。
全部使うわけにはいかないけど……
でも、旅行に行くくらいの貯蓄は十分にある。
「どうかな?」
「にゃー! 私は賛成だよ!」
「あたしも」
「旅行……楽しみ」
ソラとルナを見ると、笑顔で頷いてくれた。
「よし。じゃあ、今度の休みに旅行に行くか!」
「「「おーっ!!!」」」
――――――――――
「「「おぉおおおおおーーーっ!!!」」」
輝く海と白い砂浜。
まぶしい太陽に負けないくらい瞳をキラキラさせて、みんなは歓声をあげた。
色々と話し合った結果、旅行先は海辺の街に決定した。
宿は、奮発して露天風呂つきのところを選んだ。
けっこうな出費だけど……
でも、みんなが喜んでくれるなら、これくらい安いものだ。
「さっそく泳ごう!」
「うむ!」
カナデとルナは、その場で服を脱ごうとして……
「ま、まってください!?」
「気持ちはわからんでもないけど、こんなところで脱いだらあかんで」
「レインはあっちを向いてて!」
「あ、ああ!」
以前もこんなことがあったような……?
なんていうか、幸先不安だ。
「でも……」
空を見上げると、澄んだ青空が見えた。
「きっと楽しい旅行になるだろうな」
――――――――――
まずは宿に移動して、チェックイン。
部屋に荷物を置くのだけど……
「……あの、女将?」
「あらあら、なんですか?」
「確か、二部屋予約したと思うんだけど……」
「そうだったかしら? ごめんなさいね、手違いで。でも、代わりに最上級の部屋を用意するわ。ここなら、みなさん一緒で問題ないと思うの」
「一緒だから問題があるのでは!?」
「ほほほ、では、がんばってくださいね……特に夜を」
「どういう意味なんだ!?」
笑い声を響かせつつ、女将はものすごい速度で立ち去ってしまう。
抗議するヒマもなかった……
「別にいいではないか、我らとレインが一緒の部屋でも」
「せやな。部屋は十分な広さがあるし、それに、二部屋も借りるとお金がもったいないで」
「いや、でも……他のみんなは、俺が一緒でいいのか……?」
頼む。
ダメと言ってくれ。
そう願うのだけど……
「私は……うん、大丈夫だよ?」
「そもそも、家を買う前は、宿で同じ部屋だったじゃない。今更、なにを気にするの?」
「少し恥ずかしいですが……レインなら大丈夫と信じていますから」
「一緒に、いられて……うれしい」
みんなから向けられる信頼の視線。
そんな顔をされてしまうと、
「……わかったよ。みんながそう言うのなら」
みんなが信頼してくれているのだ。
それなのに拒否し続けると、それはそれでどうかと思うし……
せっかくの旅行だ。
みんなが納得しているのなら、これ以上、野暮は言わないようにしよう。
まあ、色々と気をつけないといけないのは確かなので、そこは俺がしっかりしないとだな。
「ねえねえ、レイン。これからどうするの? 海で遊ぶ?」
「その前にごはんにしないか? 移動にけっこう時間がかかったから、みんな、お腹が減っているだろう?」
「にゃあ、そういえば……」
「賛成なのだ!」
「せっかくだから外に出るか」
宿は、朝食と夕食はセット。
別料金になるけど、昼食を用意してもらうことも可能だ。
でも、良い機会なので、外に出て地元の料理を食べてみたい。
綺麗な観光地だから、きっと料理もおいしいだろう。
「なにか希望は……」
「お魚!!!」
ものすごく期待した様子で、カナデが大きな声をあげた。
その様子で、みんなで苦笑してしまう。
「了解。じゃあ、魚料理を出す店を探してみようか」
「にゃ~♪」
こうして、俺達は街へ繰り出して、魚料理を出す店を探した。
店は無事に見つかり、おいしい魚料理を堪能することができたのだけど……
みんながものすごく食べるせいで、店の食材を空っぽにしてしまうという事件が発生してしまうのだった。
店主と俺の財布が泣いた。
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