56話 ニーナの妄想
ぽかぽかと温かい日差しが降り注いでいた。
そんな天気を喜ぶかのように、鳥が元気よく飛んでいる。
狼も元気に草原を駆けていた。
そんな中、レインとニーナは手を繋いで歩いていた。
「えへへ♪」
ニーナはご機嫌だ。
笑顔を浮かべていて、自慢の尻尾をゆらゆらと揺らしている。
「ニーナ、どうしたんだ?」
「ふぇ?」
「今日は、なんだかごきげんだけど」
「レインと一緒……だから。嬉しいの」
「そっか」
今日は、レインとニーナが結婚して、ちょうど一年の記念日だ。
ただ家で過ごすのはつまらないということで、二人でピクニックに出かけていた。
「それにしても、ニーナと結婚して今日で一年か……うん、あれ?」
ふと、レインは首を傾げた。
「ニーナと結婚? いや、いくらニーナが最強種でも、さすがに無理があるような……」
「どう、したの……?」
「えっと……うん、なんでもないよ」
ニーナが笑顔ならそれでいいか。
レインはそう納得して、ピクニックの続きを楽しむ。
「天気……いいね」
「そうだな。絶好のピクニック日和だ」
「今日は、どこに……いくの?」
「街外れに湖があるから、そこまで行こうかな、って」
「楽し、み」
ニーナはにっこりと笑う。
その笑顔を見たレインは、もっともっと笑顔でいっぱいにしたいと思うのだった。
そうやって二人は手を繋いで、話をしつつ歩いて行くのだけど……
「あれ?」
急に空が曇ってきた。
青い空は灰色の曇に覆い隠されてしまう。
空気が湿り、さらに、ゴロゴロと雷も近づいてきた。
「あぅ……」
雷の音を聞いて、ニーナはびくんと震えた。
そのままレインに抱きついてしまう。
「大丈夫、俺がいるから」
「……うん」
「でも、この様子だとすぐ降ってきそうだな」
レインは周囲を見回して、雨宿りできそうなところが木の下しかないことを知り、難しい顔になる。
普通の雨の場合、木の下で雨宿りをしても問題はない。
しかし、雷が近づいていると話は別だ。
雷が近づいている時は、木の下にいると逆に危険なのだ。
木に雷が落ちて、そのまま地面に広がり感電してしまうという事故はよく起きている。
「ニーナ、こっちへ」
「うん」
レインはニーナを抱き上げた。
その状態で走り、雨宿りできそうな場所を探す。
ほどなくして、街道の近くに設置されている小さな小屋を発見した。
旅人の休憩場所として用意されているものだ。
雨宿りの場所として申し分ない。
しかし……
「あっ」
ぽつりぽつりと雨が降ってきて……
すぐに土砂降りとなり、雷も鳴り始めた。
「あぅあぅ……」
「大丈夫だから」
雷に怯えるニーナを励ましつつ、レインは小屋に急いだ。
「ふぅ……」
ほどなくして小屋に入ることができたけど、すでに全身びしょ濡れだ。
荷物からタオルを取り出して、一枚をニーナに。
もう一枚をかぶる。
それから、体を温めるために小屋の暖炉に火をつける。
「ファイアーボール……これでよし、っと。ニーナ、こっちで温ま……いっ!?」
レインは振り返り、驚愕した。
「ふぁ?」
ニーナは濡れた服を脱いでいた。
下着も脱いでいた。
完全な裸である。
「ご、ごめんっ!?」
レインは慌てて体ごと視線を明後日の方向に逃がす。
そんなレインを見て、ニーナは不思議そうな顔に。
「どう、したの……?」
「ど、どうもこうも、ニーナこそどうしたんだ!?」
「服、濡れちゃった……乾かさないと、風邪……ひいちゃう」
「そうだけど!? そうじゃなくて!?」
「レインも……脱ごう?」
「いやいやいや!?」
ニーナが近づいてくる気配がした。
見てはいけない。
逃げないとダメだ。
しかし、小屋は狭く逃げ場はない。
そして……
「よいしょ」
「うわーーーっ!?」
――――――――――
パチパチと薪が爆ぜる音が響く。
そんな中、レインとニーナは体を寄せ合い、大きなタオルを一緒にかぶっていた。
どちらも服は着ていない。
風邪を引いたらいけないし、場合によっては大きな病を招いてしまうかもしれない。
それ故に、こうしてくっついているわけだ。
「ねえ、レイン」
「な、なんだ……?」
「温かい、ね」
「そ、そうだな……」
やましいことをしているわけじゃない。
これは仕方ないことだ。
レインはそう自分に言い聞かせるものの、しかし、裸のニーナがすぐ隣にいると思うと、どうしても心がかき乱されてしまう。
「静か、だけど……どう、したの?」
「い、いや……別に」
「くしゅんっ」
「ニーナ? 大丈夫か?」
「うん……もう少し、そっちに行っても……いい?」
「えっ!?」
「ダメ……なの?」
「い、いや……そんなことはないさ。いいよ」
「あり、がとう」
ニーナは嬉しそうにレインに身を寄せる。
尻尾が揺れていた。
「えへへ♪」
ニーナは笑顔だ。
しかし、触れる肌面積が広くなり、レインは色々と限界だった。
試しているのか?
試されているのか?
それとも……
かなりの混乱状態に陥るレインだけど、
「ねえ、レイン」
「な、なんだ……?」
「楽しい、ね」
ニーナがにっこりと言うものだから、首を傾げてしまう。
「楽しい……のか?」
せっかくのピクニックは雨に振られて台無し。
その雨もしばらく止む気配はなくて、こうして小屋に足止めされている。
それなのに……
「うん。わたし、楽しい、の。レインと一緒、だから……なんでも楽しい、よ?」
「……そっか」
ニーナの想いを理解したレインは、同じ想いを抱いた。
好きな人と一緒にいる。
それだけで楽しくて幸せなのだ。
「ニーナ」
「うん」
「これからも一緒だから」
「うん♪」
ニーナは笑顔で頷いて、三本の尻尾をふりふりさせた。
――――――――――
一緒にいれば幸せ。
これは、そんな温かい夢。
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