55話 ルナの妄想
「レイン、レイン」
「うん?」
「あーん」
「まったく……」
レインは仕方ないな、と苦笑しつつ、ルナの口に肉を運ぶ。
ルナはそれをパクリと食べて、幸せそうな顔に。
「んー、うまいのだ♪」
「ルナが作ってくれたものと、なにも変わらないぞ?」
「レインにあーんをしてもらうことが大事なのだ。愛情は、最高のスパイスなのだぞ?」
レインとルナが結婚して一ヶ月。
新婚ほやほやの二人は、毎日がこんな調子だった。
甘く、甘く、甘く……
砂糖では比較にならないほど、ひたすらに甘い生活を送っていた。
一緒にごはんを食べて、一緒に風呂に入って、一緒に寝て……
二人はいつも同じ時間を過ごしていた。
それは幸せな時間で、とろけるように甘い。
ただ……
それ以外の時間もあった。
「むっ!?」
突然、部屋の端に置かれているランプが点滅した。
ビービー! と、なにやら警告音が鳴る。
「ルナ、今のは……」
「うむ、またヤツらが現れたみたいなのだ」
「懲りないヤツだな」
「だが、問題ない。この街には、我がいるからな!」
「ああ、その通りだ」
「レイン、すまないが、いつものようにバックアップを頼むのだ」
「任せてくれ」
そして、二人は街へ駆け出した。
――――――――――
「きゃあああああ!?」
「うわぁあああ、助けてくれー!!!」
街中で火柱が上がる。
人々は悲鳴をあげて逃げていた。
その中心に奇妙な人影があった。
フルプレートを身に着けているが、兜の奥に顔は見えない。
代わりに炎があふれていた。
隙間から炎が漏れることで、全身が燃えているかのようだ。
怪人ファイアーナイト。
悪の秘密結社、ユウ=シャーリオスが世界征服のために作った兵士だ。
「ははは! 愚民共よ、シャーリオスの威光にひれ伏すがいい!」
ファイアーナイトは炎をまとう剣を振り、街を破壊する。
シャーリオスの暴力を止める者はいないのか?
このまま街は焼き尽くされてしまうのか?
誰もが絶望した時……
「そこまでなのだっ!!!」
「なに!?」
鋭い声が響いた。
ファイアーナイトが頭上を見上げると、時計塔のてっぺんに小さな姿が。
ふりふりのドレス。
同じく、フリルがたくさんついたカチューシャ。
そんなかわいらしい衣装とは正反対に、ごつい小手と足甲を身に着けた少女。
そう、彼女こそは……
「光の使者、シャイニールナ! 正義を守るため、悪の現場にただいま推参っ!!!」
キラッ! と、ルナ……ではなくて、シャイニールナに光が刺した。
「やった、シャイニールナが来てくれたぞ!」
「これで助かったわ!」
「がんばれ、シャイニールナ! 悪のファイアーナイトをやっつけろ!」
民は歓声をあげて、
「むううう、またしても邪魔をするか!」
ファイアーナイトは怒りに燃える。
「だがしかし、貴様の運命もここまでだ。喰らえ、ファイアープリズン!!!」
「なに!?」
炎が舞い上がり、シャイニールナを閉じ込めた。
「うあああああ!?」
「ははは、どうだ!? 貴様を倒すために開発した、必殺の魔法だ!」
ファイアーナイトは勝利を確信して、高笑いを響かせる。
その様子を見て民は絶望する。
「ああ、そんな……まさか、シャイニールナが……」
「ダメだ、俺達はもう終わりだ……」
「諦めないでくれ!」
絶望する民の心を奮い立たせるかのように、レインの鋭い声が響いた。
「今から俺が魔法を使う。みんなは、シャイニールナを応援してほしい。それが彼女の力となる!」
「そ、そういうことなら……がんばれ、シャイニールナ!」
「負けないで!」
「がんばれー! がんばれー!」
「いいぞ、これなら……いくぞ、シャイニールナ! ブースト!」
「むむむっ」
みんなの祈りが力となる。
力が希望を生む。
シャイニールナが輝いて……
そして、一気に力を爆発させて、炎の檻を打ち破る!
「ば、ばかな!? 我らの叡智の結集が、こうも簡単に……」
「ふん。叡智? そんなものはどうでもいいのだ。必要なのは……愛なのだっ!!!」
シャイニールナは力強く言い放つと、時計塔から跳躍した。
くるくると回転しつつ体勢を整えて、魔力を足先に集中。
そして、直上から叩き落とすかのような蹴撃を放つ。
「必殺っ、ゴッドサンダーキィイイイイイッッック!!!!!」
「うわぁあああああ!?」
シャイニールナ最大の奥義が炸裂して、ファイアーナイトは爆散した。
その炎を背景に、シャイニールナはびしりとポーズを決める。
「悪は必ず散る……成敗!!!」
――――――――――
「……ふへへ、正義は勝つのだぁ……」
よだれを垂らしつつ、年頃の乙女としてはいけない顔をしつつ、すやすやと眠るルナ。
彼女が見ている夢は……色々とアレだった。
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