53話 タニアの妄想
「すぅ……すぅ、すぅ……」
夜。
タニアは自室のベッドでぐっすりと眠っていた。
穏やかな寝息を立てていて……
「……ふふ……」
時折、ニヤリと笑う。
良い夢を見ているようだ。
その夢の内容は……
――――――――――
「んー!」
宿に戻ったタニアは、ぐぐっと伸びをした。
普段は着ないドレスを長時間身につけていたものだから、妙な疲れが溜まってしまったのだ。
「結婚式って、意外と疲れるものなのね」
「はは、おつかれさま」
そう言って笑うのは、レインだ。
契約を結んだ主で……
そして今日、タニアの夫となった。
「でも、タニアが疲れたなんて言うの、ちょっと意外だな」
「体力的には、なにも問題ないわよ? ただ、その……少し緊張するというか、精神的な疲労が……ね」
「なるほど」
苦笑するレイン。
すると、なにを思ったのかタニアの背後に回る。
「レイン? ……ひゃ!?」
「タニア」
レインは、そっとタニアを後ろから抱きしめた。
自然と体が密着する。
その温もりが心地良いのだけど……
「ど、どうしたの?」
「こうして、タニアを支えようかな、って」
「そ、そういうことなら、まあ……あたしを支える権利を与えてあげるわ」
「あはは」
「な、なんで笑うのよ?」
「そういう言い方、タニアらしいな、って」
「うー……なによ。かわいらしくない、ってこと?」
「まさか」
レインは苦笑しつつ、タニアを抱きしめる力を強くする。
そうすることで自分の気持ちが伝わればいい、と言うかのように。
「タニアはかわいいよ」
「そ、そう……?」
「もちろん。こうして抱きしめて、ずっとこうしていたいくらいに」
「……うぅ……」
照れるタニア。
尻尾がバタンビタンと揺れていた。
カナデの尻尾と比べると、かなりワイルドな照れ方なのだけど……
でも、レインはそんなタニアも愛しいと、彼女を掴んで離さない。
体温を通じて想いを伝えたいと示しているかのようだった。
「……ねえ、レイン」
「うん?」
「あたしのこと……好き?」
「好きだよ」
即答。
タニアの耳が赤くなる。
「本当に?」
「本当だよ」
「でも、あたし、がさつで可愛げがないし……」
「タニアのことが好きだ。でないと、結婚なんてしないよ」
「そっか……うん、そうよね!」
好きと何度も言われて、途端に笑顔になるタニア。
わりと簡単な性格をしているようだ。
「ねえ、レイン」
「うん?」
「あたしも好きよ」
「うん」
「レインのことが好き、愛している」
「俺も」
「……レイン……」
「……タニア……」
タニアもレインによりかかり、より深く密着するように。
そうして、二人は互いの温もりに浸る。
幸せを感じる。
ずっとこのまま……
そんなことを思うタニアだけど、ふと、レインが動いた。
「レイン?」
「タニア、こっちへ」
タニアは、レインに誘導されるまま部屋の中を移動して……
ほどなくして、その行き先がベッドだということに気がついた。
「へ!? え、え、え? あの、えと……レイン?」
「恥ずかしい?」
「だ、だって、その……」
「俺、タニアが欲しい」
「……あ……」
「嫌?」
「……ううん、嫌じゃないわ」
タニアは頬を染めて、瞳を潤ませて……
そっと、小さく頷いた。
「あたしも……あたしの全部、レインにもらってほしいわ」
「ありがとう、タニア」
「大好き」
「俺も」
タニアはそっと目を閉じた。
そんなタニアの頬に手を添えたレインは、静かに顔を近づけて……
――――――――――
「はっ!?」
がばっと、タニアが勢いよく起き上がる。
そのまま慌てた様子で左右を見て……
「……夢?」
がっくりと肩を落とす。
「あたし、あ、あんな夢を見ちゃうなんて……」
耳まで赤くなって、羞恥に悶えるタニア。
ただ……
「でも、でも……どうせなら最後まで見させてよーっ!!!」
魂の叫びを発するのだった。
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