52話 カナデの妄想
「うにゃー」
夜。
カナデの部屋。
カナデは枕を抱きしめつつ、ベッドの上で右へ左へゴロゴロと転がる。
そろそろ寝ないといけないのだけど、眠気はやってきてくれない。
頭に思い浮かぶのは……
「綺麗だったなあ……」
昼、教会で見た結婚式。
その新婦のドレス姿を思い返す。
綺麗。
それでいて可愛い。
ウェディングドレス姿は女の子の憧れだ。
「私も着てみたいな」
そう呟くカナデだけど、一人で着る機会はほぼほぼない。
パートナーが必要なのだ。
「えっと……」
パートナーは誰だろう?
そう思い、考えるカナデ。
ほどなくして浮かんできたのは、
「……レイン、かな」
大好きな人の笑顔が浮かんできた。
レインと結婚。
式を挙げるところを妄想する。
――――――――――
「みんなー、ありがとう!!!」
純白のウェディングドレスに身を包んだカナデは、いっぱいの笑顔を浮かべていた。
太陽のような笑顔だ。
満面の笑みを浮かべつつ、式に集まってくれた人達へぶんぶんと手を振る。
その動きに合わせるかのように、尻尾もぴょこぴょこと揺れている。
そんなカナデの隣にレインの姿があった。
いつものラフな格好ではなくて、ピシリとした礼服を着ている。
元気いっぱいのカナデに苦笑しつつ……
しかし、生涯の伴侶となった愛しい妻に優しい表情を向けていた。
そんな夫に甘えるようにして、カナデはレインの肩にコテンと頭を乗せる。
「ねえねえ、レイン」
「うん?」
「私達、結婚したんだよね?」
「ああ、そうだよ。今日から俺達は夫婦だ」
「えへへー」
カナデが笑う。
「にゃふふふー」
さらに笑う。
「どうしたんだ?」
「嬉しくて嬉しくて、笑顔が止まらないの」
「そんなに?」
「そんなに、だよ」
もう一度、カナデはにっこりと笑う。
「だってだって、大好きなレインと結婚できたんだよ? 花嫁さんになれたんだよ?」
にへへ、とだらしのない笑みを……以下略。
「私、すごい幸せだよ♪」
「俺もだよ。ただ……」
「にゃ!?」
レインはカナデの腰に手を回して、その体を抱き寄せた。
至近距離で見つめ合うことになり、カナデの顔は急速に赤くなる。
「れ、レイン……?」
「まだ結婚しただけじゃないか。これくらいですごい幸せとか言っていたら、今後、体と心が保たないぞ?」
「え? そ、それは……」
「これからもっともっと、たくさん幸せにするから」
「にゃふぅ……」
とろけるような甘い台詞に、カナデは骨抜きにされてしまう。
抱きしめられたことで、全身でレインの熱を感じる。
こうしていると、体も心も溶けて一つになってしまいそうだ。
甘く。
優しく。
幸せな時間がゆっくりと流れる。
「私、レインのお嫁さんになったんだよね」
「ああ。カナデは、俺のお嫁さんだ」
「好き?」
「大好きだ」
「愛してる?」
「愛しているよ」
「にゃふー」
カナデはとろけるような笑みを浮かべて……
そして、そっとレインに顔を寄せる。
静かに目を閉じて、
「大好きだよ、レイン」
――――――――――
「なーんて! にゃーんて!」
妄想を繰り広げたカナデは、ニヤニヤしつつベッドの上を転がる。
右へ左へゴロゴロゴロ。
幸せだけど恥ずかしい妄想だ。
自分で妄想しておいてなんだけど、冷静でいることはできない。
ひたすらに転がり回り……
「にゃんっ!?」
ゴンッ!!!
勢い余ってベッドから落ちたカナデは、頭を痛打してしまう。
「はふぅん」
そのままピヨピヨと気絶してしまい……
今度は本物の夢の世界に旅立つのだった。




