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49話 偽物参上!・その6

 色々と騒動があったものの、ひとまず落ち着きを取り戻して……

 改めてロックと話をする。


「それで、ロックはこれからどうするんだ?」

「もちろん、兄者の弟子に……」

「それはちょっと……」

「くっ……なんて、つれない人なのだ。さては、ツンデレですね?」


 どうしてそうなる?


「俺は弟子を取れるような立派な人じゃないから。領主を倒すことができたのも、みんなの力があってこそだ」

「さすが兄者。常に謙虚な心を持て、という教えなのですね?」

「いや、違うけど……」


 うーん、困った。


 ロックは悪人じゃないし、むしろ善人だと思う。

 でも、ところどころで話が通じないという困った人だ。


 これ、どうやって説得しよう?


「レインの弟子になりたいなら……」

「あたし達の試練を乗り越えることね!」


 元の調子に戻ったカナデとタニアが、ふと、そんなことを言い出した。


「お二人の試練?」

「そう。私は、レインの最初の仲間……いわば、一番弟子!」

「そしてあたしは、二人目の仲間……いわば、二番弟子!」

「そんな私達に認められないで弟子入りしようなんて、甘い考えだよ」

「どうしても弟子入りしたいのなら、あたし達を納得させてみなさい!」

「なるほど、それは確かに」


 え、納得するの?

 けっこう無茶苦茶な理論だったと思うんだけど……


 とはいえ、他にどうしていいかわからないので、二人に任せる。


「じゃあ、まずは私の試練からだね。にゃふー、果たして私の試練を乗り越えられるかな? ふっふっふ」

「はい! 全力で挑まさせていただきます」


 カナデもロックもノリノリだった。


「じゃあ、私の試練は……ズバリ、おいしい料理を作ることだよ!」

「料理……なのですか?」


 カナデの目的と意図がわからず、ロックがキョトンとした。

 俺もキョトンとする。


「おいしいお魚料理を作って、私を満足させることができたら合格。あ、お魚料理限定だからね?」

「魚料理……なるほど、そういうことですか」

「え?」

「料理は冒険者の基本。おいしい料理を食べることで体力と英気を養うことができる。だからこそ、どのような料理も作れなければならない。ホライズンにはあまり流通していない魚を使うことで、私の料理スキルを試そうということですね?」

「その通り!」


 カナデはドヤ顔で頷いているけど……

 いやいや、絶対違うだろう。

 単純に、カナデが魚料理を食べたいだけだと思う。


 その証拠に、尻尾がこれ以上ないほどご機嫌に揺れている。

 よだれもちょっと垂れていた。


 しかし、ロックはそんなカナデの意図に気づいていない……

 というか、曲解して納得してしまったみたいだ。


 本人が納得しているのなら、いいの……かな?


「制限時間は、えっと……私が我慢できないから、三十分で! キッチンはウチのを使っていいよ。材料も調味料もね」

「キッチンまで貸していただけるとは……ありがとうございます!」

「気にしないで。まちきれ……不備があったら試験にならないからね」


 今、本音が漏れかけていたぞ?


「では、さっそく!」


 ロックは保冷庫から魚を取り出して、包丁を握る。

 そして、慣れた手付きで三枚におろしてしまう。


 素早く正確な作業だ。

 それにとても綺麗だ。


「ほほう、やるね。これは期待してもいいのかな?」


 なぜかカナデは上から目線。

 でも、魚料理の完成が待ち遠しいらしく、尻尾がブンブンと揺れていた。


 それからロックは手早く調理をした。

 片方の切り身はバターソテーに。

 もう片方の切り身は刺し身に。


 良い匂いが漂う。


「どうぞ! これが、今の私の全てです!」

「にゃあ♪」


 おいしそうな魚料理を目の前にして、カナデの目がハートマークに。

 よだれもじゅるりと垂れている。


「食べてもいい? 食べてもいい?」

「どうぞ。私の全力を感じてください」

「いただきまーす!」


 若干、会話が噛み合っていないのだけど……

 魚料理を前にしてテンションがマックスのカナデは、もうなにも気にしない。

 満面の笑みで料理を口に運んで、


「んんんぅ~♪」


 極上の快楽を得たというような様子で、尻尾をピーンと立たせた。


 至福の笑み。

 そのまま、一気に料理を平らげてしまう。


「はぁ……幸せ」

「ど、どうだったでしょうか……?」

「え? ……あ、うん」


 今になって試験をしていたことを思い出したらしく、カナデがちょっと慌てた感じに。


 こほんと咳払い。

 威厳のある表情を作ると、こくりと頷いた。


「あなたの技術……そして、熱い想い、しっかりと伝わってきたよ」

「では……」

「合格!」


 食べることに満足したカナデは、そんな判定を出してしまう。


「ありがとうございます!」

「……ちなみに、おかわりはない?」

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[一言] カナデw こんなんだから「いつでもどんな時でも食べ物のことしか考えていない、腹ペコ空腹猫」とか言われるだろうがw >ソラ「ロックの腕は中々ですね。ですがまだまだ未熟です。なのでソラの本気の…
[気になる点] タニアはどんな課題を出すのか注目ですね。
[気になる点] 料理が出来るならソラに正しい調理方法を教えて上手く作れるように指導できたら合格の方が良いのでは?^ ^ 後、全員ではなく善人ですよね?
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